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1月雇用統計:順調な雇用拡大  

2月1日に米労働省BLSは1月の雇用統計を発表した。


非農業部門雇用者数 +15.7万人
失業率(U-3) 7.9%
民間部門雇用者数 +16.6万人
週間平均労働時間 34.4h
平均時間あたり賃金 23.78ドル
U-6失業率 14.4%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20130202


(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Job recovery 20130202



(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20130202




(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20130202



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20130202



(6)労働参加率(単位:%)の推移


Participation Rate 20130202



(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20130202


■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数は、15.7万人増加となり、市場予想にはやや届かなかったものの、着実な雇用増が確認できている。民間雇用者数は16.6万人増加となっている。11月は二次速報16.1万人から24.7万人に、12月は速報15.5万人から19.6万人にそれぞれ上方修正されている。上方修正の要因としては、運輸・倉庫業で大幅な上方修正がみられている。事業者調査は下記にもあるように、年次ベンチマーク処理と季節調整の改訂という処理が行われており、2012年の非農業部門雇用者数は全般的に上方修正されている。この影響から11月、12月は雇用者が大幅に上方修正されている。以下は2012年の修正前と修正後の非農業部門雇用者数増減の推移である(米労働省BLSのデータより作成)


PreRevised Nonfarm Payroll 20130202


・製造業は3.6万人の増加となった。内訳は、鉱業・掘削業で4千人増加、建設で2.8万人増加、製造工業で3千人増加となっている。製造業のうち、耐久財が3千人増加(うち自動車及び部品は2.5千人増加)、非耐久財が1千人増加となった。建設はハリケーン・サンディの復興需要などを反映して雇用増が続いている。また住宅市況の改善も反映しているものと考えられる。製造工業は大きな増減はみられていない。


・非製造業は13.0万人の増加となった。内訳は、卸売業が1.48万人の増加、小売業が3.26万人の増加、運輸・倉庫業が1.42万人減少、情報が9千人増加、金融取引が6千人増加、専門・ビジネスサービス業が2.5万人増加(うち人材派遣が8.1千人の減少)、教育・ヘルスケア業が2.5万人増加、観光・接客業が2.3万人の増加となっている。但し、クリスマス商戦後の小売業は季節調整前の数字では大きく減少しており(所謂反動減の構図となっている)、実際は3.2万人増加ほど雇用が拡大したというものではないことには留意が必要である。以下は季節調整前の小売業の雇用増減の推移である(出所:米労働省BSL)。


Retail Employment 20130202



・政府部門は9千人の減少となった。内訳は、連邦政府が5千人減少、州政府が2千人増加、地方政府が6千人減少となっている。地方政府については一時期雇用削減圧力が緩和されていたが、足元では雇用削減圧力が掛かってきている。また、Fiscal Cliffは回避された(=ドラスティックな財政赤字削減圧力となる)ものの、2013年は連邦政府を中心に財政赤字削減圧力が掛かることから今後も雇用を拡大していけるセクターとはなり辛い。そのため、民間主体の雇用の回復となっていくものと思われる。


・民間部門の週間平均労働時間は34.4時間となり、前月から変わらず。時間あたり平均賃金は23.78ドルとなり、前月から0.04ドルの微増となった。これにより、週間あたり平均賃金は前月から1.37ドル増加の818.03ドルとなった。賃金については小幅な伸びに留まっていることから、インフレ圧力とはなりづらく、また労働市場がタイトという状況からは程遠いことが示唆されている。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は7.9(7.9227)%となり、前月から0.1ポイント上昇した。


Household survey 20130202


なお、1月の雇用統計では以下のような人口推計の更新が行われている。


Establishment survey data have been revised as a result of the annual benchmarking process and the updating of seasonal adjustment factors. Also, household survey data for January 2013 reflect updated population estimates.

事業者調査のデータは年次ベンチマーク処理と季節調整要因の改訂の結果、修正された。同時に2013年1月の家計調査のデータは人口推計の更新を反映している。



このため、各指標の前月比較が行われておらず、従って労働参加率や就業者比率など単純比較することは出来ない。従って、前月比較を行う場合には、参考ながら"December 2012-January 2013 changes in selected labor force measures, with adjustments for population control effects"(人口調整の影響を調整した選択的労働力指標における2012年12月から2013年1月の変化)のうち、Dec.-Jan. change after removing the population control effect(人口調整の影響を取り除いた後の12-1月の変化)を見ていく必要がある。以下の表はヘッドラインの増減、増減のうち人口調整の影響、人口調整の影響を取り除いた増減である。


Population control effect 20130202


それによると、労働人口は前月から7千人増加、就業者は11万人減少、失業者は11.7万人増加、非労働力人口は16.7万人増加となった。従って、失業率の上昇は単純に就業者が減少し失業者が増加したから、という可能性が濃厚であり、ネガティブな失業率増加と言ってもよいものと思われる。また、就業者数はあくまでも家計調査(家計調査には農業や自営業も含まれる)のものであり、事業者調査である非農業部門雇用者数増減とは異なる統計であることにも留意する必要がある。長期的には両者は高い相関にあるが、月単位では振れることもある。長期失業者(27週間以上失業状態にある人)は470.8万人となっており、失業者全体の38.1%となっている。


■雇用統計の評価と今後のポイント


1月の雇用統計をまとめると、ポジティブファクター及びネガティブファクターは、以下の通りである。


ポジティブファクター

・民間雇用が拡大している


ネガティブファクター


・ネガティブな形での失業率上昇
・公的部門の雇用削減圧力が続いている



このようなところとなろう。着実な雇用回復は続いているものの、失業率を低下させるだけの勢いには欠けるものとなっている。しかし、今後も継続して20万人程度の雇用拡大が見込めれば失業率は低下していくものとみられ、雇用環境の改善につながっていくものと思われる。但し、公的部門についてはFiscal Cliffこそ回避したものの引き続き財政赤字削減圧力が加わることから雇用増加は見込みにくい。従って2013年も引き続き民間雇用がどの程度回復していくかが焦点となってこよう。雇用を含めた米国経済の先行きのダウンサイド要因は米財政問題であり、アップサイド要因は住宅市場と思われる。米国財政問題については、Fiscal Cliffにしても債務上限引き上げ問題にしても、結局のところ問題の先送りであり、いずれ議会交渉の行方に注目が集まるものと思われる。交渉の行方次第では再び消費者や企業の信頼感の低下に繋がっていく可能性もある。住宅市場については、2013年は住宅市場が本格的に回復していけるかが焦点となり、回復軌道に乗っていることが鮮明となれば景気回復のエンジンとなっていく可能性もある。2012年第3四半期以降、住宅投資はGDPをプラスに牽引する形となっており、今後の景気回復のメインドライバーとなっていけるかが焦点となろう。これまで失業率が高かった建設等で改善していけば本格的な雇用回復というシナリオもあり得る。そのような状況で、1月のFOMCでは現状維持となったが、オープンエンドの資産買入については、少なくとも年内は現状の買入ペースをキープしていくものとみられるものの、例えば住宅市場の回復などの要因で、雇用回復が加速していくのであれば、買入ペースを減額していくという論議につながりやすくなっていくものと思われる。
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カテゴリ: 市場視点

タグ: マクロ  米国  雇用統計 
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12月雇用統計~雇用は着実に増加 

1月4日に米労働省BLSは12月の雇用統計を公表した。


非農業部門雇用者数 +15.5万人
失業率(U-3) 7.8%
民間部門雇用者数 +14.7万人
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.73ドル
U-6失業率 14.4%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20130104


(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Employment Recovery 20130104


(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20130105



(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20130104


(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20130104


(6)労働参加率(単位:%)の推移


Participation Rate 20130105


(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20130104



■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・12月の非農業部門雇用者数は、15.5万人の増加となり、市場予想の16万人からはやや下回る内容となった。10月確報は13.8万人増加から13.7万人増加に下方修正、11月二次速報は14.6万人から16.1万人に上方修正された。11月上方修正の要因は小売業で速報値5.26万人増加から6.28万人増加となったことなどが要因である。


・製造業は、5.9万人の増加となり、11月から一転して雇用増となった。内訳は、鉱業・掘削業が4千人増加、建設が3万人増加、製造工業が2.5万人増加となった。製造工業のうち、耐久財は1.1万人増加、非耐久財は1.4万人の増加となった。耐久財のうち、自動車・部品は4.8千人の増加となった。建設業で大幅に雇用が増加した要因としては、ハリケーン・サンディからの復旧・復興需要が高まったためと考えられる。製造工業については、世界経済が回復基調に向かいつつある状況や、堅調な北米の自動車需要を反映したものと思われる。


・非製造業は10.9万人の増加となった。内訳は、卸売で0.1千人減少、小売で1.13万人減少、運輸・倉庫業で0.6千人減少、情報で9千人減少、金融取引業で9千人増加、専門職及びビジネスサービス業で1.9万人増加(うち人材派遣は0.6千人減少)、教育・ヘルスケアで6.5万人増加、観光・接客業で3.1万人増加したことによる。教育・ヘルスケア業では外来医療サービスで1.17万人増加となっているのをはじめ、社会扶助(Social assistance)で1.05万人増加となっており、このセクターが雇用を確実に押し上げていることが示唆されている。また観光・接客業では、飲食サービスが3.8万人増加となっており、安定的に雇用の受け皿となっている。なお、小売業は季節調整済みで1.13万人減少であるが、季節調整前は8.8万人増加となっている。11月に例年以上に積極的な採用を行ったことから、その反動から採用を抑制したものと思われる。また、10-12月に小売業の雇用が大きく伸びるのはホリデーショッピングシーズンの臨時採用が行われたためであり、今後2013年1-2月に反動減が想定される。以下は季節調整前の10-2月の小売業の雇用増減の推移である(出所:米労働省BLS)。


Retail Employment 20130104


・政府部門は1.3万人の減少となった。内訳は、連邦政府で3千人減少、州政府で4千人増加、地方政府で1.4万人の減少となっている。財政年度が変わることや、連邦政府ではFiscal Cliffを睨んで採用を抑制したことなどが背景にあるものとみられる。地方政府については、雇用削減圧力が弱まったとはいえ、未だに厳しい財政状況に直面しており、雇用増に転じるまではまだ道が険しいことが示唆されている。しかし、Fiscal Cliffを回避したことから、懸念されていた政府部門で大幅な人員削減圧力が加わる可能性は低くなったといえる。


・民間部門の週間平均労働時間は34.5時間となり、前月から0.1時間拡大した。時間あたりの賃金は23.37ドルとなり、前月から0.7ドルの増加となった。このことから、週間あたり平均賃金は前月から4.79ドル増加の818.69ドルとなった。また、民間部門の労働投入量は前年同期比2.0%の伸びとなった。週間平均労働時間が拡大したことから、労働投入量が押し上げられ、労働需給がややタイト化したことが示唆されており、また賃金の伸びも加速したことから、労働者の購買力の拡大につながっていくものと思われる。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


・失業率は7.8(7.848962)%となり、前月と変わらずとなった。


Household survey 20130104


・失業率を算出する際の分母となる労働人口は前月から19.2万人増加(労働参加率は前月と変わらずの63.6%)、一方で失業者は16.4万人増加となっている。就業者は2.8万人増加(就業者比率は58.6%と前月から0.1ポイント低下)、非労働力人口は1.6万人減少となっている。このことから、景気回復にともなって労働市場に再参入する人が増加したことが示唆されている。失業要因のうち、失職及び雇用期間完了が2.1万人減少、離職が5.7万人増加、リエントリが26.2万人増加、新規エントリが3.5万人減少であることからも、12月に労働市場に再参入した人が多くなったことを裏付けている。労働参加率は横ばいながらも、減少には歯止めが掛かった状況である。また、経済的事由によりパートタイマーとなった人は22.0万人減少し、U-6失業率は14.4%となった。27週以上失業状態となっている長期失業者は前月から1.8万人減少の476.6万人となった。失業者全体に占める長期失業者の割合は、39.1%となり40%台を割り込んだ。


・なお、12月の雇用統計では、家計調査において、季節調整要因のアップデートが行われたため、リバイスが行われている。リバイスの対象は2012年である。以下はリバイス前とリバイス後の失業率の推移である(出所:米労働省BLS)。


Pre Revised Unemployment rate


■雇用統計の評価と今後のポイント


12月の雇用統計をまとめると、ポジティブファクターは、以下の通りである。


・製造業雇用が増加に転じたこと
・週間平均労働時間が上昇したこと、それにより労働投入量及び平均賃金が増加したこと
・労働市場に再参入する労働者が増加したこと



ネガティブファクターは特には見当たらない。このことから、ヘッドライン以上に内容は良好だったのではないかと思われる。しかし、雇用の伸びは着実であってもペースが一段と加速するというところには至っておらず、景気回復が依然として緩慢な状況であったともいえる。しかし、Fiscal Cliffが回避され企業や家計の信頼感が回復し、世界経済が着実な回復基調に転じていく中で、米国の労働市場も今後は改善ペースをやや加速していく可能性もある。先日12月のFOMC議事要旨が公表され、Fed内部でも労働市場の状況は予測よりも改善しているという見方が示されていた。


In discussing labor market developments, participants generally viewed the recent data as having been somewhat better than expected, with moderate gains in payroll employment and a decline in the unemployment rate.

労働市場の進展の議論において、参加者は総じて、緩やかな就業者数の増加や失業率の低下が伴った直近のデータは予測されていたよりもやや良好であると見ていた。



12月の雇用統計でも、失業率こそ低下はしていないが、雇用の伸びは着実であったことから、上記のような見方を補強するものとなるものとみられる。FOMC議事要旨では、少数のメンバー(投票権を有する参加者)から、


In considering the outlook for the labor market and the broader economy, a few members expressed the view that ongoing asset purchases would likely be warranted until about the end of 2013

労働市場や広範囲な経済の見通しを考えるにあたり、少数のメンバーは継続している資産購入はおよそ2013年末まで正当化される可能性が高いという見方を示した。



とあり、現在850億ドルのペースで買いを進めている資産購入は現時点での雇用改善ペースが今後1年継続的に進むか、もしくは改善ペースが継続的に加速するのであれば、資産購入の終了時期を巡る論議がFed内外で今後高まっていく可能性が強いものと考えられる。例えば、FOMC参加者による2013年終盤の失業率予測の中心レンジは7.4-7.7%であるが、仮に短期間、例えば今後数カ月以内にこの水準を下回る場合、資産買入の終了時期についての思惑を強める可能性がある。今後、資産買入の終了時期及び条件を巡り、金利市場を中心に雇用統計などの感応度は一層高まっていく可能性も考えられる。


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カテゴリ: 市場視点

タグ: マクロ  米国  雇用統計  Fed  FiscalCliff 
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日銀短観~製造業の景況感悪化 

12月14日に日銀は12月の全国企業短期経済観測調査を公表した。大企業製造業業況判断DIは-12となり、9月調査から9ポイントの低下となり2期連続悪化となった。大企業非製造業業況判断DIは4となり、9月調査から4ポイント低下したものの、相対的にサービス業の堅調さが維持されている。


大企業製造業業況判断DIと同非製造業業況判断DIの推移(2013年3月は先行きDI、出所:日銀)


日銀短観 20121214


大企業製造業業況判断の先行きDIは-10となり、円安への期待などを背景に12月から2ポイントの改善を見込んでいるものの、少なくとも2013年の第1四半期までは景気の低迷を示唆している格好となっている。同非製造業業況判断先行きDIは3となり、1ポイントの低下を見込んでいるが、依然としてプラス圏内であり、製造業と比較すると相対的に底堅さも意識される。大企業製造業の業種別では、自動車の業況判断が9月から28ポイント低下して-9となっている。これは、エコカー減税の打ち切りの反動により国内需要が低迷していることや、やや過剰在庫感も意識され、さらに中国の日本製品不買運動などの影響、エマージングや欧州需要の低迷などを反映しているものと思われる。自動車の先行きは-16となっており、12月からさらに7ポイントの悪化を見込んでいることから、先行きについてもさらに厳しさが増していくといった状況となっている。またエマージング需要を取り込む業務用機械も9月の6から17ポイント低下の-11、造船・重機等も9月の-14から-25にそれぞれ悪化している。中堅企業の業況判断現状DIは-12となり、前回から6ポイント低下、先行きも-20となっており、さらに中小企業の業況判断現状DIは-18となっており、先行きは-26まで低下していることから、規模が小さくなるほど事業環境が悪化しやすくなっている。非製造業の業種別では、対事業所サービスや宿泊・飲食サービスで9月と比較して景況感が低下している。一方で不動産業は9月から5ポイント改善している。また、通信業は相変わらず好況であり、スマートフォンなどの需要に支えられている。


・需給・在庫・価格判断


国内での製商品・サービス需給判断DIでは、大企業製造業で-25となっており、前回から7ポイント低下した。景気後退に入りつつある中、エコカー減税などの反動により個人消費も息切れしてきている状況で、国内の需要も落ち込んできている。しかし、先行きは1ポイント改善を見込んでおり、現状がボトム圏にあることを示唆している。海外での製商品需給判断DIは、9月から4ポイント低下の-17となっている。エマージング諸国の景気減速や、欧州の景気後退の影響などから、需要の落ち込みが顕著となっている。しかし、先行きは2ポイント改善すると見込まれており、新興国経済の立ち直りに期待を寄せているものと思われる。海外需要については、仮に米国でFiscal Cliffが発動され同国経済がリセッションに陥ってしまうことになれば、ここからさらに悪化してしまうというリスクもある。このため、先行きについても現時点では楽観的ではなく、慎重な見方を崩していないものと思われる。


国内での製商品・サービス需給判断DIと海外製商品需給判断DIの推移(出所:日銀)


国内海外需給判断 20121214


製商品在庫水準DIの推移(出所:日銀)


在庫判断 20121214


仕入価格DIと販売価格DIの推移(出所:日銀)


仕入販売価格 20121214


製商品在庫水準DIは大企業製造業で21となっており、前回から3ポイント上昇した(=在庫過大感が増した)。鉱工業在庫指数をみても現状は過剰在庫であるとみられ、今後生産調整や在庫調整が必要であることが示唆されており、それを短観でも裏付けるものとなった。今後在庫が適正水準に戻るのは、1-2四半期の時間を要するものと思われる。販売価格DIは大企業製造業で前回から2ポイント低下の-18となっている。需要低下により販売価格にも下方バイアスが掛かってきている。一方で仕入価格DIは-1と前回から3ポイント低下しており、コストが上昇していないという状況はまだ好ましいのだろうと思われる。一方で先行きは大企業の仕入価格で4となっており、電気料金引き上げや円安による原材料費上昇を見越した形となっているものとみられる。


・売上高・経常利益・想定為替レート・設備投資計画・雇用


2012年度の売上高計画は製造業で前年度比1.2%増となっており、前回調査から2ポイント下方修正となった。欧州経済が低迷し、エマージング諸国の景気減速の影響を受け、さらには中国の日本製品不買運動の影響によりトップラインから下方修正を余儀なくされている。非製造業は前年度比1.0%増となっており、前回から0.6ポイントの下方修正となっている。2012年度の経常利益計画においては、大企業製造業で前年度比3.5%減となっており、前回調査から6.4ポイント下方修正していることから、2012年度は一転減益となる公算であり、企業の収益環境が一気に悪化していることを示唆している。一方で非製造業は前年度比1.3%減となっており、前回から1.0ポイントの上方修正となっている。このようなことから、全規模合計で前回調査から1.9ポイント低下の前年度比1.1%減益となっている。


想定為替レートは、2012年度通期で78.90円、上期で79.09円、下期で78.73円となっている。回答期間が11月13日から12月13日となっているが、この期間は経常収支が悪化し、自民党安倍総裁の発言等から円安に振れていたものの、この円安が持続的ではないとの見方があったのだろうか、企業サイドからは慎重な見方が示されていた。しかし、80円を超えた水準が継続すれば輸出企業の潜在的な増益要因となりうる。しかし、貿易赤字が定着化しており、更なる円安に振れることになれば、電力料金や燃料コストにも跳ね返ってくることから、コスト増が大きく意識されやすくなる。


設備投資額(含む土地投資額)は、大企業製造業で前回調査から1.1ポイント下方修正の前年度比11.1%増となった。震災復興需要などで設備復旧の動きがあり、また生産設備を増強させる動きとなっているが、足元の世界経済の停滞などの影響から設備投資を先送りさせる動きも出ている。一方で大企業非製造業の設備投資額は前年度比4.6%増となっており、相対的に堅調さが目立っている。このことから大企業全産業の設備投資額は前年度比6.8%増となっており、前回から0.4ポイント上方修正されている。生産・営業用設備判断DIは大企業製造業で14となっており、前回から3ポイント上昇(設備過剰感が増した)した。既に設備稼働率は2012年3月をピークに低下しており、余剰設備への懸念が出てきており、さらに先行きの需要見通しにも不確実性が大きいことから、生産設備増強の先送り懸念を示唆しているものとなっている。


生産・営業用設備判断DIの推移(出所:日銀)


生産設備判断 20121214


雇用人員判断DIは大企業で4となり、前回調査から2ポイント上昇(=人員過剰感が増大)となった。足元で在庫調整に伴う生産調整のフェーズに入っており、余剰人員が発生していることが示唆されている。今後は大企業を中心に雇用環境も厳しさを増していくものと思われる。一方で中堅企業は前回から2ポイント低下(=人員不足感が増大)の-1となっている。2011年後半以降の傾向として、大企業よりも中堅・中小企業の雇用人員不足感は大きくなっていることから、所謂ベビーブーマー層の大量退職により確保するのが難しい技能職を中心に恒常的に人員不足となっているものと思われる。


大企業全産業の雇用人員判断DIの推移(出所:日銀)


雇用人員判断 20121214


規模別の雇用人員判断DIの推移(出所:日銀)


規模別雇用判断
緑色:大企業 紺色:中堅企業 水色:中小企業

・企業金融・資金繰り


資金繰り判断DI(楽である-苦しい)は大企業で前回調査から1ポイント上昇の16となり、大企業の資金繰りについては安定していることが示唆されている。中堅企業は10となり、前回から1ポイント低下、中小企業は-5となり、前回から1ポイント低下となっている。今後は2013年3月に中小企業金融円滑化法が終了することにより、中小企業の資金繰り悪化が懸念されるところである。支援の方針は変わらないものの、ハードランディングとなると企業倒産が多発する可能性もあり、政策的バックアップが要求されるものとみられる。金融機関の貸出態度判断DIは大企業で前回調査から1ポイント低下の16、中堅企業は前回調査と変わらずの15、中小企業は前回調査から1ポイント低下の3となっている。借入金利水準判断(上昇-低下)DIは、大企業で前回調査から1ポイント低下の-6、中堅企業で前回調査から1ポイント低下の-8、中小企業で前回調査と変わらずの-7となっている。日銀の金融緩和や、足元でベンチマーク金利が低下してきていることから、借入金利についても低下基調が続いている。CP発行環境判断DIは大企業で2となっており、前回と変わらず、安定している。


今回の短観は、日本経済とりわけ製造業のマインドが大きく悪化したことが裏付けられたものとなっている。前回調査では完全に織り込めていなかった中国リスクについても反映されており、輸出企業を中心に逆風が強まっていることが示唆されている。但し、3月に向けてはやや明るさも持っていることから、当面年末から1月にかけて景況感のボトムアウトを探る時期であろうと思われる。しかし、米国Fiscal Cliffの行方は大きな不確実性要因であり、仮に発動となれば国内輸出企業の景況感をさらに悪化させるリスクもある。また、2013年も引き続き欧州経済はリセッションが続き、新興国経済の立ち上がりが遅れることもリスク要因として意識される。一方、堅調な個人消費に支えられてきた非製造業についてもモメンタムの低下が見られており、今後の動向には注意が必要である。設備投資額は2桁増を維持したものの、設備判断DIは悪化しており、設備投資の先送りもリスク要因として意識される。このような状況において、12月の日銀金融政策決定会合では景気を下支えする目的として追加緩和が行われる公算が強まっているといえる。

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11月雇用統計~季節的要因で雇用増える 

12月7日に米労働省BLSは11月の雇用統計を公表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +14.6万人
失業率(U-3) 7.7%
民間部門雇用者数 +14.7万人
週間平均労働時間 34.4h
平均時間あたり賃金 23.63ドル
U-6失業率 14.4%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20121208



(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Job recovery 20121208



(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20121208



(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20121208



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20121208



(6)労働参加率(単位:%)の推移


Partcipation Rate 20121208



(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20121208


■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


非農業部門雇用者数は14.6万人増加となり、市場予想を上回る形となった。ハリケーン・サンディの影響から市場予想は控えめであったものの、米労働省では以下の様な見解を発表し、サンディについて統計を集計する際の影響は限定的だったとの見方を示している。


Hurricane Sandy made landfall on the Northeast coast on October 29th, causing severe damage in some states.Nevertheless, our survey response rates in the affected states were within normal ranges. Our analysis suggests that Hurricane Sandy did not substantively impact the national employment and unemployment estimates for November.

ハリケーンサンディは10月29日に東北海岸に上陸し、いくつかの州で重大な被害を引き起こした。しかしながら、我々の調査では影響を受けた州での回答率は正常の範囲であった。我々の分析は、ハリケーンサンディが11月の全米雇用や失業率の推定に実質的に影響を与えてはいない。



なお、10月は速報値17.1万人増加から13.8万人増加に下方修正され、9月についても二次速報値の14.8万人増加から13.2万人増加に下方修正された。下方修正については、政府部門のリバイスが主要因となっている。


・製造業は2.2万人の減少となった。内訳は、鉱業・掘削は5千人増加、建設が2.0万人減少、製造工業(Manufactureing)は7千人減少となった。建設業は総じて雇用減少となっていることから、ハリケーンサンディの影響を受けた可能性もある(今後復旧の動きとなれば増加する可能性もある)。製造工業のうち、耐久財は1.1万人増加であったのに対し、非耐久財が1.8万人の減少となっている。耐久財では、自動車および部品で9.7千人の増加となっており、引き続き自動車関連の業況は強含んでいると思われる。一方で非耐久財では食品製造で1.23万人の減少となっており、一部企業で大幅な雇用削減の動きが発生したものと思われる。製造業の業況は11月に再度悪化しており、ISM製造業景気指数は49.5%となっていることから、製造業の雇用については楽観できる状況ではない。


・サービス業は16.9万人の増加となった。内訳は、卸売業で1.31万人増加、小売業で5.26万人増加、運輸・倉庫業で3.5千人増加、情報通信業で1.2万人増加、金融取引業で1千人増加、専門職・ビジネスサービス業で4.3万人増加(うち人材派遣は1.8万人増加)、教育・ヘルスケアで1.8万人増加、接客・飲食関連で2.3万人増加、その他サービスで3千人増加となっている。特に、ホリデーショッピングシーズンにあたるこの時期の小売業の雇用は増加しやすく、11月の民間雇用を押し上げた形となっている。以下のグラフは2003年以降の10月から翌年2月までの小売業の雇用の増減である(季節調整前、単位:千人、出所:米労働省BLS)。


Retail Employment


今年の11月の小売業の雇用増加幅は2007年以来の大きさであり、企業が今年のホリデーショッピングシーズンへの期待を強めていることが示唆されている。今後12月に掛けて、ネットショッピングなどによる配送も増加が見込まれることから、運輸業でも雇用増加となり、一時的に民間雇用を押し上げる方向に働くものとみられる。


・政府部門は1千人減少し、内訳は、連邦政府で5千人減少、州政府で6千人増加、地方政府で2.0千人減少となっている。これまでどおり地方政府は削減が続いているものの、下げ止まり感が出てきている。今後Fiscal Cliffの動向には注意が必要なセクターであるといえる。以下は地方政府の雇用者数の推移である。


Local gevernment 20121208


・非農業部門の週間あたり平均労働時間は34.4時間と前月から変わらず、週間あたり平均賃金は23.63ドルとなり前月から4セントの増加となっており、週間あたり平均賃金は812.87ドルとなった。このことから、民間部門の労働投入量は前年比1.76%の伸びとなった。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は7.7(7.746)%となり、前月から0.2ポイントの低下となった。


Household Survey 20121208


失業率を求める際の分子となる失業者(Unemployed)は前月から22.9万人減少、分母となる労働人口は前月から35.0万人減少となっている。また、労働参加率は前月から0.2ポイント低下して63.6%となった。非労働力人口(Not in labor force)は54.2万人増加していることから、(勿論、一部にはリタイヤによる労働市場からの退出という可能性があるが)職探しを諦めて労働市場から退出した人が嵩んだことによる、ネガティブな失業率低下の可能性が意識される。就業者は22.9万人減少し、就業者比率(Employment-population ratio)は前月から0.1ポイント低下し、58.7%となった。就業者が大きく減ったのは恐らくパートタイマーの減少が要因であり、11月は50.3万人の減少となっている。失業要因では、失職もしくは一時的な雇用期間の完了が16.2万人減少、離職が8.8万人減少、リエントラントが5千人減少、ニューエントラントが2.6万人増加となっている。失業期間については、27週以上の長期失業者は21.6万人減少し、478.6万人となった。2カ月ぶりに500万人台を割り込んだ。


■雇用統計の評価と今後のポイント


今回の雇用統計のポイントをまとめると、以下のようになる。


ポジティブファクター
・民間雇用の増加幅が市場コンセンサスを大きく上回った
・長期失業者が大幅に減少し、500万人台を割り込んだ


ネガティブファクター
・製造業の雇用が減少した
・労働市場からの退出などにより労働人口が減少する形で失業率が低下した


このようにまとめられる。事業者調査では心強い内容となったが、家計調査はややネガティブファクターが多く、全般的にまちまちの統計内容となったものと思われる。今後はFiscal Cliffの行方が最大関心事となっていくものと思われる。Fiscal Cliff回避に向けた議会の動きがあまり進展しておらず、企業コンフィデンスを抑制してきている。そのような不確実性が高い状況の中で、今年の後半以降採用も抑制されてきている。Fiscal Cliffが回避されれば、こうした不確実性が取り払われることから、これまで抑制気味に推移していた採用も拡大に向かうものと思われる。一方で交渉がまとまらない場合にはリセッション入りする可能性が高いことから、雇用削減圧力が一気に掛かっていくものと思われる。そのため、23日の議会交渉最終日までにどのような形で回避していくのかに注目が集まる。


12月11日からFOMCが開催されるが、主な議論は、12月末でオペレーション・ツイストが完了することから、長期国債を追加購入するかどうかである。これについて、ボストン連銀ローゼングレン総裁は講演で以下のように述べている(Eric S. Rosengren (2012) "Monetary Policy and the Mortgage Market", Dec, 1.)。

So in my view, a strong case can be made for the Federal Reserve continuing to purchase the current $85 billion in longer-term securities a month - even after our so-called “Operation Twist” maturity-extension program (a portion of those purchases) is completed at the end of 2012. This is a topic we will be discussing at the next FOMC meeting.

私の見方では、Fedにとって強力なケースは、オペレーション・ツイストと呼ばれる残存期間延長プログラムが2012年末に完了しても、月当たり現状の850億ドルの買入を続けることである。これは次回のFOMCで議論となるトピックである。




このようなことから、今回のFOMCで、恐らくはこれまでの毎月850億ドルの長期債券(オープンエンド方式のMBS買入とオペレーション・ツイストによる国債買い入れ)の買入をキープする形で、400-450億ドルの長期債の購入をアナウンスするものとみられる。但し、月当たりどの程度の長期国債を購入すべきであるかという部分についてはまだコンセンサスが出来ているという状況ではないようで、850億ドルから増額する可能性もある。一方で、コミュニケーションポリシーの変更、すなわちこれまでのような低金利を正当化する特定の期間を明示することから、低金利を正当化する経済指標などの閾値を明示化することにガイダンスを修正することについてはまだ議論が煮詰まっているわけではないので、恐らくは見送られる公算であり、3月のFOMCあたりに議論の結果が出されるものと思われる。


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カテゴリ: 市場視点

タグ: マクロ  米国  雇用統計  Fed  FiscalCliff 
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10月雇用統計~着実な雇用増を確認  

11月2日に米労働省BLSは10月の雇用統計を発表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +17.1万人
民間部門雇用者数 +18.4万人
失業率(U-3) 7.9%
週間平均労働時間 34.4h
平均時間あたり賃金 23.58ドル
U-6失業率 14.6%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20121102



(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Employment Recovery 20121102




(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20121102


(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20121102



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20121102


(6)労働参加率(単位:%)の推移


CLF 20121102




(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20121102



■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数増減は、17.1万人増加となり、市場予想の12.5万人程度を大きく上回り、ポジティブサプライズとなった。8月は二次速報14.2万人増加から19.2万人増加に、9月は速報値11.4万人増加から14.8万人増加にそれぞれ上方修正された。8-9月の上方修正については、小売業や観光・接客業で上積みがみられたことが主な要因となっている。民間雇用者数は18.4万人増加となり、9月の12.8万人増加から伸びが加速した。


・財生産部門は2.12万人増加となり、7月以来はじめて増加に転じた。内訳は、鉱業・掘削業で9千人減少、建設業で2.1万人増加、製造工業で1.3万人増加となった。製造工業のうち、耐久財は5千人増加(自動車は2.1千人減少)、非耐久財は8千人増加となった。耐久財では、木材業で2.7千人増加、非金属素材業で1.4千人増加、一次金属業で1千人増加、コンピュータ・電子部品で1.6千人増加となった半面で、金属加工業で1.2千人減少、機械業で1.1千人減少などとなった。非耐久財では食品加工業で3.7千人増加、化学で1.6千人増加、プラスチック・ゴム製品業で1.6千人増加などとなっている。建設業の増加は、居住用、非居住用の建設で伸びていることから、広範囲で建設稼働が高まっていることが示唆されている。製造工業については、世界経済が減速している中で8-9月はその影響を受けていたものの、足元で新規受注が増加に転じていることなどすれば一旦は底打ちが示唆されている。しかし、米国財政動向、欧州経済や新興国経済に不確実性が残る中で、製造工業の雇用の伸びは限定的なものとなろう。


・サービス業は16.3万人の増加となり前月から伸びが加速した。内訳は、卸売業で6.5千人増加、小売業で3.64万人増加、運輸・倉庫業で2.2千人増加、情報業で1千人増加、金融取引業で4千人増加、専門職・ビジネスサービス業で5.1万人増加、教育・ヘルスケア業で2.5万人増加、観光・接客業で2.8万人増加となっている。専門職・ビジネスサービス業のうち、人材派遣は1.36万人の増加となった。また教育・ヘルスケアのうち、ヘルスケア・社会扶助は3.25万人の増加となった。観光・接客業のうち、飲食業が2.29万人増加となった。サービス業については上記3業種が堅調だったことが雇用の伸びにつながっている。飲食業については、一部大型飲食チェーンで大規模な採用があったものとみられる。米国のサービス業は底堅い個人消費動向に支えられている側面が強く、広範囲で雇用増加となっている。11月以降は年末商戦により、小売業や運輸業(宅配など)で臨時雇用が見込まれるが、どの程度増加しているのかが注目される。


・政府部門は1.3万人減少となった。うち、連邦政府で6.0千人減少、州政府で7.0千人減少、地方政府は変わらずとなった。民間雇用の伸びは底堅いものの、政府部門の雇用はおぼつかない状態が続いている。しかし、地方政府の雇用削減圧力はピークを越したものとみられ、税収が増加していけば徐々に回復していくものとみられる。以下は地方政府の雇用の推移(出所:BLS)。


Local gevernment 20121102


・民間雇用者の時間あたり賃金は23.58ドルとなり、前月から1セント減少、週間平均労働時間は34.4時間となった。このことから民間セクターの労働投入量は前年比1.78%の伸びとなり、週間あたりの平均賃金は811.15ドルとなり、前月から35セントの減少となった。賃金の低下はネガティブファクターであり、恐らく10月の雇用増のうち人材派遣やヘルスケア・社会扶助など賃金水準が低い職業の雇用が他に比べ増加したことが影響した可能性もある。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は、7.9%(7.876%)となり、前月から0.1ポイント上昇した。


Household survey


8月の失業率は8.1%であったが、9月に0.3ポイントも改善して7.8%に低下した後、10月はやや上昇する形となった。失業率は、失業者(Unemployed)/労働人口(Civilian labor force)で求められるが、このうち分母となる労働人口は57.8万人増加した一方で、失業者は17.0万人増加した。失業者が増加したことにより失業者が押し上げられていることになる。労働参加率(Participation rate)は63.8%と前月から0.2ポイント上昇、就業者(Employed)は41万人増加したことから、就業者比率(Employment-population ratio)は58.8%に0.1ポイント上昇した。また、非労働力人口(Not in labor force)が36.9万人減少していた。失業の理由では、解雇もしくは一時的な雇用の終了が4.0万人増加、離職が5.3万人増加、リエントラントが6千人減少、エントラントが5.4万人増加となっている。非労働力人口が大きく減っており、また非労働力人口のうち現在職を求めている人(Persons who currently want a job))は14万人減少していることから、恐らくは労働市場に新規参入もしくは再参入した人が労働人口としてカウントされるのと共に失業者としてカウントされたことにより、結果として失業率が上昇したという構図となっている。労働人口が増加し、労働参加率が上昇する形で失業率が上昇するのであれば、「良い失業率上昇」である可能性が大きい。労働参加率については8月の63.5%と過去25年で最低水準だったところからはやや持ち直しており、当面の傾向を掴むにはまだ時間を必要とはするものの、低下傾向に歯止めが一応掛かっていることは景気回復の裾野が拡大していることを示唆している。


・パートタイマーは26.9万人減少となり、うち経済的な理由からパートタイマーとなっている人は30.4万人の減少となっている。9月にこうしたパートタイマーが急増したことの反動減であろうとみられる。U-6失業率は前月から0.1ポイント低下の14.6%となった。長期失業者は15.8万人増加して500.2万人に増加した。500万人台となるのは8月以来となる。低下基調であることには変わりがないものの、依然として長期失業者の就職が難しい情勢が続いている。


■雇用統計の評価と今後のポイント


今回の雇用統計のポイントをまとめると、以下のようになる。


・非農業部門雇用者数が着実に増加している(ポジティブ)
・製造工業で雇用が回復している(ポジティブ)
・労働参加率が上昇し、就業者比率も上昇している(ポジティブ)
・賃金が低下し、週間労働時間も下方修正されている(ネガティブ)



このような評価であり、全般にポジティブな内容であったものとみられ、6日に投票が行われる米大統領選は現職のオバマ氏に優位に働くものとみられる。今後の雇用統計におけるポイントは、短期的にはハリケーン・サンディの影響であり、中期的にはFiscal Cliffであろうとみられる。


ハリケーン・サンディは11月以降の雇用動向を占う上で大きな撹乱要因である。ハリケーンが雇用にインパクトを与えたのは2005年9月のハリケーン・カトリーナの例があるが、被害を受けたニューオーリンズがあるルイジアナ州の失業率は2005年8月の4.9%から11.2%に急上昇した。また、全米単位での新規失業保険申請件数も9月1週は32.6万件であったのに対して9月2週は42.2万件に跳ね上がっており、一時的な失業者(無給休暇であっても失業者としてカウントされる)が増加した。以下は2005年から2006年の新規失業保険申請件数及び2005年から2007年のルイジアナ州の失業率の推移である(出所:BSL)。


IJC 2005

Louisiana Umemployment rate


但し、ハリケーン・カトリーナの場合、被害がルイジアナ州とミシシッピ州に限定され、隣接するテキサス州、アーカンソー州、アラバマ州などでは同時期に失業率は上昇しておらず、全米単位の失業率は0.1ポイントの上昇に収まっている(この時期の経済環境は現在とは異なり、好景気の真っ只中にある)。今回のハリケーン・サンディの場合、東海岸のニューイングランド地域など人口が集中する12州で大きな被害を受け、それらの州では数日間生産活動がストップしたものとみられ、一部エコノミストからは、被害の影響により第4四半期のGDPは1%程度の伸びに留まるのではないかとの見方を行なっている(Reuters「第4四半期米GDP、サンディの影響で1%に減速の可能性も」参照)。従って、被害の度合いが明らかになるに連れ経済へのダメージについても推計されるものとみられる。こうしたことから、まずは10月最終週の新規失業保険申請件数がどの程度大きく上昇しているかがポイントであり、予想以上に上昇しているのであれば、失業率も押し上げられる可能性がある。しかし、自然災害によるものであるため、その後の復興需要も見込まれることから、こうした失業率の上昇はごくごく短期間で収束するものとみられる。


中期的なポイントはFiscal Cliffである。仮にFiscal Cliffが発動された場合、議会予算局(CBO)の見通しではブッシュ減税や代替ミニマム課税回避措置(AMTパッチ)の失効や給与税減税の失効などで歳入関連では3990億ドルの増税となり、財政管理法による一律歳出削減などの影響から1030億ドルの歳出カットが見込まれ、総額で6070億ドルの財政赤字削減が行われると見積もられている(CBO: "CBO Analyzes Effects of Fiscal Restraint Scheduled Under Current Law"より)。以下はCBOが8月に見積もったFiscal Cliffが発動された場合の財政赤字の推移である(出所:CBO・単位:10億ドル)。


CBO Fiscal Cliff


6070億ドルという規模は米国の名目GDPのおよそ4%程度であることから、経済に与える影響は極めて大きなものとなる。CBOによる見通しでは、仮にFiscal Cliffが発動された場合(ベースラインシナリオ)、2013年第1四半期の実質GDPは前期比年率で3.9%減少、第2四半期は同1.9%減少となると予測している。すなわち2期連続でマイナス成長となることから、リセッションに陥る公算である。ベースラインシナリオによる、この間の失業率見通しについては、2013年第1四半期には現在より0.2ポイント上昇、第2四半期には0.5ポイント上昇、第3四半期には0.7ポイント上昇、第4四半期には0.9ポイント上昇と見込んでいる(なお、CBOの8月の見通しでは2012年第4四半期の失業率は8.2%と見込んでいる)。以下はCBOのベースラインシナリオにおける実質GDP伸び率と失業率の推移である(出所:CBO)。


CBO real GDP

CBO Unemployment rate


このことから、Fiscal Cliffが発動された場合、現時点の失業率からすれば、最大で8.8%まで失業率が上昇する可能性がある。従って、大統領選挙・議会選挙後のレームダック議会(新財政年度まで、すなわち今年中は選挙前の議員構成となる。直近の民意を反映していないため重要な議案について見送られるのが通例である)でFiscal Cliff回避の交渉がどのように進展していくか、そして新財政年度が始まる1月までにどの程度の赤字削減額となるのか注目される。仮に交渉決裂となれば上記シナリオとなる公算があるため、大統領選挙からレームダック議会の行方にはかなり注意を払う必要がある。さらに新議会が始まる2013年初は債務上限引き上げの再交渉に迫られる。交渉の行方次第では、昨年のように市場に動揺を与え、企業や消費者のセンチメントを悪化させる可能性もある。これらの動向の趨勢にとって、上下両院の議会勢力と大統領が誰になっているかが極めて重要なファクターとなってくる。レームダック議会でFiscal Cliffをどう回避し、新議会で連邦債務上限引き上げ交渉をどのようにまとめる方向となるのか、それを占う上でも6日の選挙の動向に十分注意していかなければならないだろう。


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