Fedの早期出口戦略とそのハードル

2010⁄02⁄09(火) 18:05
今日の東京株式市場は続落した。NY市場では、米国金融機関がギリシャ国債のエクスポージャを抱えている可能性があるのではないかとの観測から金融株主導で引け際に下落、KBW銀行株指数は1.5%安となった流れとなった。それを受け継いで朝方から安く始まったが押し目買いに下げ渋りの展開となった。ユーロがしっかり推移する中で突っ込み警戒感も台頭した感じなのだろう。とりあえず戻して引けたものの休日控えなどから積極的に買い向かう向きは限られた。


昨日はユーロ圏、ECBの話をしたが、トリシェ総裁がオーストラリア(RBAのカンファレンス)から急遽EU首脳会合に出席するため帰国した。その話をきっかけに何らかのギリシャ・スペイン救済に関する憶測が流れユーロの買い戻しを誘う結果となった。FTにもあるように80億ドルものユーロのショートポジションが積み上がっており、その巻き戻しという感じがする。


ユーロ圏が大騒ぎになっている裏でFedの動向にも気にしておかなければならない。昨日のWSJでFedは早期に出口戦略に踏み切るのではないかとの観測記事が話題となった。


Fed to Outline 'Exit Strategy'
Bernanke Prepares Future Strategy for Curbing Credit; Policy Shift Remains Months Off



この記事の重要な箇所を要約すると、


・Fedは経済が十分に回復してきたと決定づけており、引き締めの青写真を今週から描き始めている。
・金融引き締めに十分な経済状況であり、当局は数カ月の間に金融引き締めのレバーを引くことについて、いつ、どの程度行うか?その目的のための最善なコミュニケーションのあり方を議論している。
・政策転換を早めに行ってしまうと経済回復のトレンドを落としてしまうし、引き締めまでの時間を長くしすぎるとインフレになってしまう。
・今日の異例な低金利のいきなりの終了はモーゲージ金利や企業の短期間の企業借入金利に悪影響を及ぼす。(引き締めへの)段階の筋道やタイミングを金融マーケットを織り込ませる必要がある。
・現在流動性を付与するために資産を買い取っているが、時期が来ればそれらの資産を減らしていく。
・利上げはスピーディーに、低金利は長期化に。
・1月のコーン副議長の講演における金利上昇リスクに対するWarningはサプライズだった。
・Fedは資金吸収手段として「タームデポジット(ファシリティ)」やリバースレポなどを用意している。



といった形である。これをどう解釈するかどうかは別として、やはりFedは早期出口に舵を切りたいのだろう。その理由として低金利政策を正当化するだけの米国経済でもはやは無くなったということが主因である。しかし、それだけではない。サンフランシスコ連銀のイエレン総裁が以下のような興味深い発言を行っている(Bloomberg記事参照)。


Yellen said she sees no clear links between low interest rates and rapidly escalating real-estate prices in Hong Kong.
“Hong Kong’s recovery has undoubtedly benefited from the Fed’s easy monetary policy,” Yellen wrote. Even so, “it is by no means clear that the recent bout of property price appreciation owes mainly to low world interest rates.”


(抄訳)
イエレン総裁は米国の低金利と香港の不動産価格の急上昇との関係性は不透明であるが、香港(経済)の回復はFedの金融政策の恩恵を受けていることは疑いの余地はない、としている。もちろん、世界中の低金利が直近の不動産価格の上昇の主因として作用しているかどうかについては明確ではない。



としている。Fedの低金利政策と中国・香港の不動産価格の上昇との明確な関連性はないとしたものの、その政策がドルペッグしている地域の経済を刺激していることを認めている。つまり、Fedの低金利政策が長く続ければこれらの経済を過熱させるリスクがあることを認識しての発言ではないかと思われる。プライオリティは米国経済の回復あってこその金融引き締めでなければならないのは当然だが、世界の過剰流動性をある程度抑止しておかなければならないということも意識として働くところなのかもしれない。


しかし、Fedが出口へすんなりと傾斜出来るかどうかは、近頃のソブリンリスクの問題がどうしても壁となるのかもしれない。2010年は10兆ドル規模の欧州金融機関から旧東欧諸国を含む欧州国々への融資貸出資金額の約30%以上が借り換え期限を迎えるため、欧州各国はドルのリファンディングが必要となる。つまりこの1年は恒常的にドル不足となるのだが、あまりにも需給がタイトすぎるとファンディングに失敗する可能性がある。そうなれば欧州のソブリン危機がますます深刻化していく可能性がある。従って、危機が深刻化した場合、Fedは何らかの形で流動性供給を再開していかなければならないのかもしれない。2月1日に各国中銀とのドルスワップ取極をやめたが、場合によっては再度復活せざるを得ない局面も想定される。そうなった場合にはFedの出口戦略のロードマップにも影を落としていくことになる可能性がある。これは早期出口戦略に対する大きなハードルとなっていくのかもしれない。


いずれにしても10日のバーナンキ議長の議会証言は要注目といえるだろう。バーナンキ議長がどのような出口戦略を語るのか?そしてソブリンリスクをどのように意識しているのか、ここがポイントとなる。



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All markets are focusing on EUROZONE

2010⁄02⁄08(月) 17:29
今日の東京株式市場は続落した。朝安後買いが入り一時プラス圏まで戻して行くものの、後場中盤まで膠着状態が続いたあとは売り物に押される展開となった。最終的には10,000円の大台を割り込み、引け味を悪くさせたという形となった。イカルイトG7では「表向き」何も出てこなかったことから材料視されず、本日の欧州市場の動向を見極めたいとする向きから積極的な買いは入らなかったという形だろう。但しオーストラリアで行われた極秘の中央銀行総裁会議の動向など当局者の動向は意識されている。


イカルイトG7では、ステートメントという形というものは出されず、要人発言によって討議された主要議題が明らかになったようだ。G20という枠組みが主流となった以上、G7は通貨マフィアの会合という形になっていくということなのだろうか?但し、ユーロ圏PIIGSの問題は深刻な問題として認知されている可能性が高く、今後の対応が焦点となっていくだろう。引き続きマーケットにおいては、


・ユーロドル
・PIIGSはじめオーストリア、ベルギー、オランダ国債とドイツ連邦債のスプレッド
・PIIGSのCDSスプレッド
・仏銀大手のSGとCAの株価推移



これらを意識してみておいた方が良いものと思われる。CDSに関してはベンダーが見れる方はそれを参照して欲しいが、他のマーケット動向はいろいろなところから拾ってこれるので、そちらを参照して頂きたい。対ドイツ連邦債とのスプレッドに関してはPIIGSだけでなく、GDPよりも金融機関のアセットが大きいソブリン債の動向にも関心が集まっている。例えば銀行国有化を実施しているオーストリアや小国ベルギーやオランダなどの動向も十分意識しておかなければならないだろう。そしてギリシャが危機になれば当然のことながら同国に展開している西側の銀行、例えばソシエテ・ジェネラルやクレディ・アグリコルなどの金融機関の株価動向にも関心が集まる。直近では急な下げを演じている。


ソシエテ・ジェネラル(出所:Bloomberg)


SOGX


クレディ・アグリコル(出所:Bloomberg)


CAGR


さらに考えていなかければならないのは、中長期的なECBの出方である。今のところECBは3月から出口戦略を模索していくとしているが、それは果たして出来るかどうか?というのは甚だ疑問がある。それは財政再建(=緊縮財政)とトレードオフである経済悪化リスクの問題が意識されるからだろう。以下はロイターの「ギリシャなどユーロ圏諸国の財政健全化策」から抜粋したものである。



■ギリシャ
・2009年の財政赤字は305億5700万ユーロで、対GDP比12.7%。
・2012年に財政赤字をGDP比2.8%に引き下げEUの安定成長協定の基準である2%を下回る水準に抑制することを目指す。

■ポルトガル
・2009年の財政赤字は154億ユーロ、対GDP比で9.3%。
・2010年の財政赤字をGDP比8.3%に引き下げることを目指す。

■スペイン
・2009年の財政赤字は1000億ユーロ、対GDP比11.4%。
・2010年の財政赤字はGDP比9.8%に削減する。2011年にはGDPの7.5%、12年には同5.3%にまで削減することを目指す。
・1月29日に財政健全化策を発表、2013年までに500億ユーロの節減を目指す。
・2013年までに財政赤字の対GDP比3%を達成すると表明。
・GDPの4%に相当する歳出削減を計画。
・財政健全化策には公務員賃金の4%削減も盛り込む。


特にスペインにおいては公的支出も抑制される以外にも、公務員賃金が4%削減される。さらに失業率をとってみても2割に近づいている現状の中で、賃金抑制圧力が確実に増していくわけだし、不動産バブルの後遺症から資産低下バイアスも掛かることによってデフレ圧力が加わっていくことになるだろう。またギリシャや中東欧の問題が長引き金融システム不安とでもなれば独仏もタダでは済まされない。欧州金融システムのドミノ倒し現象となっていけば不況が長期化するリスクがある。そのような中でECBの取りうる道は最終的に利下げではないか?という気もする。OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場動向では年内1回有るか無いか程度の利上げを織り込んでいるが、直近では低下基調となっており、さらにOISが低下すると市場でもECBの政策転換を織り込むこともあり得るのかもしれない。


ユーロ3ヶ月OIS(出所:Bloomberg)


EUSOC


そういった意味でも今週はEU圏のイベントに注目せざるを得ない。特に11日のEU緊急首脳会合は重要である。EU主導でギリシャ救済をするのかしないのか?というところが問われていくだろうし、今後の南欧危機の包括的な対処が求められていく。さらには12日のユーロ圏GDPにも注目である。前期比+0.4%が見込まれているものの、下ブレすればECBへの政策転換を求める圧力は増していくことになるだろう。


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1月雇用統計〜雇用回復は継続

2010⁄02⁄06(土) 00:59
1月の米雇用統計が発表された。


Non Farm Payroll -20,000人
Unemployment Rate 9.7%



■ポイント整理


・労働力人口が11万1000人増加しているにも関わらず失業率は低下していたことは表面上ポジティブ。
・失業率の裏付けはhousehood serveyに基づく就業者数が1月に54万1000人増加(前月は58万9000人減)、失業者も43万人減少した結果。
・職探しを諦めた人が110万人と大幅増加、非完全雇用率は12月の17.3%から16.5%に低下。
Non Farm Payrollのマイナスは引き続き寒波の影響を大きく受けていることが主因。建設で7.5万人減少(12月よりも減少幅拡大)がマイナスに大きく寄与しており、サービス部門の輸送・保管などで雇用減が目立つ。
・実際1月の悪天候により就業不能になった米労働者数は25万9000人となっている(Bloomberg記事参照)
・12月のNon Farm payrollは12万3000人減となっており、大幅な下方修正。サービス業の雇用減が大きかった。季節調整の影響か?
製造業(Manufactureing)のセクターが1万1000人増加となっており、米国経済が製造業から立ち直っていることが裏付けられている。2007年12月以来の雇用増。
・小売は12月の雇用減の反動から増加(これは意外)、今後の推移を見極めたい。
・政府部門は予想外に雇用減となった。センサスの効果は薄かった。しかし本格化するのは来月からなので、2月の統計では恐らくNFPは増加するものと思われる。
平均週間労働時間時間当たり賃金増減率が前月比+0.3%となっており上ブレした。賃金抑制バイアスが止まった可能性?
・FF金利先物動向によれば利下げ時期は後ずれしている。雇用統計を反映するものよりも金融システム不安が背景にあるのではないか?



FF Forward


マーケットに関しては雇用統計を織り込む時間帯は数十分程度で、それ以降は欧州の動向、ユーロ相場に左右されているという印象が強い


【追記】


NFPについては、2008年のリセッション入りから140万人下方修正されている。たまたま旧データの時系列が残っていたので、新データがどのような下方修正ぶりだったのかを時系列で表すグラフを作成した。実は、BSLは2005年からのデータを完全に入れ替えている。


NFP Old vs New




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リスク回避と雇用統計

2010⁄02⁄05(金) 17:26
今日の東京株式市場は急落した。全面安的な展開となったが、トヨタは反発となった。


NY市場の下落においては新規失業保険申請件数(IJC)が増加して雇用状況が悪くなっているというベンダーの情報には違和感を感じざるを得なかった。昨日のNY市場においては、いろいろな憶測が飛んだ。NY州のクオモ司法長官が、BofAによるメリルリンチ買収の際に巨額の損失を抱えていることを意図的に開示しなかったとして提訴したことから、莫大な賠償金を払わなければいけないのでBofA傘下のファンドが顧客から解約されるのではないか?との噂が相当出ていた。それ以外にもソブリンリスクに絡んで2010年版LTCMの懸念もくすぶっており、リスク回避的行動が強まったような感じの相場だった。リスク回避的な行動は債券相場から動くことも多く、その後株式や外為市場に波及していった可能性がある。特にドル円相場に関しては円ショートポジションがそれなりに入っていたと思われるのでストップロスを巻き込みながら一気に下がったという感じなのだろう。


UST30Y先物の5分足


UST30Y



USD/JPYの5分足


USD/JPY



そういった形でリスク回避的な行動が続いているが、そんな環境の中で雇用統計が発表される。雇用統計は他の経済指標とは大きく異なる。それはFedの金融政策を決める上での重大なファクターである。従って、昨日考えた"SMRT"のうち、今晩の22時30分はソブリンリスクと金融政策を同時に相場は天秤に掛ける展開となる。そのため、雇用統計を受けてマーケットがどのように動くのか、今回はシュミレーションが難しい。「占い」程度に捉えていただければ。


(1)雇用統計を重視した場合


この仮定はソブリンリスクが落ち着く、すなわちポルトガルなりギリシャなりの国債価格が安定すること、ないしはこれらのソブリンCDSが落ち着く、あるいは雇用統計が重視されるマーケット環境となる場合となる。仮にNFPがポジティブサプライズとなった場合には足元金利の上昇懸念というアプローチからドル高・株安・債券安を想定する。特に債券は乱高下しやすいのではなかろうかとも思われる。ネガティブサプライズとなった場合には足元金利の低下から対円でドル安に振れる可能性があるが、米国の雇用環境の悪化を気にされて株安となる可能性がある。債券は当然買われる展開と想定する。インラインなら株は安堵感からリバウンドとなるのかもしれない。


(2)ソブリンリスクを重視する場合


この仮定はポルトガルなりギリシャなりの国債価格が本日も急落し、ソブリンCDSのスプレッドがさらにワイド化する場合となる。この場合、NFPがポジティブサプライズとなった場合において足元金利が上昇しても債券は質への逃避から中期で買われるだろうし、株式はリスク回避から連鎖安の様相の可能性がある。ドルは高くなり、ユーロは一段安となる。ネガティブサプライズとなった場合にはセンチメントが悪化するので株安債券高となるし、ユーロに対してもドル高となると想定する。インラインであった場合にもリスク回避的な動きとなるのだろう。


NFPに関しては市場予想にお任せするとして、シナリオだけ整理すれば、


・ADP雇用報告で示されたものは製造業が減少・サービス業がプラス。
・建設セクターがマイナスの寄与となる(寒波の影響)
・Manufactureのセクターはマイナスなのかプラスなのか、ここでNFPの振れが出る。ISM製造業景気指数の雇用指数からすれば増加もありうる
・サービス業のうち、小売・情報通信はマイナスになる可能性(チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスの企業人員削減数より)
・人材派遣・専門職はNFPの押し上げ効果となる可能性が強い
・政府部門はセンサスの効果がどの程度でるか?最終的にADP雇用報告(+ADPを使っていない会社の雇用者数)+政府+アルファ=NFPなのでこのセンサス含む政府+アルファの部分がどれだけ押し上げるかがポイントとなる。


このような感じで考えている。


難しいのはソブリンリスクが金融政策に及ぼす影響を考えなくてはならないことだ。ソブリンリスクが何をもたらすかといえば、ドル不足の状態を招く可能性がある。ユーロ売りに関しても投機的な動きだけでなく、資本取引上のドル買い要因も抱えているという観測もある。各国中銀のドルスワップ取極が終了している以上、ドル決済を行う場合、ドルファンディングはますます難しくなっている可能性も指摘出来る。それはソブリンレベルであってもドルを中銀間の融通で調達するのではなく、市場を使って調達する事になるので、市場を動かす要因となる。ドル需給がタイトとなり、ソブリンや金融機関のドルファンディングが困難になれば、域内金融システムのリスクも内包する危険性がある。このためFedの金融政策の動向に何らかの影響を及ぼす可能性も否定できない。この点はもう少しソブリンリスクの影響を十分考えてみたいと思われる。TEDスプレッドが落ち着いている局面ではまだよいが、これが急激に跳ね上がる場合にはこういったことも十分考慮に入れなければならないだろう。


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SMRT〜マーケットの懸念事項

2010⁄02⁄04(木) 19:12
今のマーケットを俯瞰すると、いくつかの懸念事項が生じてきている。SMRTと名付けるとスマートなのだが。


・ソブリンリスク(Sovereign risk)


現状のグローバルマーケットで最も意識されているテーマはドバイ・ショックに端を発したソブリンリスクであろう。今やPIIGSの問題を始め、ついにはPIMCOのビル・グロースがInvestment Outlookで"The Ring of Fire"としてまとめてしまったところがあり(Twitter上で大騒ぎ)、いろいろと各国の財政問題が深刻化してきている。もともと、Debtは民間にあった。しかし、サブプライム危機以降、金融システム維持と恐慌抑止のためにそれをソブリンが引き受けた。そしてソブリンのバランスシートが傷んでいるところ及び景気が悪いところから危機が生じていく。


ソブリンは破綻しない、というのがコンセンサスだろう。仮にギリシャがデフォルトすればそれは国内の金融システムにとどまらずいろいろなところへと飛び火する。BNPパリバが「CDS相手方リスクが市場を揺るがす恐れも」というレポートをリリースした(Bloomberg参照)ようだが、こういったことにでもなれば域内全体の金融システムがおかしくなる。リーマンショックからまだ2年も経っていないし、大恐慌の教訓もある。従ってIMFなり欧州委員会なりが手を打つだろうと思われる。


しかし、あまり語られていないのだが、喫緊のリスクとして現在ドイツ連邦債とPIIGS債とのディールの問題がある。ドイツ連邦債とギリシャ国債の利回りのスプレッドがワイド化しているという話は常にマーケットの話題となるが、股裂き状態となったファンドの存在が今後クローズアップされていく可能性がある。すなわち、いくつかのファンドはドイツ連邦債とギリシャ国債とのスプレッドのタイト化に賭けていた場合、現状のワイド化した状況では多額の損失を抱えている可能性がある。また、流動性の高いドイツ連邦債を借りてきてレポ市場でファンディングしたマネーを使ってPIIGS債に投資をしている場合も想定出来る。そういったファンドの損失額は今後確定していくものと思われ、もしかしたら新たなLTCM、といった話が現在進行中なのかもしれない。


・金融政策の転換(change of Monetary policy)


金融政策の転換も意識しておかなければならない。中国やインドは引き締めの方向に舵を取っており、利上げというカードを切るところまで近づいている。Fedも同様で、MBSの買い取り打ち切り→ディスカウントレート(公定歩合)引き上げまでのロードマップは出きているようにも思われる。その後に利上げを行うことをマーケットに浸透させていくことになるのではないか?と個人的には思うのだが、当然利上げとなれば景気回復のモメンタムは緩やかなものとなっていくし、株式市場もそれを織り込むべく推移していく。


・銀行規制(Regulation)


銀行規制もイベントリスクである。特に今週末のG7で何がコミットされるのか?というところが焦点となる。ボルカー経済回復諮問会議議長は「大手金融機関の範疇としては、米国の大手金融機関4〜5行、世界では20数行」が銀行規制の対象になるとしている。そのうち日本の銀行にも言及しており、本日の東京株式市場でもメガバンクが値を下げていた。仮にグラス・スティーガル法的なボルカールールが強行的にコミットされた場合、世界的に銀証分離という流れとなる可能性も否定出きず、ユニバーサルバンキング路線を歩んでいる邦銀にとってもダメージがないとは言い切れない。


・トヨタ問題(problem of Toyota Motors)


最後に東京株式市場にとって最も意識されているのがトヨタ問題だろう。リコール問題の影響はこれから数値化されていき、どれだけの引当を計上すべきなのか、現段階では量り知れないところが大きい。会社側は「リコール問題で1700〜1800億円費用計上」と決算説明会の会見上で発表しているようだが(NIKKEI NET参照)、最終的な引当金など今の段階では不透明である。米道路交通安全局(NHTSA)はリコール問題の対応に関して、米政府がトヨタに民事制裁金を課すことを検討しているとのニュースフローもある(Bloomberg参照)。最終的な負担金額はまだ何も確定しておらず、この段階で業績に関して不確定要素が多い中、何故業績修正を開示情報として出してきたのか分からない(個人的な意見として、「業績予想は未定」とすべきだったと思われる)。増額修正の数値だって今後の自動車の売上の回復を見込んで作成されているが、今後のリコール問題の拡大如何によっては同社の販売活動そのものに甚大な影響を与える可能性もある。個人的に失言だと思うし、当の本人も撤回したが、ラフード米運輸長官によるリコール対象車種の保有者は「その車の運転をやめるべき」との発言は同社の自動車販売に少なからず風評といった形で影響を与えている懸念もある。日本の新聞各紙はトヨタの問題を大々的に扱っていないが、ウォール・ストリート・ジャーナルフィナンシャル・タイムズニューヨーク・タイムズもトップエントリはトヨタである。


WSJ


WSJ



FT(despite recallという見出しに象徴されている)


FT


NYT


NYT


従って、このような問題のほとぼりが冷めるまでにはそれなりの時間がかかるものと思われ、本日の増額修正でアク抜けとなるのかどうかは分からない。決算を受けて本日現段階のフランクフルト市場ではやや買い戻しが先行しているが、ADRがどのような形で帰ってくるかわからないし、社債・CDS等クレジット市場の動向も見定めておかなければならないだろう。


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