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年頭所感~ハイエクの逆襲と迎え撃つケインズ 

あけましておめとうございます。


昨年は本当に激動の年でした。今年は皆様に取りまして良い年でありますよう、心から祈念いたします。


初日の出



新年にあたり、所感を述べていきたいと思います。


今年は経済学説循環において重大な転機となることが予想される。それはこれまで沈黙していたハイエクが逆襲に打って出て、これまで大きく支持されてきたケインズがそれを迎え撃つ、という構図だろう。既にご覧になられた方も多いであろうが、ハイエクとケインズについては以下の動画がわかりやすく面白いので参考として取り上げておく。







■2008-09年、時代はケインズ主義を要請した


2008年から引き起こされた、グローバルレベルでの金融危機は膨大な財政出動を余儀なくされた。そしてそれは、金融機関救済とリセッションに伴う景気刺激策であった。リーマンショック時、米国ではTARPやFedの信用緩和・流動性供給によって金融システムや信用秩序の維持が図られた。また米国外でも中央銀行は積極的な流動性供給を行い、金融システムの崩壊を食い止めるべく奔走した。この時点でこうした金融政策や財政政策はある程度ワークし、2009年になると、信用秩序の維持に一応成功した。しかし同時に、各国経済が"Great Recession"といった形で極度な不況に襲われた。米国では800万人以上の雇用が奪われた。このとき、バブルに浮かれ、高給取りの金融機関は救われて、救われぬ失業者という構図の中で、時代は雇用の確保を求め、ケインズを要請した。そして、ブッシュ政権、もしくは遡ってグレートモデレーションを築き上げたレーガン、サッチャーに受け入れられていたリバタリアニズム的な発想はことごとくパージの対象となっていった。無論、その思想の中核的なところに位置しているハイエクについても同様である。


そのような背景の中で、時代はオバマ、そしてケインズを要請した。オバマ大統領は就任演説でブッシュ前大統領を批判する形で以下のように述べた。


That we are in the midst of crisis is now well understood. Our nation is at war against a far-reaching network of violence and hatred. Our economy is badly weakened, a consequence of greed and irresponsibility on the part of some, but also our collective failure to make hard choices and prepare the nation for a new age. Homes have been lost, jobs shed, businesses shuttered.

我々は危機のまっただだ中にいることは十分理解されている。我々の国は、暴力と憎悪の遠大なネットワークに対して戦争を行なっている。我々の経済は非常に弱っており、一部の人間の強欲さや無責任な結果なのだ。しかし、我々の集団的失敗は厳しい選択と、新しい時代の国家に対する準備をさせている。住宅が奪われ、職を失い、仕事も閉じてしまっている。



そして経済政策に関わる部分は以下のように述べている。


The state of our economy calls for action, bold and swift. And we will act, not only to create new jobs, but to lay a new foundation for growth. We will build the roads and bridges, the electric grids and digital lines that feed our commerce and bind us together. We'll restore science to its rightful place, and wield technology's wonders to raise health care's quality and lower its cost. We will harness the sun and the winds and the soil to fuel our cars and run our factories. And we will transform our schools and colleges and universities to meet the demands of a new age. All this we can do. All this we will do.

我々の国の経済は、大胆かつ迅速な行動を求めている。我々はの行動は、雇用創出を行うだけでなく、成長への新たな基礎を築くことである。我々は道路や橋を建設し、送電線網や、商業的そして一緒に顔を合わせるためにデジタル回線を張り巡らせていく。我々は正当な場所へ科学を修復していき、ヘルスケアの質の向上やコストの引き下げのための技術革新のために予算を振舞っていく。我々は日光や風を活用し、自動車や工場を操業させるための燃料を土に戻していく。そして我々は新しい世代の需要を満たすために学校や大学を立て替えていく。これらすべては我々が出来る。そして実行していく。



このような形でリセッションに対して雇用を創出するため、巨額の財政を投じオバマ版ニューディール政策を実施していくことを国民に約束した。そして金融面からは、ニューケインジアン的な考え方を持ち、大恐慌の研究家でもある、ベン・バーナンキ議長を筆頭に緩和的な金融政策を実施していくこととなった。バーナンキ議長は経済に不確実性があり、雇用の回復に満足しておらず、またデフレへの懸念もあったことから、量的緩和政策を行なってきた。そして2011年にはフォワードガイダンスのさらなる明示化やオペレーション・ツイストを通じて長期金利を低くさせ、経済を下支えしていくといった政策が決められた。


日本でも小泉改革が「格差を生み、新自由主義の結果経済が疲弊した」との批判が次第に高まり、これが2009年の総選挙において民主党が政権を取った原動力となったのは記憶に新しい。民主党は大きな政府、再分配(子ども手当などに代表される)、新しい公共、雇用創出をスローガンとして選挙に臨み、長きに渡って続いてきた自民党政治を終わらせた。以下は当時の鳩山首相の所信表明演説の一節である。


 市場における自由な経済活動が、社会の活力を生み出し、国民生活を豊かにするのは自明のことです。しかし、市場にすべてを任せ、強い者だけが生き残ればよいという発想や、国民の暮らしを犠牲にしても、経済合理性を追求するという発想がもはや成り立たないことも明らかです。

 私は、「人間のための経済」への転換を提唱したいと思います。それは、経済合理性や経済成長率に偏った評価軸で経済をとらえるのをやめようということです。経済面での自由な競争は促しつつも、雇用や人材育成といった面でのセーフティネットを整備し、食品の安全や治安の確保、消費者の視点を重視するといった、国民の暮らしの豊かさに力点を置いた経済、そして社会へ転換させなければなりません。



彼もまた、オバマ演説と同様、2000年代前半から中盤にかけて行なってきた政治手法とそれを取り巻く新自由主義などの考え方を厳しく批判した。巨額の財政を投じ、子ども手当のような再分配に傾斜する政策を行なっていった。


■財政拡大の行き詰まり


金融危機時の対応として民間債務を政府債務に移転させる動きを各国が行なってきた。端的にいえば、銀行への公的資金の注入である。また、リセッションにより失業率が大きく上昇していったことから、雇用創出や景気刺激策として財政を投じていくこととなった。しかし、リセッションにより各国税収が大きく落ち込んでいく中で、銀行救済のための費用や景気刺激策のための費用が嵩み、財政収支が極端に悪化していく事態となった。特に欧州の小国では、国のGDPよりも銀行のバランスシートが大きく、救済が国家財政を逼迫する事態となっていった。そして2009年以降、財政のサスティナビリティに対する疑念から、欧州でソブリンリスクが勃発した。以下のグラフは2005年と2011年(見通し)の財政状況を示したもので、縦軸が対GDP比財政収支、横軸がグロスの対GDP比公的債務残高である(出所:IMF WEO)。


2005

Debt Problem 2005



2011年見通し

Debt ploblem b



2005年、信用バブルの時期は好景気を謳歌し、税収も潤沢でかつ、また支出もそれ程膨らむことはなかったことから、現在ソブリンリスクとして意識されているスペインやアイルランドはむしろ財政黒字であり、欧州各国の中において優等生だったのである。アイルランドは法人税を大きく引き下げ、海外資本の流入が活発となり、2000年代中盤までは最も成功した国の一つだと言われてきた。しかし、金融危機により海外資本は流出し、国内経済も不振を極め、またバブルの後遺症に苦しむ銀行を国有化することで財政が急激に悪化、EU/IMFに救済を求めるまでになった。スペインもバブル崩壊後、国内で雇用を吸収できる産業に乏しいことや国内の雇用の流動性が極めて悪いことから失業率が20%台にまで上昇、また不動産価格が下落する中で銀行の不良資産が膨らみ、金融システムの安定を脅かす事態となったことから、国内銀行に対して公的資金を注入することとなった。その結果、財政赤字が大きく膨らんでいくこととなった(但し、債務の水準は比較的小さいので、財政出動によって景気を刺激していくことは可能である)。


米国でも、2011年8月に連邦債務が上限(14兆2940億ドル)に達することとなった。住宅バブル崩壊以前においても、米国は対テロ戦争を遂行している国であり、国防予算が財政を逼迫してきた。そしてバブルが崩壊し、雇用対策や住宅市場対策などで多額の財政出動を行なってきた。米国の対GDP比公的債務残高は2005年に61.6%であったが、2011年の見通しでは99.32%にまで拡大している。そして7月に議会で債務上限交渉を行い、政治的な駆け引きに、市場だけでなく消費者や企業の信頼感も振らされることとなった。結局シーリングリミット交渉は、期限までに共和・民主両党で合意がみられ、テクニカルデフォルトは避けられた。しかし、財政赤字削減への取り組みの甘さからS&Pが米国の信用格付けをトリプルAから引き下げた。この間、失業率はピークから低下してきているものの極めて緩慢であり、Fedの長期的な見通しである5-6%に低下していくには今後数年は掛かる。さらに家計のバランスシート調整問題は住宅価格の下落と伴って根が深い問題として意識されている。これまではこうした対策についても巨費を投じてきたが解決には程遠く、今後は赤字抑制にコミットしていることもあり、こういった対策に継続的に巨費を投じていくことが難しくなっていく恐れがある。


そのような中で、財政支出を抑制し、小さな政府を目指す茶会(ティーパーティ)が台頭し、一方で長期失業に対する不満などからオキュパイ・ウォール・ストリート(OWS)といった活動が活発していくこととなった。茶会はどちらかと言えばリバタリアニズム的志向が強く、オキュパイ運動はリベラリズム的な志向が強いものと思われる。


■ロン・ポールの台頭と迎え撃つニューケインジアン


そのような中で今年は米大統領選挙が開催される。オバマ大統領は当然再選を狙って世論に働きかけていくだろう。対する共和党については、現在ロムニー氏が有力候補とみられているが、ロン・ポール下院議員が追走しており、大統領選挙のダークホース的な存在とみられている。彼は従来からFed段階的廃止論を唱え、共和党で唯一イラク戦争に反対し不干渉主義の立場を取る。彼の主張は過激である。彼の経済政策的な主張を少し挙げてみると、以下の通りである(ronpaul2012.comより)。


* Vetoing any unbalanced budget Congress sends to his desk.
大統領は、議会におけるあらゆる不均衡な予算に対して拒否権を発動する。

* Refusing to further raise the debt ceiling so politicians can no longer spend recklessly.
さらなる債務上限引き上げを許さない、従って政治家はもはや浪費出来ない。


* Fighting to fully audit (and then end) the Federal Reserve System, which has enabled the over 95% reduction of what our dollar can buy and continues to create money out of thin air to finance future debt.

連邦準備システムを徹底的に監査する(そして終わらせる)ために闘う。ドル札を95%減らすことでドルが買われ、将来の債務のファイナンスを行うためにマネーを発行するというような空気を取り除く。


* Legalizing sound money, so the government is forced to get serious about the dollar’s value.

サウンドマネー(健全なマネー)を合法化し、政府はドルの価値について真剣に考えさせる。(訳者注:Fedが発行する通貨の代わりに、健全なマネーを使うことを合法化することである)


* Ending the corporate stranglehold on the White House.

ホワイトハウスにおける企業への締め付けをやめさせる。


* Driving down gas prices by allowing offshore drilling, abolishing highway motor fuel taxes, increasing the mileage reimbursement rates, and offering tax credits to individuals and businesses for the use and production of natural gas vehicles.

オフショアの採掘を認めることで、燃料価格を引き下げ、高速道路の自動車燃料税を廃止。マイレージの償還率を引き上げ、企業や個人の天然ガス車の生産や使用のために税額控除を行う。


* Eliminating the income, capital gains, and death taxes to ensure you keep more of your hard-earned money and are able to pass on your legacy to your family without government interference.

あなたが稼いだハードマネーをより多くし、政府の干渉なしに家庭に恩恵を受けさせるために、収入、キャピタルゲイン、相続税を排除する。


* Opposing all unfunded mandates and unnecessary regulations on small businesses and entrepreneurs.

小企業に対して未積立義務や不必要な規制を廃止する




彼はフリードリヒ・ハイエクの写真を、事務所の壁に掲げているといわれているほど、リバタリアンなのである。そしてFedが大嫌いなのだ。彼は、均衡水準を逸脱した貸付金利の供給によって資源配分を人為的に歪めているというハイエクの批判を支持しているものとみられる。つまり、ハイエクの主張では、金利を下げ、需要以上に資金を供給するような状況(本来金利は需要と供給の均衡によって成り立つが、中央銀行が人為的に金利を下げて資金を供給過剰にさせる)となれば、投資活動が活発となり好景気となる。しかし、金利の反転上昇と新規マネーの流入停止という副作用を招き、景気循環の波を大きくさせてしまう(嶋中雄二「先読み!景気循環入門」より)。現在の状況に例えるならば、ITバブル崩壊後のリセッションから住宅バブル、そしてバブル崩壊と金融危機、グレートリセッション時におけるFedの政策は、資金の需要以上に供給を過剰にさせたことで、景気変動の振幅を大きくさせた、ということだろう。こうした背景からFedに対して批判を行ってきているものと思われる。また、FedのQEにより原油高騰を招き、人々の購買力を失わせ、そして景気回復の足枷となってしまったということも批判材料となっている。そしてサウンドマネーの合法化の主張については、Fedが独占的に通貨発行権を握っていることに対して不満を持っている表れであろう。ハイエクのような立場からすれば、通貨は何も中央銀行だけが発行を許されているわけではなく、自らのアセットをバックにして通貨(負債)を発行することも可能である。


さらに、彼の立場からすれば、昨今の欧州の財政危機に関連して、米国の財政が行き詰まり、当然のことながらFedが財政ファイナンスのためにプリンティングマネーを行うといった事態は絶対に許されない。そのために規制を緩和し自由な経済を促進することや、減税を行うことで経済活動を活発化させていきながら、同時に財政規模やマネタリーベースを縮小させていくといった、「小さな政府」を目指そうとしている。世界的に金融及び財政政策の行き詰まりを予感させる中で、こうした「小さな政府」を志向していくことでそういった懸念を克服しようとしているものと思われる。欧州債務危機や米国の債務の懸念、あるいはオバマ政権の経済運営への批判から、今年は政治的にこのような主張がある程度受け入れられていくものと考えられる。


しかし、例えばポール・クルーグマンのような立場(ニューケインジアン)の学者はこうしたロン・ポールなどの主張に大きく反発している。以下はNTYにおけるクルーグマンのブログのエントリ"Inflation Predictions"の一節である。


Look, the Austrian/Ron Paul types made some very strong predictions about inflation - and rightly, given their model of how the world works. In their version of reality, it really isn’t possible to triple the monetary base without dire effects on the price level. In my version of reality, of course, that’s not only possible but what the model predicts in a liquidity trap.

オーストリア学派やロン・ポールのような人は、インフレに対してとても強い予測を行うが、彼らのどのように世界が動いているか、というモデルによれば、それは正しい。彼らの現実的な見方では、価格水準への悲惨な効果なしにマネタリーベースを3倍にすることは現実的ではない。私の現実的な見方ではもちろん、流動性の罠におけるモデルの予測でしか(インフレが起こらずにマネタリーベースが3倍になっているという現実を説明するのは)不可能だろう。


So since we did indeed triple the monetary base with nothing much happening to inflation, the right lesson to draw is that their model is all wrong...

我々は実際にインフレが大きく発生することなしにマネタリーベースを3倍にしてきたじゃないか。このような教訓では彼らのモデルは間違っている。



つまり、流動性の罠に陥っており、このような状況ではいくら金融政策を緩和的に行なっても激しいインフレにはならないことを指摘しており、ニューケインジアン的発想、すなわちインフレ期待を高め、財政を拡大し、需要を喚起していくといった現行の政策の正当性をアピールしている。彼らは、ロン・ポールよりもオバマを今後も支持していくだろうし、雇用の確保を求めるオキュパイ運動も彼らに味方するかもしれない。


■経済学説循環的な位置づけ


経済学説的な循環からすれば、不況のケインズ、好況のハイエクと言われる。つまり、不況時は緩和的な金融政策と財政出動によって資源活用を活発化させる。そして好況時には資源配分に歪みが生じないように適切な金融引き締めを行う。スタグフレーションを克服し、長期好況時に入った1980年代-90年代は財政やマネーサプライを出来るだけ健全化し、規制を緩和して減税を行うハイエク的な思想が受け入れられ、大恐慌を克服したとされるニューディール政策のようなケインズ主義は不況時に好まれる。


今年はハイエクの逆襲と迎え撃つケインズの構図となると予想しているが、これまでとは趣が異なる。つまり、ハイエクの逆襲は、行き詰まりを予感させる財政及び金融政策といった構図で要請されるものと思われる。それを打破するための「小さな政府」と規制緩和ということなのだろう。一方で欧州のように、景気が回復していない状況で財政を引き締めれば、景気が悪化し税収不足も深刻化することで、財政状況がさらに悪化するリスクがあり、財政や金融を今まで通り拡張的にさせて景気を浮揚させていくことが何よりも重要だと考える意見もある。恐らく本年は、両者が激しくぶつかり合う展開が想定されるのではないかと思われる。


ハイエクの逆襲は如何にしてロン・ポールが米大統領選挙の台風の目となりオバマを揺さぶる存在となっていくかであり、迎え撃つケインズはオバマが支持を拡大し圧倒的な力で大統領選挙を勝ち抜いていくかがポイントとなる。オバマが再選されたとしても、僅差もしくは苦戦であればそれは今後もこの論争の火種がくすぶり続けるということになるのかもしれない。


いずれにしても今年は世界的に選挙の年ということになる。


参考文献:


「ハイエク全集第1期第1巻『貨幣理論と景気循環/価格と生産』」

貨幣理論と景気循環/価格と生産 ハイエク全集1-1 【新版】貨幣理論と景気循環/価格と生産 ハイエク全集1-1 【新版】
(2008/07)
ハイエク

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嶋中雄二著「先読み!景気循環入門」日本経済新聞出版社

先読み! 景気循環入門先読み! 景気循環入門
(2009/09/26)
嶋中 雄二

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カテゴリ: 市場視点

タグ: 2012年の経済・マーケットを考える  金融政策  ドル  Fed 
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2012年の経済・マーケットを考える(2)~デレバレッジ 

2012年の金融環境を考えるにあたり、最も意識されやすくなることの一つには「デレバレッジ」が挙げられている。そして、欧州金融機関におけるデレバレッジの動向が、世界経済に与えるインパクトを大きくしてしまうのではないかと懸念されている。欧州の金融機関は信用バブル期に外貨建ての資産保有を拡大させてきた。以下は欧州MFI(金融機関)のドル建てローン(欧州域外カウンターパート)の保有残高と欧州MFI(金融機関)のドル建て証券(株式除く・欧州域外カウンターパート)の保有残高の推移の推移である(出所:ECBのデータ)。


MFI Loans 20111222


MFI Holding securities 20111222

しかし、欧州の金融機関は例えばドル建ての資金の調達は、米国内にリテールを持つわけではないので、専ら市場調達に依存してきた。2007年以降の金融危機ではドルファンディングが困難になり、一部の外貨建て資産を圧縮させてきた。その後金融危機の状態から脱し、そうした資産を圧縮する圧力は緩和された。しかし、2010年にソブリンリスクが発生すると、欧州の金融機関が欧州の周縁国のソブリン債を保有していることから、カウンターパーティリスクに発展した。米銀など主なドルの出し手は次第に欧州の金融機関に対してクレジットラインを絞る動きとなった。2010年から2011年夏場まではCPを発行する形でドル資金を確保してきたが、2011年秋以降市場環境の悪化によりこうしたCPが発行できなくなり、さらにドルの調達コストが大きく上昇していく中で、欧州の金融機関はドル資金を市場から調達することが難しくなってきている。以下はドル調達コストの指標である1年物ユーロのベーシススワップの推移である(出所:Bloomberg)。


Euro Basis Swap 20111222



このような市場環境にある中で、2011年11月に各中銀は協調してドルスワップ協定の強化を行い、ドルスワップ協定に適用される金利を50bp引き下げ、ドルスワップ協定の延長を行った。このことは無秩序なデレバレッジ圧力を緩和させるものと期待されている。この決定以降、市場ではややドル調達コストが低下しているが、それでもなお厳しい状況が続いている。そしてデレバレッジの動向においては、2012年6月頃には2011年10月に決まった欧州金融機関の資本増強の動きも意識される。コアTier1比率を9%にするには、エクイティによる調達(分母の拡大)か、資産圧縮(分子の縮小)しかない。EBAでは欧州の金融機関の資本不足額を1147億ユーロとしており、エクイティによる調達ですべて賄うことができるのであれば問題はないが、現状これだけの額を増資で集めることは困難であり、一部は資産圧縮によってコアTier1比率を目標の9%に引き上げるものと見られ、デレバレッジ圧力として意識される。


デレバレッジ圧力がかかるとどのようなことが問題になるのか?言い換えれば欧州の金融機関が資産を切り売りすると、実体経済等にどのような悪影響が出るのか?ということである。これについては、NY連銀ダドリー総裁が12月15日の議会証言において以下のように述べ、ドルスワップライン協定の強化という政策の正当性を表明している(NY Fed "Testimony: What the Euro Crisis Means for Taxpayers and the U.S. Economy" より)。


One way we can help to support the availability of dollar funding is by engaging in currency swaps with other central banks. This has been used as a policy tool dating back to 1962. Recently, the Federal Open Market Committee decided to re-launch this tool, cooperating with five other central banks. Our intention is to create a credible backstop to - but not supplant - private markets. Banks with surplus dollars are more likely to lend to banks in need of dollars if they know that the borrowing bank will be able to obtain the dollars it needs to repay the loan, if necessary, from its central bank.

ドルファンディングのアベイラビリティをサポートするために、我々が出来ることは、他の国の中央銀行と通貨スワップラインを締結することである。これは政策手段として使われたのは1962年に遡る。最近では、FOMCは5中銀と協働でこの手段を再開することを決めた。我々の狙いは、民間のマーケットに取って代わることはできないが、信頼できるバックストップを創りだすことである。もし、必要であれば、借り手の銀行が中央銀行からドルを取得することが出来るならば、ドルが余剰にある銀行は、ローンを返済するのに必要なドルを銀行に貸し出すことが出来るであろう。


This action is designed to support financial stability, avoid an unnecessary tightening in financial conditions and support economic activity and jobs in the United States. In particular, by reducing the cost of dollar funding via the swap lines last month, we reduced the pressure on banks in Europe to abruptly liquidate their U.S. dollar assets. Thus, this step will help to insulate U.S. markets from the pressures in Europe and support the availability of credit to U.S. households and businesses. European banks are particularly active in areas such as trade finance, project finance, energy lending and municipal finance - a sharp contraction of the financing they provide would be harmful for the U.S. economy as a whole including for U.S. exporters, firms working on infrastructure projects, the energy industry and hard-pressed state and local governments across the country.

この行動は金融の安定をサポートし、金融の状況における不必要な厳しさを回避し、米国における経済活動や雇用をサポートするために設計されている。特に、先月のスワップラインを通じてドルファンディングのコストを引き下げることは、我々は欧州における銀行の米国資産の強制的な清算を行う圧力を抑えている。従って、このステップは欧州におけるプレッシャーから米国のマーケットを隔離することを助け、米国の家計や企業における信用ののアベイラビリティをサポートする。欧州の銀行は特に貿易金融やプロジェクトファイナンス、エネルギー向け貸出や地方のファイナンスのような活動を行なっており、ファイナンスの急激な収縮は、米国の輸出業者や、インフラプロジェクトに関わる企業、エネルギー産業、全国の州や地方政府を含む広範な米国経済を傷つけてしまうだろう。



このように欧州の金融機関が外貨建ての資産を圧縮することは、米国経済にとっても決して小さい問題ではないことを指摘している。ドルのファンディングコストが高くなること、あるいは銀行の資本増強の動きの中で、こうしたドル建ての資産(ローンなど)が切り売りされてしまうことは、米国経済だけでなく世界経済(特にバンキングシステムが発達していない新興国)にも大きな影響を与えることが想定される。2009年にドバイショックが起きたが、ドバイの債務水準におけるサスティナビリティにも疑念が生じたが、それと同時に主に英国の金融機関がドバイ向けの貸出を引き揚げようとしたこともトリガーの要因として意識された。従って、欧州の金融機関が各国にどれほどのエクスポージャを有しているか、ということもデレバレッジの影響を占う上で重要となってくる。以下はBISの欧州の金融機関による、各国向け対外与信の一覧である(出所:BIS)。


・アジア・太平洋


Asia 20111222


・欧州(先進国除く)


EEurope 20111222



・ラテンアメリカ


LAmerica 20111222



*A国の銀行がB国に現地法人を持っていてその現地法人が現地企業や政府等に対して(外貨・現地通貨建て)与信を行なっている場合、それはA国の対外与信として扱う。例えば、HSBCやスタンダードチャータードは英国の銀行であるが、香港で預金・与信業務を行なっており、HSBCHKやスタンチャート香港の現地向けの(外貨・HKドル建て)与信は、BIS統計においては英国の対外与信として扱っている。従って、上の表は対外与信であり、対外与信は国際与信(国境を超えた(クロスボーダー)与信と外国銀行の支店・現地法人による外貨建ての国内与信)と外国銀行の支店・現地法人による地場通貨建て与信を合わせた与信のことである。


ここで、ロケール別の与信として、インド、先進国除く欧州、ブラジル、中国と分けて考えてみることにする。以下は報告ベースの金融機関(日本や米国なども含む)による現地法人による外貨建て及び地場通貨建ての国内与信とクロスボーダー与信の推移である(出所:BIS)。


・中国


China 20111222


・インド


India.png



・先進国除く欧州


Europe ex developed



・ブラジル


Brazil.png



インドと中国は外国銀行の支店・現地法人による外貨建て及び地場通貨建ての国内与信(ここではローカル与信とする)の比率が小さく、クロスボーダー与信が大きい。一方で先進国除く欧州とブラジルはローカル与信が大きく、クロスボーダー与信の割合は小さい。つまり、例えばブラジルであれば、スペインのサンタンデール傘下のバンコ・サンタンデール・ブラジルはブラジル国内にリテールバンクを展開しており、レアルの調達は安定しているといえる。従って、ブラジルにおいては、スペインの金融機関がブラジルに行なっている対外与信は金額ベースでは膨大ではあるが、そうした子会社でリテール展開を行なっており、デレバレッジの圧力に晒された際のバッファとなる。つまり欧州の金融機関はデレバレッジに際してそうした海外の子会社金融機関を売却すれば済み、貸出が引き揚げられる可能性はいく分和らぐ。一方でクロスボーダー与信の割合が大きいインドなどは、デレバレッジの圧力に晒された際、信用収縮の影響を受けやすくなる。中国もそうした傾向がみられる。


経常収支面からみると、中国は経常収支の黒字が膨大であるため、資本が引き揚げられても急激に通貨が安くなる危険は大きくないが、経常赤字であるインドやブラジルはそういったリスクは大きい。また相対的に東欧諸国も資本流出に対しての脆弱性は小さいとはいえず、ハンガリー中銀は資本流出によるフォリント安を警戒して利上げを行なっている。以下は各国の経常収支(2011年、出所:IMFWEO)。


Current Account Balance 20111222



従って、2012年は、こうした欧州の金融機関によるデレバレッジの進展が世界経済にどのような影響を及ぼしていくのか、このあたりが注目されていくものと見られる。特にバンキングシステムに脆弱性がある新興国へのインパクトがどの程度となるのかがポイントとなってこよう。ワーストシナリオとしては通貨危機とということも想起される。そして各国中銀はドルファンディングを緩和してこうしたデレバレッジの圧力に対するバックストップを行なっているが、2012年において、ソブリン危機がいっそう深刻化し、ドルファンディングが困難になっていく状況になっていく可能性もあり、そのあたりの対応も焦点となっていくものと思われる。



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カテゴリ: 市場視点

タグ: 2012年の経済・マーケットを考える  金融政策  ドル  欧州金融不安  ユーロ  新興国 
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各国中銀間のスワップライン協定金利引き下げ~デレバレッジ圧力の緩和が狙いか 

11月30日にBOC、BOE、BOJ、Fed、ECB、SNBは国際金融システムに対する流動性支援提供能力を拡充するための強調対応策を公表した。以下はBOJのステートメントである。


国際短期金融市場の緊張への中央銀行の協調対応策


カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行は、本日、国際金融システムに対する流動性支援提供能力を拡充するための協調対応策を公表した。本日公表する協調対応策は、金融市場における緊張を和らげることによって、こうした緊張が家計や企業に対する信用供給に及ぼす影響を軽減し、ひいては経済活動を支えることを目的としている。

上記中央銀行は、既存の時限的な米ドル・スワップ取極に適用される金利を50ベーシス・ポイント引き下げ、新しい金利を米ドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ・レートに50ベーシス・ポイント上乗せしたものとすることに合意した。新しい金利は、2011年12月5日以降実施されるすべてのオペレーションに適用される。米ドル・スワップ取極の期限は、2013年2月1日まで延長される。なお、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行およびスイス国民銀行は、3か月物資金供給の入札オファーを、継続して実施する。


上記中央銀行は、不測の事態への対応措置として、市場の状況によって必要とされる場合に各国・地域において上記中央銀行いずれの通貨でも流動性供給を行えるよう、各中央銀行間でそれぞれ時限的なスワップ取極を締結することにも合意した。現時点では米ドル以外の外国通貨での流動性供給が必要な状況ではないが、仮にそうした必要が生じた場合に速やかに対応し得るよう、取極を整えておくことが適当と判断される。これらのスワップ取極は、2013年2月1日まで継続することとする。



背景にあるのは、欧州の金融の状況のタイトさである。欧州の金融機関は信用バブル期に外貨建ての資産保有を拡大させた。そのうちドル建て証券(モーゲージ担保証券なども含まれる)は1990年代後半では400億ユーロに満たなかったが、信用バブルが崩壊する前の2008年第2四半期には2033億ユーロにまで拡大している。以下は欧州MFI(金融機関)のドル建て証券(株式除く・欧州域外カウンターパート)の保有残高の推移(出所:ECB)。

MFIS HOLDINGS SECS.


その後金融危機によりデレバレッジが進展していく段階でこれらのエクスポージャを削減する動きとなっている。欧州の金融機関については、米国にリテールを持つわけではないので、ライアビリティ側のドル資金の調達は短期金融市場が中心的な役割を果たしてきた。しかし、金融危機以降、カウンターパーティリスクが高まる中で、欧州の金融機関が市場からドル資金を調達することが困難となり、ドル需給がタイトな状況が続いてきた。このことからFedやECBなど各国中銀は協調してドルスワップラインの締結を行い、ドルの供給をECB経由で行なっていくこととなった。金融危機によって引き起こされた信用不安は2009年中に一旦緩和されていくこととなったが、2010年にソブリンリスクが発生し、ギリシャなど周縁国のソブリン債の価格が下落していく中で欧州の金融機関のエクスポージャーリスクが意識されることとなった。これにより、再度欧州の金融機関はドルを銀行間市場から調達することが容易ではなくなり、中銀間のドルスワップラインの再締結を行うこととなった。しかし、この時点ではまだ、中銀のドル供給オペの金利が高く、またドル資金が安価で調達出来たことから利用そのものは大きくならなかった。しかし、2011年央になってソブリンリスク懸念が深刻さを増していく中で、例えば、足元でドルベーシススワップ金利の上昇などを受けてドル調達が一層難しくなっている。以下はEURベーシススワップ1年物の金利の推移である(出所:Bloomberg)。


EUR BASIS Swap 20111130.


このことからも欧州銀のドル調達は欧州プレミアムが課されていることから厳しい状況が続いているといえる。2011年央までドル安に推移していたことから、低コストでドルを調達することが容易だったが、現状ではそれも難しくなっているのが実情である。そして、欧州金融機関のデレバレッジの進展については様々なところに波及していくことが危惧されている。例えば、中東欧向け、さらには新興国向けのエクスポージャである。他にもMBSなどの証券化商品の価格低下なども意識されている。以下はBISの国際与信統計における、欧州銀行の対東欧向け対外与信(単位:百万ドル、出所:BIS)である。


Europe.png


先日ハンガリーが利上げを行ったが、これはこうしたデレバレッジの動きの加速による資本流出に対して通貨フォリントが急落していったことへの対処といえる。また、ブラジルレアルやインドルピーも大幅に下落しており、一部にはこうした新興国向けの与信の縮小や、貸出が引き揚げられているという懸念もある。このように欧州銀行がドル建て(もしくは他通貨建て)のエクスポージャを抱えており、負債サイドの調達が難しくなれば、こうしたアセットは切り売りしなければならなくなる。そのような動きが激しくなれば信用収縮に発展することになるため、今回の中銀間の決定はいわばそうしたデレバレッジ圧力に対するバックストップ的な役割の強化が必要であるとの判断であろうと思われる。しかし、デレバレッジの圧力に関しては、2012年に欧州の金融機関は資本増強を迫られることになるため、バランスシートの削減圧力も意識され、まだまだ予断はならない状態が続くと思われる。



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ドル円史上最安値~円不足が深刻化 

3月17日の外為市場においてドル円が1995年につけた79.75円を割り込み、一時76.40円レベルまで売り込まれた。以下はドル円の5分足チャート。


usdjpy 20120317


79.75円を割ったことで、デリバティブ(オプションや仕組債など)のヘッジ売りが出されたほか、個人の外為証拠金取引に関わるストップロスのオーダーが出され、bidが薄い中一気に76円台前半まで円高が加速した。この要因についてヒアリングをしたことをまとめると、海外の銀行の円資金不足が深刻であるとの話であった。以下はヒアリングの内容。


外銀も東京支店を持っていれば、当然のことながら担保を日銀に差し出すことによって、共通担保オペなどを通じて円資金を調達することができる。震災が起きて以降日銀は大規模なオペを行い、銀行が流動性不足に陥らないように配慮してきている。そのため、邦銀の流動性は潤沢である。しかし、もともと外銀は日銀オペの手続き上の煩雑さなどからオペを通じて円資金を調達するのではなく、主にマネーマーケットを通じて資金調達を行う傾向がある。そして、マネーマーケットでは本来出し手である邦銀が震災対応のため運用に回す余裕が無いため(そもそも期末を意識しているため、この時期はあまり資金を出したがらない)、外銀は円資金が取りづらくなっている状況となっている。もちろん外銀も(共通担保オペの対象先であれば)いざとなれば日銀から資金を取ることが出来る。しかし、震災の影響で外国人が避難するなどしており、担保管理やスワップ、オペなどの担当者との連携がうまくいっていない可能性も指摘されている。また、一部外銀ではそもそも日銀からオペ資金を取るための在庫が不足していたとの観測もある。そのため本邦のマネーマーケットでもそうだが、特に海外のマーケットにおいて海外の銀行による円資金のファンディングが難しくなってきている。以下は円LIBOR3カ月物の推移。


JPLIBOR3M 20110317.


15日以降20bp程度までLIBORの円金利が押し上げられている。特に日銀の共通担保オペの対象先に該当していない海外の金融機関はマネーマーケットこそが円資金調達の生命線であり、そこから円を取るのが難しくなってきてきていることから、外国為替市場(直物市場)でドル売り円買いを行う必要がある。イメージとすればドル資金が不足したリーマンショックの円バージョンということだろう。円資金が不足していることから、当局の対応として、円資金の調達及び決済を円滑に行うために日銀が各国中銀との間で円スワップラインの取極が必要なのではないか。


ここまでがヒアリングの内容で、上記のように海外の金融機関を中心に円資金が不足しているのであれば、その状況を解消するために日銀と各国中銀との間で円スワップライン取極を締結する必要があるのだろう。またリパトリが本格化すれば円不足の深刻化も予測されるため、外国為替市場に流動性を供給する目的で協調介入を行うことも必要かもしれない。今晩にG7電話会議が行われる予定もあるが、日銀及び各国中銀の動向にも注視していく必要があるのだろう。


【追記】ロイター「〔焦点〕円急騰の本邦勢リパトリ主犯説は誤り、海外勢の円調達困難が背景」に円需給が高まった要因について詳細に書かれています

・円LIBOR S/N

LIBORSN 20110317.

・円LIBOR 1M

LIBOR1M 20110317.

・3月15日の円LIBORイールドカーブ

JPYLIBOR 20110317.


より短いタームの金利が上昇している


英訳版を書いてみました。(For English Version) "Why USDJPY Was Sold At The Historical Low Level"



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Global Market Weekly Focus~2.14-18 

先週は週末にエジプトのムバラク大統領が辞任するという報が入り、中東情勢安定化にむけた動きが見られたことから金融市場においても原油等の価格が調整し始めるなどしており、マーケットでは次第に地政学的リスクが後退する展開となってきている。今後も中東情勢からはしばらく目が離せないものの、市場的にはこれで収束する方向に進んでいるようにもみえる。そして今週のマーケットにおいては、14日から開催される日銀金融政策会合、FOMC議事録、18日からパリで開催されるG20・財務相中央銀行総裁会議、米国マクロ指標などが注目されよう。


■日銀金融政策決定会合


14日から開催される日銀金融政策決定会合において政策は現状維持となる見込みである。また、声明文(当面の金融政策運営について)においては景気踊り場脱却が視野に入った文言が示されるかどうかがポイントとなろう。踊り場脱却に向けては輸出が好調であり、鉱工業生産は11月を持ってボトムアウトしたとみられている。これについて亀崎審議委員から足元の国内景気は踊り場局面にあるものの、輸出が早晩回復してくるとみられることや、円高が一服していることから、「踊り場局面を短期間で終え、再び緩やかな回復経路に復していく可能性が高い」と言及、白川総裁も「最近のデータの動きを見ると、踊り場から脱却する蓋然性が高まってきたと判断している」としていることから、メンバー内の大勢として従来の「緩やかな回復」のパスに戻るという判断がなされるものとみられる。また、日銀に政策的なプレッシャーがかかりやすい円高・株安の局面でもなく、特に外為市場においては1ドル82円台を中心としたレンジ相場が継続していることから、即時に政策を変更する必要性には迫られていない。


現在、日銀では包括緩和として資産買入基金で各種資産を買い入れているが、2月10日現在1兆6457億円程度の買取を行っており、前回の会合からの買い入れは3000億円弱の増加である。以下のグラフは資産買入基金における資産買取の推移(出所:BOJ)


BOJ買入基金 20110214.

*上記のグラフは日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日)のデータを参考に作成しており、100億円未満の買入額については公表していないため、必ずしも正確な数字を反映したものとは限らない。このデータは12月及び1月の実績に2月の毎営業日のデータを加算している。


前回の会合以降やや買い入れペースは落ちてきているものの、2011年末に5兆円に達するように買い入れを行っているとするならばハイペースな状態が続いている。このため買入基金の増額論は根強いが、白川総裁は「経済・物価の道筋が日銀の見通しから大きく外れれば」買入基金の増額を示唆している。現状の金融市場及び経済については先述の通り日銀が描いている「踊り場局面を短期間で終えて」緩やかな回復へのパスに戻るというシナリオで動いており、市場でも増額を行うという観測は後退しているが、「米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性」が顕在化した場合、もしくは市場環境の変化に伴い日本経済の下振れ要因が意識されたときに増額論が浮上していくものとみられる。また、金利の上昇に関しては米国など海外の金利上昇の影響を受けているが、日銀としては時間軸効果によるトランスミッションメカニズムから日本の金利は低めに抑えられているという見方を変化するものではなく、従来通り市場に厚めの資金供給を行いながら足元金利への配慮をみせていくものと思われる。


■FOMC議事録


2月17日にはFOMC議事録が公表される。そして今回はFed経済見通しが示される。前回11月の見通しは以下のようであった(出所:Fed)。


Fed Projections 20110214.


11月時点での2011年米成長率見通しは中心レンジで3.0-3.6%となっているが、各連銀高官発言などでは、ミネアポリス連銀コチャラコタ総裁は3-4%、リッチモンド連銀ラッカー総裁とボストン連銀ローゼングレン総裁は3.5-4%、フィラデルフィア連銀プロッサー総裁は3-3.5%と予測していることから、成長率見通しは上方修正される公算が高いものと思われる。米国経済はその7割を占める個人消費の好調さが継続していくことから、2010年よりも2011年は成長速度が加速していくものとみられている。失業率に関して前回の見通しでは中心レンジで2011年は8.9-9.1%となる見込みであるが、これについてはそれほど大きな修正はないものとみられる。1月の失業率は9.0%となり、2009年4月以来の低い水準となっているが、今後景気拡大に伴い、過去25年で最低水準にある労働参加率が増大していくことが見込まれることから失業率は上昇するものとみられ、大きな上方修正は行われないのではないかと思われる。物価見通しに関して前回はPCEコアデフレータの中心レンジを0.9-1.6%としているが、資源高などにより投入価格の上昇が最終製品にまで価格の転嫁が行われるとみる参加者がいた場合には若干上方修正される可能性があるが、大勢のメンバーは経済に大きなスラックがある以上最終製品にまでの価格転嫁は容易ではないとみていることから、コアベースの物価見通しについてはそれほど大きな変更はみられないものとみられる。


一方でFOMCにおける金融政策に関する決定であるが、1月のFOMC会合ではFF金利を0-0.25%及び6000億ドルの証券購入という政策について現状維持を全会一致で決めている。今回から新メンバー入りしたタカ派としてみられているフィラデルフィア連銀プロッサー総裁及びダラス連銀フィッシャー総裁も賛成に票を投じたが、おそらく会合内ではQE2に対して賛成票を入れるものの異議を唱えていた、もしくは反対する見解を示していた可能性があり、どのような意見表明を行ったかに注目が集まろう。今後の経済情勢及び物価動向がアップサイドに振れた場合(その時にはQE2のレビューを行い、途中で打ち切ることを提案する可能性もある)や、仮にQE3を実施する場合には反対票を投じる可能性が高いため、この2名のスタンスについては常に確認しておく必要があろう。一方でインフレターゲット(IT)もしくはプライスレベルターゲット(PT)政策を行うべきと主張しているシカゴ連銀エバンス総裁などのスタンスも確認すべきだろう。今後6月にQE2が終了し、仮にQE3が必要となった場合、資産買取以外にどのような政策アプローチがとられるのかにも関心が高まっている。個人的にはQE3が行われる可能性は、現在の経済見通しどおりに進んでいけばメンバーの賛成を得るのが難しいため、あまり高くないものと見ているが、仮に米国経済に下振れリスクが生じればバランスシートを拡大させた形での資産買取の継続並びにIT、PT政策が導入される可能性も否定出来ない。インラインであれば7月以降QE2.5、すなわち償還再投資の継続がしばらくの間続くとみられ、MBSならびに長期債の償還資金を長期債に再投資することでFedのバランスシートを一定に保つ政策が取られるのではないかと思われる。


■G20財務相・中央銀行総裁会議


今回のG20財務相・中央銀行総裁会議では、世界的に高まるインフレ圧力に関する議題が出されるものと思われる。特に食料価格が高騰しており、何らかの対応に迫られている。以下のチャートは小麦先物の推移(出所:CME)。


ZWH1 20110214


小麦など食料価格及び原油価格についてはオーストラリアの洪水や中国の旱魃、あるいは中東などの地政学的リスクの影響を受けており、必ずしも先進国を中心とした世界的な金融緩和政策の結果ではなく、外的ショックによるものであると思われるが、今後価格が上昇していけばインフレ懸念を高めることから、新興国からは先進国、特に米国のQE2に対する不満を表明していくものと思われる。コモディティの投機規制に関する枠組みについても意見が出されるのだろうが、結局は現在のマーケットに対して注視を行っているということで合意されるものとみられる。また、「通貨のあり方や対外不均衡是正のためのガイドラインなどについて議論」が行われるものとみられるが、グローバルインバランスを引き起こしている中国の出方(RMB改革の進展を含む)に関心が集まるものとみられる。


■米国マクロ指標


今週は米国で注目されるマクロ指標の発表も相次ぐ。以下は各指標の市場予想(Bloomberg Surveyより)

2/15 2月NY連銀製造業景気指数 15.0
2/15 1月輸入物価 +0.8%(MoM)
2/15 1月小売売上 0.5%(MoM)
うち自動車・部品・ガソリン除く +0.4%(MoM)
2/15 1月企業在庫 +0.7%
2/15 2月NAHB住宅市場指数 16
2/16 1月PPI +0.8%(MoM)
うちコアPPI +0.2%(MoM)
2/16 1月住宅着工件数 538K
2/16 1月住宅着工許可件数 565K
2/16 1月鉱工業生産指数 +0.5%(MoM)
2/16 1月設備稼働率 76.4%
2/17 1月CPI +0.3%(MoM)
うちコアCPI +0.1%(MoM)
2/17 新規失業保険申請件数 400K
2/17 1月コンファレンスボード景気先行指数 +0.3%
2/17 2月フィラデルフィア連銀製造業景気指数 21.0


特にCPIとPPIについて注目しており、原材料や燃料高などで川上の価格が上昇しており、川中の一部製品にも価格上昇圧力がみられるが、これがどの程度川下の最終製品に転嫁出来ているのか、あるいは転嫁出来ていないのかを見極める必要があるだろう。以下はPPI-CPIスプレッド(YoYベース、出所:米労働省)。


US PPI-CPI Spread 20110214.


現状、PPIが上昇しており、CPIがあまり上昇していないことからこのスプレッドは拡大しているが、1月もこのような傾向が示されればコストプッシュ及び需要の低下の色彩を強めていくものと思われる。このスプレッドがさらに拡大すれば、アウトプットギャップが大きく残る経済において企業のマージン確保も次第に厳しさが増していくことも今後の懸念材料として意識されていくものと思われる。


その他では15日に中国の経済指標が発表される。特に1月のCPIは上振れたとの観測があり、先日の利上げにつながったとの指摘もある。春節のシーズンで物価が押し上げられやすいが、食料等については引き続き高止まりする懸念があるため、その内容にも関心が集まることになり、さらなる追加利上げに対する思惑が浮上していくかも注目されよう。


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