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9月雇用統計~家計調査はポジティブ・サプライズ 

10月5日に米労働省BLSは9月の雇用統計を発表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +11.4万人
民間部門雇用者数 +10.4万人
失業率(U-3) 7.8%
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.58ドル
U-6失業率 14.7%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20121006


(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Employment Recovery 20121006



(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20121006



(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20121006



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Unemployed Dulation 20121006



(6)労働参加率(単位:%)の推移


Partcipation Rate 20121006



(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20121006


■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


非農業部門雇用者数は11.4万人増加となり、市場予想の11.5万人程度にほぼ一致した。7月は二次速報の14.1万人増加から18.1万人増加に上方修正され、8月についても9.6万人増加から14.2万人に増加と上方修正されている。後述するが、上方修正の要因は地方政府をはじめとした政府部門の押し上げによるものである。民間雇用者数は10.4万人増加となっており、8月の水準とそれ程変わりがない。


・製造業雇用は1.0万人減少し、2カ月連続で雇用減となった。内訳は、鉱業・掘削業で1千人増加、建設で5千人増加、製造工業で1.6万人減少となった。製造工業では、耐久財が1.3万人減少、非耐久財が3千人減少となっている。耐久財では、一次金属で3.4千人減少、コンピュータ・電子製品で5.5千人減少、輸送用機器で3.0千人の減少となった。HPなど一部業績不振のメーカーが削減を打ち出しており、その影響もあったものとみられる。輸送用機器では自動車メーカーが需要減に対応して雇用を減らしているものとみられる。製造業については、足元において世界経済、とりわけ欧州経済がリセッション不可避の情勢かつ新興国、特に中国の減速が意識される中、積極的に採用を増やしていくという情勢ではない。また、航空機などのセクターでは受注状況が芳しくなくキャンセルも出始めており、航空不況に入りつつある可能性もある。一方でISM製造業景気指数など、一部製造業の業況について、底打ちを示唆しているものもある。従って、弱含みではあるものの、はっきりとした方向性を見出すにはまだしばらく時間を要するものと考えられる。


・非製造業は11.4万人増加し、着実な雇用増のトレンドとなっている。内訳は、卸売業で1.6千人減少、小売業で9.4千人増加、運輸・倉庫業で17.1千人増加、情報で6千人減少、金融取引で1.3万人増加、専門職・ビジネスサービスで1.3万人増加、教育・福祉サービスで4.9万人増加、観光・接客業で1.1万人増加、その他サービスで9千人増加となった。専門職・ビジネスサービス業のうち、人材派遣は6.7千人の増加となった。また教育・福祉サービスのうちヘルスケア・ソーシャルアシスタンツは4.45万人の増加となっている。福祉職などの一部セクターが大きく牽引しているものの、その他の業種でも広範囲に雇用増となっていることから、サービス業の業況は概ね堅調であるとみてもよいだろう。


・政府部門は1.0万人増加した。内訳は、連邦政府で4.0千人増加、州政府で1.3万人増加、地方政府で7.0千人減少となっている。また、政府部門に関しては大きな上方修正もみられる。7月は二次速報で2.1万人減少であったが、1.8万人(うち地方政府は2.9万人増加)に上方修正、8月は速報段階で7千人減少であったが、4.5万人(うち地方政府は3.5万人増加)に上方修正されている。このことから7・8月の非農業部門雇用者数の増加幅は大きく上方修正されている。つまり、7-8月で地方政府の雇用が6.4万人増加したことによるところが大きい。9月の地方政府はその反動で7.0千人減少となっている。基調として地方政府の雇用削減の動きには歯止めがかかりつつある。これは直近で税収が回復しているという側面もあるものと思われる。しかし、Fiscal Cliffが発動された場合、連邦政府や地方政府で雇用削減圧力が大きく掛かることから、今後の大統領選挙・議会選挙やその後の議会動向には注意を要するところだろう。以下は地方政府部門の雇用者数推移である(出所:BLS)。


Local government 20121006


・民間雇用者の時間あたり賃金は23.58ドル、週間あたり平均労働時間は34.5時間となった。週間あたり労働時間は7・8月分が下方修正され、9月に上昇した。これにより、民間の労働投入率は前年比1.99%、週間あたり平均賃金(雇用者所得)は813.51ドル(8月は808.74ドル)となった。賃金はやや上昇していることから、消費者センチメントの改善に繋がるものと期待される一方で、ガソリン価格が再度上昇傾向となっており、実質賃金を圧迫する可能性もある。従って、賃金よりもガソリン価格の上昇が急であれば購買力を低下させ消費者センチメントを悪化させる一方で、ガソリン価格が賃金よりもモデレートに上昇もしくは低下するのであれば、消費者センチメントの改善につながる。この2つのトレンドは今後も注意深くみておく必要があろう。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


・失業率は、7.8%(7.7955%)となり、2009年1月以来の低水準となった。


Household survey 20121006



・8月の失業率は8.1%であったため、0.3ポイントという大幅な改善であった。失業率は、失業者(Unemployed)/労働人口(Civilian noninstitutional population)で求められるが、このうち分母となる労働人口は41.8万人増加、分子となる失業者は45.6万人減少となったことから、失業率が大幅に低下した。労働参加率は0.1ポイント改善して63.6%、就業者は87.3万人増加したことから就業者比率は0.4ポイント改善の58.7%となった。非労働力人口は21.1万人の減少となった。つまり、労働市場に再参入する人が多かったのと同時に、就業者が大幅に増加したことにより失業者が減少、その結果として失業率が大きく低下したことから、ポジティブな失業率低下ということがいえる。これまで失業者が減少した要因が、失業者が職探しを諦め非労働力人口となり失業者が低下したことによるケースが多かったが、9月はこれまでのケースとは異なり、雇用創出により失業率が低下したということになる。


・就業者数が87.3万人増加した一方で非農業部門雇用者数がそれ程大きく上昇しない、ということについては、長期的な統計データからすれば就業者数増減と非農業部門雇用者数増減の両者の相関はそこそこ高い(2000年2月以降では0.539)ものの、単月のデータでは振れが激しくなる。もちろん、この要因は非農業部門雇用者数増減と失業率が異なる統計(前者は事業者調査、後者は家計調査)であるため、統計上の相違が出るという説明となる。ここから先は諸賢の統計的分析の解析を待ちたいが、個人的には、これだけの差異が生じたことについては、以下のような仮説を考えている。


家計調査の就業者については、7-8月で31.4万人減少していたが、実際にはこの間非農業部門雇用者数は32.4万人増加しており、従って家計調査側でその「埋め合わせ」が発生している可能性がある(事業者調査は毎月リバイスされるが、家計調査は毎月リバイスされないこともそのように考える理由である)。ここで「埋め合わせ」というのは、第一に、事業者調査では雇用者としてカウントされたままであるものの、家計調査ベースで7-8月の統計調査期間中は何らかの状態により仕事をしていなかったが、その後短期間で職場に戻った、という人(無給休暇状態の人も含まれる)について9月分で就業者増加としてカウントした、ということである。この埋め合わせによる9月の就業者の嵩上げは31万人程度だろうと思われる。そして第二に、この間事業者調査ベースでは雇用は増加していたわけであり、家計調査の7-8月統計調査期間中はまだ就業状態ではなかった人(例えば採用は決まっているものの、待機していた人など)が33万人程度だったものと思われる。従って、9月の就業者数増加幅の87.3万人のうち、64万人程度がこのような要因による嵩上げだろうと考えられる。仮にこの考え方に則れば、残りの23万人程度は、純粋にこの月に採用が決まり、就業を開始した人ということになる。まとめると、


(1)雇用者としてカウントされたままであるものの、家計調査ベースで7-8月の統計調査期間中は何らかの状態により仕事をしていなかったが、その後短期間で職場に戻ったという人が31万人程度、(2)家計調査上7-8月はまだ就業状態ではなかった人(例えば採用は決まっているものの、待機していた人と考えられる)が33万人程度、(3)9月に採用が決まり就業した人が23万人程度


ということになると考えられる。(追記)家計調査によると、パートタイマーが60万人増加となっている。一般的にパートタイマーの場合、よりフレキシブルな就業となるため、就業者の短期的な変動が起こりやすくなる。従って、(1)、(2)の多くはそのようなパートタイマーとしての就業であったと考えられる。


以下は家計調査増減における就業者増減と事業者調査における非農業部門雇用者数の増減の散布図と、7-9月のそれぞれの増減の推移である。


Employment_NFP 20121006
(縦軸は非農業部門雇用者数増減、横軸は就業者増減)

Employment 20121006


*重ねて申し上げるが上記は個人的な仮説であって、諸賢の統計的解析結果を待ちたいところである。


いずれにせよ、労働人口が増加し、就業者が大幅に増加して失業率が低下したということは事実であり、雇用市場が改善していることを示唆しているものとなっている。今後はこのようなトレンドが形成され、好循環によって失業率が低下していくかがポイントとなろう。


・失業理由については、「失職もしくは一時的な就業期間の満了(Job losers and persons who completed temporary jobs)」が46.8万人減少、「離職(Job leavers)」が1.5万人増加、「リエントラント(再参入)」が1.2万人減少、「新規参入(New entrants)」は3.0万人減少した。26週以上失業状態にある長期失業者は18.9万人減少し、484.4万人となった。500万人を割り込んだのは2009年7月以来である。失業者全体に占める長期失業者は40.1%となった。


■雇用統計の評価とFedの政策


今回の雇用統計のポイントをまとめると、以下のようになる。


・非農業部門雇用者数の伸びは市場予想に一致
・雇用市場の改善により失業率が改善した(ポジティブ)
・賃金がやや上昇した(ポジティブ)



このようなことにより、家計調査においてポジティブ・サプライズであった。労働市場が劇的に改善している、という認識ではないものの、着実に改善しているという印象を抱かせるものとなっている。大統領選挙が11月に行われるが、オバマ陣営にとってサポートとなる数字だろう。しかし、2カ月連続で製造業部門で雇用が減少していることは、世界経済の減速を反映している可能性があり、今後の欧州や中国経済の動向などを踏まえれば、今後も引き続きダウンサイドリスクも大きく楽観できる状況でもない。一方で国内需要は底堅く、労働市場も改善していることが伺える。


Fedは前回のFOMCでオープンエンド型資産買入の実施を決めた。同時にFedが前回のFOMCで示した失業率の予測では、2012年第4四半期に8.0-8.2%、2013年第4四半期に7.6-7.9%であった。すなわち、現在の失業率は予測ベースで2013年後半の水準である。従って、フォワードガイダンスで示された低金利を継続する時期が「少なくとも2015年半ば」という時期の妥当性について内外から疑問を持たれる可能性もあり、今後も緩和政策を維持していく方針であれば、透明性の観点からより高い説明責任が求められるものとなろう。このような観点を踏まえると、コミュニケーションポリシーの変更、すなわちこれまでのように、フォワードガイダンスで低金利の期間を示す、というよりも低金利が妥当であるという経済状況について具体的なしきい値を示す方向に変えていくのではないかと思われる。前回のFOMC議事要旨でも、以下の様な議論が行われている。


Many participants thought that more-effective forward guidance could be provided by specifying numerical thresholds for labor market and inflation indicators that would be consistent with maintaining the federal funds rate at exceptionally low levels. However, reaching agreement on specific thresholds could be challenging given the diversity of participants' views, and some were reluctant to specify explicit numerical thresholds out of concern that such thresholds would necessarily be too simple to fully capture the complexities of the economy and the policy process or could be incorrectly interpreted as triggers prompting an automatic policy response. In addition, numerical thresholds could be confused with the Committee's longer-term objectives, and so undermine the Committee's credibility. At the conclusion of the discussion, most participants agreed that the use of numerical thresholds could be useful to provide more clarity about the conditionality of the forward guidance but thought that further work would be needed to address the related communications challenges.


多くの参加者は、FF金利を異例な低水準に維持するのに矛盾がない、労働市場やインフレ指標の特定のしきい値を提供することによりより効果的なフォワードガイダンスとなると考えていた。しかし、特定のしきい値について合意に達することは、参加者の見方の多様性により困難であり、参加者の数人は、特定のしきい数値を明示化することは、そのようなしきい値が経済の複雑さを必ずしも十分に捉えることが出来ず、もしくは政策プロセスが自動的な政策対応のトリガーを促すものとして誤って解釈されてしまう可能性があることを懸念した。さらに、数値的なしきい値は、委員会の長期的な目標と混同され、委員会の信認を低下させる可能性がある。議論の結論としては、ほとんどの参加者は数値的なしきい値を使うことはフォワードガイダンスのコンディショナリティについてより明確になるのに役立つが、コミュニケーション上の困難さに関連するものを解決していく必要があるだろう、ということに同意した。



従って、今後はこうしたしきい値を設ける方式に変更していく可能性があり、コミュニケーション政策の強化についての論議が活発になっていくこととなる。恐らく、シカゴ連銀エバンス総裁が2011年10月に以下のようなこと("The Fed’s Dual Mandate Responsibilities: Maintaining Credibility during a Time of Immense Economic Challenges"より)を述べているが、それに近いような形式のガイダンスになるのではないかと思われる。


I think we should consider committing to keep short-term rates at zero until either the unemployment rate goes below 7 percent or the outlook for inflation over the medium term goes above 3 percent.

私は、Fedは失業率が7%を下回るか、中期的なインフレ率見通しが3%を超えるまでは、短期金利をゼロに据え置くとのコミットを考慮すべきだと考える。



但し、中期的なインフレ率が3%を超えるまで、という表現については、マンデートに対して明らかに高い水準のインフレ率を容認すると誤解されてしまう可能性があり、合意は難しいものと思われる。しかし、ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁も失業率が5.5%を上回っているかインフレ率が2.25%を下回っている限りはFedは金利をゼロに据え置くとのコミットを提案している("Planning for Liftoff"より)ことからすれば、コミュニケーション政策の変更についての合意はほぼ出来ている。あとはしきい数値をどのように設定するかという作業を行なって適切な時期に変えていくということになるのだろう。



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カテゴリ: 市場視点

タグ: マクロ  米国  雇用統計  Fed 
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日銀短観~製造業の業況が悪化 

10月1日に日銀は全国企業短期経済観測調査(短観)の結果を公表した。大企業製造業業況判断DIは-3となり、3期ぶりに悪化した。一方で大企業非製造業業況判断DIは8となり、前回と変わらずとなった。以下は短観における大企業の業況判断DIの推移である(9月まで実績、12月は先行きDI 出所:日銀)。


日銀短観 大企業業況判断DI


先行きは、大企業製造業で-3と変わらず、大企業非製造業で5とやや低下を見込んでいる。製造業の業況は今後在庫・生産調整期が見込まれていることから、低水準に留まる見込みである。一方、非製造業はサービス中心に堅調であるが、先行きは小売などで落ち込むことを見込んでいることを踏まえると、エコカー減税や猛暑効果など夏場期の個人消費が反動減となることを見込んでいる。中堅企業製造業の業況判断DIは-6と前回から変わらず、同非製造業業況判断DIは2と前回から1ポイントの悪化なり、中小企業製造業業況判断DIは-14に悪化、同非製造業業況判断DIは-9と前回から変わらずとなった。規模別の業況は相変わらず中小規模になるほど悪化する。


業種別の業況判断DIでは、大企業製造業においては鉄鋼(前回-17→今回-28)や非鉄金属(前回11→今回0)、生産用機械(前回1→今回-11)、自動車(前回32→今回19)で足元DIが大きく落ち込んでいる。生産用機械の落ち込みは新興国向けなどで需要が低下していることを反映しているものとみられ、自動車に関してはエコカー減税による駆け込み需要が一巡することから、反動減を見込んでいる。また世界的に好調であった自動車需要が一服していることも反映しているものと考えられる。半面で市況回復により石油・石炭製品で大きく改善している。業種別の大企業非製造業業況判断DIでは、対事業所サービスで前回から8ポイント改善しているのが目立つのみで、他の業種は6月から9月にかけて大きな変動はなかった。高原状態をキープしていたものと思われる。先行きでは、宿泊・飲食サービスや対事業所サービス、対個人サービスなどで落ち込むと予測されている。


需給・在庫・価格判断DIについては、国内での商製品・サービス需給は大企業製造業で足元-18となり、前回より1ポイント悪化、先行きも-19となっている。国内需要は緩やかに低下しているという認識であろう。海外での製商品需給は大企業製造業で-13となり、前回から3ポイント悪化している。先行きは2ポイントの改善を見込んでいる。足元については、欧州経済がリセッション入り不可避であり、さらに新興国需要も大きく低下していることなどを踏まえると海外需要の方が国内需要よりも落ち込みが大きくなっているという傾向が続いている。在庫水準DIは大企業製造業で18となり、前回と変わらずとなった。在庫水準はリーマン・ショック以降の回復局面にあって、2011年12月以降高水準の状態で推移しているが、今後は直近の鉱工業生産指数が示すように在庫調整が行われる見込みである。在庫が適正水準に低下していくまではしばらく生産活動が停滞する可能性があり、その状況から回復に向かうのは少なくとも2013年1月以降となるのではないかと思われる。以下は商製品需給DIと在庫水準DIの推移である(出所:日銀)。


日銀短観 商製品需給DI 20121001

日銀短観 製商品在庫DI 20121001



価格動向では、大企業製造業の仕入価格DIは2となり、前回から2ポイント低下する半面で販売価格DIは-16となり1ポイント改善した。足元では原油価格などコモディティ価格が一服していたことから川上の価格が低下し、デフレ圧力が緩慢ではあるものの徐々に低下していくことから企業のマージン環境は緩和されている。しかし、先行きの仕入価格DIは5と3ポイント上昇しており、先行きコスト高となるのではないかということが示唆されている。国内にデフレ圧力が残っている状況で仕入価格の上昇は企業のマージン確保を難しくさせるため、今後のコモディティの市況動向には注意を要する。以下は価格動向DIの推移である(出所:日銀)。


日銀短観 価格DI 20121001



2012年度の売上高計画では、大企業製造業で3.3%増加となり、前回から1.7ポイントの下方修正となっている。同非製造業は1.6%増加となり、前回から0.5ポイントの下方修正となっている。2012年度の経常利益計画では、大企業製造業で3.2%増加となり、前回から6.2ポイントの下方修正となっている。製造業で売上高、経常利益計画が大きく下方修正されていることからすれば、欧州や中国などの海外需要が落ち込んでいることを反映している可能性がある。企業の想定為替レートは、2012年度上期79.16円、2012年度下期78.97円、通期79.06円となっており、前回から上方修正していることを踏まえると数量減による影響の方が強い。一方で2012年度の設備投資計画は大企業製造業で前回から0.1ポイント下方修正の12.3%となり、非製造業では0.3ポイント上方修正の3.3%となっている。このことから、設備投資については震災復興などの動きも加えると底堅く推移していると判断出来る。後述するが、ベースには生産・営業用設備判断DIが適正水準にまで低下してきたことなども影響していると考えられる。


生産・営業設備DIは、大企業で11となり、前回から1ポイント上昇、先行きは10となり、1ポイントの低下を見込んでいる。生産設備についてはリーマンショック以降余剰感が大きく高まり、これが設備投資を手控えさせてきているものの、足元で水準としてはまだ高いものの、余剰な生産設備が解消されてきていること、さらには後述するが資金繰りが安定していることなどから生産設備を増強する動きが出てきても不思議ではない。しかし、今後海外需要が大幅に低下し、在庫・生産調整が下振れる場合には余剰設備を増加させてしまうリスクも伴うため、今後の動向には楽観視出来ない。但し、震災復興需要は今後も継続的に見込まれることから、ある程度のバッファとして意識されよう。以下は生産・営業設備DIの推移(出所:日銀)。


日銀短観 設備判断DI 20121001


雇用人員判断DIは2となり、前回から1ポイント低下した。足元では労働需要は底堅いことが示唆されており、失業率も低下基調にある。しかし、先行きは3と1ポイント上昇となっており、企業活動が生産調整の段階に移行するにあたって余剰人員が発生する可能性もある。従って、失業率の改善にややブレーキが掛かっていくことも想定されよう。以下は大企業の雇用人員判断DIの推移(出所:日銀)。


日銀短観 雇用人員判断DI 20121001


企業の資金繰り判断DIは大企業で15となり、1ポイント低下、中堅企業は前回と変わらず11、中小企業は-4と前回から1ポイント低下した。金融機関の貸出態度DIは大企業で17となり、前回から1ポイント上昇、中堅企業は15となり前回から変わらず、中小企業は4と前回から変わらずとなっている。CPの発行環境判断DIは大企業で2となり、前回と変わらずとなっている。国内の金融環境が至って緩和的な状況となっており、企業金融の環境も安定していることが示唆されている。しかし、民生用電機大手の一角などは経営不振により資金繰りが安定していない可能性もある。以下は大企業の資金繰り判断DIの推移(出所:日銀)。


日銀短観 資金繰りDI  20121001



今回の短観は、製造業で業況が停滞し、非製造業の業況は底堅く、内需主導の経済状況を反映したものとなっている。しかし、製造業については、短観のアンケート回収日が10日前後だったことを考えると中国の反日デモによる企業活動への悪影響を織り込んだものではなく、現地工場などが操業停止に追い込まれている状況、あるいは日本製品ボイコットなどの動きなどを踏まえると、実際の足元の製造業を中心とした業況は短観の数字以上に悪化している可能性がある。また、国内の製造業については在庫水準が高く、生産調整に追い込まれていることなどを踏まえると在庫循環において今後生産調整や在庫調整圧力が大きくなっていくことから、製造業の企業活動がしばらくの間低迷する可能性もある。また、欧州や中国経済の想定以上の需要下振れ懸念も織り込んでいるわけではない。このことから、大企業製造業の業況判断DIは-3となり、ヘッドライン上は底堅いという感じではあるものの、見た目以上に業況は悪化している可能性がある。非製造業は夏場に消費が底堅く推移したことなどを踏まえると製造業よりは景況感が底堅いものとなっているが、エコカー減税の打ち切りや猛暑効果の剥落により、足元の個人消費も楽観視出来るものではないことには留意が必要であろうと思われる。


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7月雇用統計~非農業部門雇用者数は2月以来の増加幅 

8月3日に米労働省BLSは7月の雇用統計を発表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +16.3万人
民間部門雇用者数 +17.2万人
失業率(U-3) 8.3%
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.52ドル
U-6失業率 15.0%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment Rate 20120803



(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Job recovery 20120803


(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20120803




(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20120803


(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20120803


(6)労働参加率(単位:%)の推移


Partcipation Rate 20120803


(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20120803


■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・7月の非農業部門雇用者数は16.3万人増加となり、ヘッドラインは市場予想の上限近いものとなり、ポジティブなものとなった。5月は二次速報の7.7万人増加から8.7万人増加に上方修正される一方で6月は速報値の8.4万人増加から6.4万人に下方修正された。主に卸売業で、速報値は8.8千人増加であったが、二次速報で3.2千人減少と下方修正されたことが響いている。7月の民間雇用者数は17.2万人増加となり、2月以来の高水準となっている。ADP民間雇用者数の伸びや7月以降の新規失業保険申請件数の改善(但し7月は季節調整の影響もあるとされる)と符合するような内容となっている。また異例な暖冬の影響から季節調整の歪みにより1-2月に雇用者数が押し上げられた反動が6月まで続いたが、その季節調整の歪みの影響はほぼ減衰したようにも思われる。


・製造業は2.4万人の増加となった。内訳をみると、鉱業・掘削業は前月から変わらず、建設は1千人減少、製造工業(Manufacturing)は2.5万人増加、製造工業うち耐久財は2.4万人増加、非耐久財は1千人増加となっている。耐久財のうち、輸送用機械が2.05万人増加となったことが製造業の雇用者数の押し上げに大きく貢献しており、自動車及び自動車部品セクターは足元の業況が好調であることから積極的に人材を採用していることが裏付けられている。但し、製造業の業況についてはISM製造業景気指数が2カ月連続で50を下回るなど逆風が吹いており、先行きには注意していく必要がある。


・非製造業は14.8万人の雇用増となった。内訳は、卸売業が9.2千人増加、小売業は6.7千人増加、運輸・倉庫業は6.9千人増加、情報は1.1万人増加、金融取引業は1千人増加、専門職・ビジネスサービス業は4.9万人増加、教育・ヘルスケア業で3.8万人増加、観光・接客業で2.7万人の増加となった。専門職・ビジネスサービス業のうち、人材派遣(Temporary help services)は1.41万人の増加となっている。また教育・ヘルスケア業において、社会福祉関係で1.91万人の雇用増加となっている。また観光・接客業のうちフードサービス・飲食で2.94万人の雇用増加となっていることから、大手のファストフードチェーンで大規模な採用が行われたものとみられる。これら3業種がサービス業の雇用を押し上げている。


・政府部門では、連邦政府が2.0千人減少、州政府は6千人減少、地方政府は1千人減少となっている。連邦政府のうち、U.S. Postal Service(米国郵政公社)は先日デフォルトに陥ったが、7月は3.2千人の雇用減(季節調整済)となっており、今後雇用の削減をさらに進めていく懸念がある。7月時点で61.3万人(原系列)の従業員数であり、仮に今後1割カットなら6万人の雇用減少となり、全体の雇用増減に与えるインパクトは大きくなる可能性もある。今後Fiscal Cliffが発動の流れとなればさらに政府部門が労働市場の足かせとなる可能性もあるため、財政を巡る議会の交渉の行方には注意しておく必要があろう。地方政府は1千人の減少となった。教員が7千人減少する一方で非教員が6.4千人増加となっている。地方政府の雇用削減モメンタムは低下してきている。以下は地方政府の雇用者推移(出所:米労働省BLS)。


Local Government 20120803



・非農業部門の時間あたり平均賃金は23.52ドル、週間平均労働時間は34.5時間となり、週次の平均賃金は前月から0.69ドル増加の811.44ドル、労働投入量は前年比2.07%の伸びとなり前月からやや伸び率が鈍化した格好となっている。賃金の伸びはゆるやかなものに留まっており、賃金インフレの兆候はみられない。以下は時間あたり平均賃金の対前年度比の伸び率の推移である(出所:米労働省BLS)。


Average hourly Earnings 20120803



■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.3%(8.253%)となり、前月から上昇した(前月は8.217%)。


Household Survey 20120803



失業率を求める際の分母となる労働人口は前月から15.0万人減少する半面で失業者は4.5万人増加したことにより失業率がやや押し上げられた。季節的なものである可能性もあるが、労働参加率が低下(63.7%)して失業者が増加したことはネガティブな印象を持つ。但し、失業者の増加は主にリエントラントである(失業の原因のうち雇用創出及び雇用期間満了は8.4万人減少、退職が5.8万人減少、リエントラント(再参入)が15.3万人増加、ニューエントラント(新規参入)が2.0万人減少)ことから、労働市場に回帰してきている流れは続いているとみることも出来る。しかし、非労働力人口は34.8万人増加しており、男性の労働参加率も低下しているため、労働市場から退出した人もそれなりに存在している。Persons who currently want a job(職を求めている非労働力人口)は3.4万人の増加となっている。また、就業者は19.5万人減少し、就業者比率(Employment-population ratio)は58.4%と前月から0.2ポイントの低下となっている。長期失業者(26週以上失業状態にある者)は18.5万人減少し518.5万人となり、失業者全体の40.7%となっている。水準自体はリセッションの時のピークからは150万人ほど低下しているものの、長期失業者の数は緩やかにしか低下してせず、依然としてリセッション前の平時の状態から比較すればかなり高い水準である。


■7月雇用統計の評価とFedの動向


7月の雇用統計について、ポジティブファクターとネガティブファクターに分けると以下の様なものとなる。


・ポジティブファクター:非農業部門雇用者数が予想以上に増加したこと、長期失業者が減少したこと
・ネガティブファクター:労働参加率が低下したこと、就業者比率が低下したこと


このように分けられるものと思われる。季節調整の歪みの影響もあるが、6月まで雇用者数の伸びの鈍化傾向が続いていたことからすれば非農業部門雇用者数が16.3万人増加したことはポジティブだと言ってもよい。今後問われるのはこの水準をキープ出来るかということである。内需には底堅いことが示唆されているものの、世界経済の動向には不確実性が強いことや、Fiscal Cliffへの懸念により今後内外需問わず企業や家計のセンチメントが低下する可能性もあることから、先行きに楽観的になるのはもう少し時間を要するところだろうと思われる。また、この雇用増の水準では、失業率を低下するほどの勢いはなく、今後も労働市場に再参入する人が増加していくことを想定すれば失業率はやや上昇していくことも想定される(このこと自体は決してネガティブではない)。また、失業率が高止まりしていることから、労働市場の状況は緩い状態が継続しており、賃金インフレの状況には程遠いものと思われる。


このような状況の中で、Fedの動向は"Wait and see"という選択肢が残されたとみることも出来る。労働市場のモメンタムが失われ、雇用増のモメンタムが著しく低下したという状況ならば緩和というカードもあるのだろうが、7月の統計を見る限り追加緩和に踏み込むだけの経済状況というにはやや無理がある。勿論次回のFOMCは9月であり、8月の雇用統計の結果が大きなキーファクターとなるため、それを待っての判断となろう。今後の政策動向を占う上で重要なのは月後半に開催されるジャクソンホールでの議長講演ということになるが、そこでは前回のエントリでも書いたが、いくつかの緩和手段について踏み込んだ発言が行われるかどうかが鍵となってこよう。



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タグ: マクロ  米国  雇用統計  Fed 
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6月雇用統計~雇用回復は足踏み 

7月6日に米労働省BLSは6月の雇用統計を発表した。


非農業部門雇用者数 +8.0万人
民間部門雇用者数 +8.4万人
失業率(U-3) 8.2%
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.50ドル
U-6失業率 14.9%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment Rate 20120706


(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Employment recovery 20120706




(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20120706



(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20120706



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer Unemployment 20120706



(6)労働参加率(単位:%)の推移


Participation Rate 20120706




(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20120706




■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数は8.0万人となり、5月から若干雇用の伸びが加速した。4月は二次速報の7.7万人増加から6.8万人増加に下方修正、5月は一次速報の6.9万人増加から7.7万人増加に上方修正された。ヘッドラインからすれば、10万人程度の増加が見込まれていたため、ネガティブなものとなった。民間雇用に関しては8.4万人の伸びにとどまり、雇用市場の回復が足踏みしていることが鮮明となった。異例な暖冬の影響から季節調整の歪みにより1-2月に雇用が押し上げられた反動として3-5月に雇用が急減速したが、こうした季節調整の歪みの影響については6月以降減衰していくものと思われる。


・製造業は1.1万人の増加となった。内訳は、鉱業・掘削業が前月から変わらず、建設業が2千人増加、製造工業は1.1万人増加、製造工業うち耐久財は1.4万人増加、非耐久財は3千人減少となっている。製造工業では、金属加工製品、機械、輸送用機械で増加している。米国内の自動車販売が堅調でもあるように、自動車関連の業況は底堅く、雇用面でも反映したものとなっている。しかし、ISM製造業景気指数が好不況の節目である50を割り込んだことにより、こうした景況感が雇用に反映してくる可能性もあるため、楽観視することは難しい。


・非製造業は7.1万人増加となった。内訳は、卸売業が8.8千人増加、小売業が5.4千人減少、運輸・倉庫が2.2千人減少、情報が8千人減少、金融取引が5千人増加、専門職・ビジネスサービスが4.7万人増加(うち人材派遣が2.52万人増加)、教育・福祉サービスが2千人増加、観光・接客業が1.3万人増加、その他のサービスは9千人増加となっている。雇用増の伸び悩みの要因となったのは主に"Health care and social assistance"(ヘルスケア・社会扶助)が1.14万人の増加に留まったことが背景にあるものと思われる。この業種に関しては景気の善し悪しに関わらず今後持続的に雇用は拡大していくものとみられるが、単月では伸び悩んだ格好となり、これがサービス業の雇用増を抑制している。一方で人材派遣は2.52万人の増加となっており、引き続き需要動向に不確実性がある中で正社員の採用は見送り、人材派遣で埋め合わせるといった傾向みられている。


・政府部門は4千人減少となった。連邦政府が7千人減少、州政府が1千人減少、地方政府が4千人増加となった。ここにきて、地方政府の雇用削減圧力はやや緩和されてきている。しかし、財政削減圧力は依然として続くものと考えられることから、極めて弱いまま推移していくものと考えられる。以下は地方政府の雇用者数推移(出所:米労働省)。


Local government 20120706



・非農業民間部門の週間平均労働時間は34.5時間となり、前月から0.1時間増加した。このことから、民間セクターの労働投入量は前年比2.08%の伸びとなり、5月から加速した。週間あたり平均賃金は23.50ドルとなり、前月から6セントの上昇となった。これにより、週間あたり平均賃金は810.75ドルとなった。賃金についても前月からやや加速しているものの、賃金インフレといえる状況からは程遠い。以下は週間あたり平均賃金の前年比伸び率の推移(出所:米労働省)。


Average hourly Earnings 20120706



■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.2(8.217)%となり、前月から若干上昇した。


Household survey 20120706


失業率を求める際の分母となる労働人口は、前月から15.6万人増加となっている一方で、分子となる失業者は2.9万人増加となった。労働参加率は前月と変わらずの63.8%となり、就業者は12.8万人の増加となっている。非労働力人口は3.4万人増加となっていることを踏まえると、前月とそれ程労働市場の状況は変わっていないということになる。労働参加率の低下に一応は歯止めがかかり、非労働力人口の一部が労働市場に戻るとすれば、それは失業者とカウントされるため、現状の緩慢な労働市場の回復ではそれを吸収するのは難しい。従って今後労働市場の状況が現状のレベルで推移すれば、失業率は低下しにくくなる。長期失業者(27週以上失業状態にある者)は4.1万人減少の537万人となっており、失業者全体の41.9%となっている。


■6月雇用統計の評価とFedの動向


6月の雇用統計は家計調査、事業者調査ともに傾向がつかみにくいものとなっている。強いて言えば以下の通りである。


ポジティブファクター:労働投入量の伸びが回復したこと
ネガティブファクター:民間部門雇用者数の伸びが鈍化したこと


労働参加率の低下傾向に歯止めが掛かっているということについては評価できるが、現状の労働市場ではそれらの「失業者」を吸収するだけの力強さには欠ける。また、現状ISM製造業景気指数が50を割り込んできているなど、米国の景況感は悪化しており、雇用市場が今後急速に回復しづらい展開となってきている。米国の景況感の悪化については、欧州情勢や新興国の景気減速の影響もあるが、このところFedなど当局者が気にかけている点としてFiscal Cliff(財政の崖)が発動された場合の米国経済のダウンサイドリスクについても意識されてきている。このFiscal Cliffを巡る情勢の不透明さが企業や家計のマインドを悪化させており、仮に(万が一ではあるが)財政協定を巡って上下両院での民主・共和党の合意が無い場合、2013年当初から増税と財政支出カットにより米国経済がリセッション入りする可能性が指摘されている。CBOの見解では以下の通りとなっている(WSJ: CBO Sees 2013 Recession Risk)。



The combination of tax increases and spending cuts, often referred to as a "fiscal cliff," would sharply reduce the federal budget deficit but would temporarily arrest the economic recovery, said the CBO, which serves as Congress's budget calculator.


議会予算局の推計では、「財政の崖」と呼ばれる、増税や歳出削減の組み合わせは、米国の財政赤字を鋭角的に減らすのだろうが、一時的に景気回復を阻止してしまうだろうと述べた。

The CBO projected the economy would contract at a 1.3% annual rate in the first six months of 2013, likely meeting the definition of a "mild recession," if certain tax increases and spending cuts are allowed to take effect next year. The economy would stabilize in the second half of 2013 and grow by 0.5% over the year.

もし、増税や歳出削減が発動された場合、CBOは経済が2013年の上半期に年率で1.3%縮小し、「マイルドなリセッション」との定義に当たるだろうと予測している。2013年の下半期には安定し、年間で0.5%となるだろう。



仮に2013年の議会年度入りまでに議会でFiscal Cliffから回避することで合意できない場合、およそ6000億ドル(GDPの4%程度)の財政支出カットが見込まれている。最終的には議会で合意に達するものとみられるが、その前段階で激しいチキンレースが繰り広げられることになれば、米国の企業及び家計のマインドはその不確実性により冷やされてしまい、企業や家計の支出や企業の採用活動にも悪影響を及ぼしかねないことになる。従って、このところのFedの見方においても、最も意識しているものは欧州情勢ということになろうが、Fiscal Cliffが米国経済に与える影響について、もしくはそれを回避するための合意に時間が掛かることについても極めて神経質な問題として捉えられてきている。従って、バーナンキ議長はじめとしてFed高官は早期にこの問題について解決するよう議会に促している。今後大統領選挙も含めてこうした政治的なイベントには非常に神経質な展開となっていくことが想定される。



今後のFedの政策については、今後不透明感は高まっていくことが考えられるものの、取り敢えず6月の非農業部門雇用者数の伸びが一層鈍化する、もしくは急ブレーキが掛かるような状況ではなかったことから、7月終盤のFOMCでは現在のオペレーション・ツイストの継続とフォワードガイダンスの現状維持を決め、新たな金融緩和については見送られるものと思われる。しかし、不確実性が大きくなり、それが景気を下押す蓋然性が高まった時にはフォワードガイダンスに示した金融引き締めに転じる時期を先送りし、市場に対し、低金利政策の長期化について期待形成を働きかけるのだろうと思われる。



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5月雇用統計~労働参加率が回復 

6月1日に米労働省BLSは5月の雇用統計を公表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +6.9万人
民間部門雇用者数 +8.2万人
失業率(U-3) 8.2%
週間平均労働時間 34.4h
平均時間あたり賃金 23.41ドル
U-6失業率 14.8%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20120602



(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Job recovery 20120602



(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20120602



(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20120602



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20120602




(6)労働参加率(単位:%)の推移


Partcipation Rate 20120602




(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Partcipation Rate 20120602




■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数は6.9万人増加となり、市場予想の平均である14.9万人増加を下回る内容となり、ヘッドラインとしてはネガティブサプライズとなった。3月は二次速報の15.4万人増加から14.3万人に下方修正、4月についても速報の11.5万人増加から7.7万人増加に下方修正された。3月以降雇用増加のモメンタムが低下していることが裏付けられている。4月の下方修正の要因については、観光・接客業が速報値1.2万人増加であったのに対して二次速報値では6千人減少となっていること、専門職・ビジネスサービス業で速報値が6.2万人増加であったのに対して二次速報値では3.7万人に下方修正されたこと、製造業についても速報値1.4万人増加に対して二次速報値では4千人増加に下方修正されたことなどによる。趨勢的には1-2月の記録的な暖冬の影響で押し上げられた反動や、それ以外の循環的な景気減速などにより、雇用市場の伸びは減速しているといえる。


・製造業は1.5万人の減少となった。内訳は、鉱山・掘削業で1千人増加、建設業で1.5万人減少、製造工業で1.2万人増加となっている。製造工業の内訳では、耐久財が1.3万人増加、非耐久財が1千人減少、耐久財のうち自動車及び部品は5.8千人の増加となっている。建設については1-2月に記録的な暖冬の影響で押し上げられた反動が出てきているものと考えられる。一方で自動車関連の人員の引き合いはそれなりに堅調である。しかし、速報値段階ではヒューレッドパッカード(HP)の2万7千人規模のレイオフの影響は織り込めておらず、今後7月に発表される5月二次速報段階もしくは6月以降の雇用統計においてこの影響が出てくる可能性がある。



・非製造業は9.7万人の増加となった。内訳は、卸売が1.59万人増加、小売業は2.3千人増加、運輸・倉庫は3.56万人増加、情報は2千人減少、金融取引は3千人増加、専門職・ビジネスサービス業は1千人減少、教育・ヘルスケアは4.6万人増加、観光・接客業は9千人減少となった。専門職・ビジネスサービス業のうち、人材派遣は9.2千人の増加にとどまった。季節要因もあるものと考えられるが、これまでサービス業を牽引していた観光・接客業の雇用のモメンタムが低下し、また専門職のうち、建物・住宅サービスの雇用が1.43万人減少している。一方で運輸・倉庫業が3.56万人増加している。小売なども着実な伸びを示していることから、内需について、少なくとも雇用面からは減速しているものの落ち込むという方向ではなく、底堅いことを示している。


・政府部門は1.3万人減少となった。内訳は、連邦政府で5.0千人減少、州政府が5.0千人減少、地方政府が3千人減少となった。地方政府については、教員が3.3千人減少した一方で教員除く職員は0.4千人増加した。地方政府については、教員の削減が大きく、教員以外ではあまり変化がないことから、緩やかに下げ止まり感が出てきているという見方を強めるものとなっている。以下は地方政府の人員の推移である(出所:米労働省)。


Local gevernment 20120602



・非農業部門の週間平均労働時間は34.4時間となり、前月から0.1時間減少した。週間平均労働時間と民間雇用者数増減を掛けあわせた民間部門の労働投入量は前年比1.78%の伸びとなり、伸び率は鈍化した。製造業の週間平均残業時間も3.2時間と前月から0.1時間減少していることから、労働機会が縮小していることが示唆されており、ネガティブである。また時間あたり平均賃金は23.41ドルとなったことから、週次あたりの平均賃金は前月から1.66ドル減少の805.30ドルとなった。賃金については殆ど伸びていないどころか、むしろ減少していることから、消費マインドへの影響も気に掛かるところだろうと思われる。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.2%(8.193%)となり、前月から0.1%上昇した。


Household survey 20120602




失業率を求める際の分母となる労働人口は前月から64.2万人増加、分子となる失業者は22.0万人増加した。このことから失業率が増加した。非労働力人口が46.1万人減少し、就業者が42.2万人増加したことからすれば、長期失業などの状態から職探しを諦めて労働市場から退出した人が景気回復などにより労働市場に再参入してきたことが失業率上昇の要因とみられる。そのことから労働参加率は63.8%に回復し、就業者比率も58.6%に回復した。今後も労働参加率は過去25年間で最低の水準で一進一退していくものと思われるが、一応の下げ止まり感はみられつつある。若年層の労働参加率の低下について懸念を示す向きもあったが、16歳以上の男性の労働参加率は4月は70.0%に低下したが、5月は70.3%に回復している。このことからも職探しの再開の可能性に向けて明るい材料となっているものと思われる。今後職探しを再開することによって、労働市場に戻る人が増加すれば、失業者が増加することになる(失業者とは定義上、"All persons who are without jobs and are actively seeking and available to work are included among the unemployed."「職に就いておらず、かつ職探しをしており職に就くことが出来る全ての人々は失業という状態に含まれる」ということである)。労働人口も押し上げられるが失業者も押し上げられるので、当面この傾向が続くことになれば、失業率は下がりにくくなる。労働市場が本格的に回復するというのは、こうした労働参加が広がっていくということであり、景気の拡大に伴い就業機会が拡大することによってこうした失業者を吸収することで失業率が低下するというプロセスを踏むことが理想的であるといえる。従って、今後もこうした形で労働人口が増加していけるかどうかがポイントとなってこよう。但し、日本ほどではないものの、ベビーブーマー世代のリタイヤなどの動きもあることから、このあたりは労働参加率上昇にとってはアゲンストとなりやすいことには留意が必要である。長期失業者(27週以上の失業状態にある人)は31万人増加した。失業者全体に占める長期失業者の割合は42.8%となった。これまで減少傾向が続いていたが、5月は急に増加した格好となった。趨勢的には減少していくものと考えられるものの、依然としてそのペースは緩慢であろう。



■5月雇用統計の評価とFedの動向


5月の雇用統計は家計調査でポジティブ、事業者調査でネガティブなものとなった。


ポジティブファクター:労働参加率が上昇したこと
ネガティブファクター:非農業部門雇用者数の伸びが一層鈍化したこと、賃金が低下したこと、労働投入量の伸びが大きく鈍化したこと


こういったようにまとめられる。労働参加率の低下に下げ止まり感が出てきたことについてはポジティブなものと言える。しかし、非農業部門雇用者数については世界経済の減速感の影響は免れないものとなっている。従って全体としてはまちまちな評価となっている。なお、暖冬の影響により1-2月に雇用が大幅に押し上げられた反動が5月まで続いているという見方も出来るため、今後雇用増減のモメンタムについては今後変化していく可能性もある。


Fedとしては、雇用市場のモメンタムが低下してきていることは懸念材料として意識しているものの、QE3については今のところやや声が大きくなっているという印象であり、メンバーの総意という印象ではない。前回のFOMC議事要旨において、


Several members indicated that additional monetary policy accommodation could be necessary if the economic recovery lost momentum or the downside risks to the forecast became great enough.

複数のメンバーはもし経済回復がモメンタムを失い、ダウンサイドリスクが十分大きくなっていくようであるならば追加の金融緩和が必要となる可能性があると指摘した。




確かにこの雇用統計では経済回復のモメンタムが低下しているということを示唆しているものの、雇用は増加基調を保っているわけであり、この雇用統計だけで追加緩和というにはまだ尚早であるとうにも思われる。ダウンサイドリスクへの蓋然性が強まった時に追加緩和という手段が取られるものと考えられる。ダウンサイドリスクとは、NYFedダドリー総裁が考えているところでは以下のようなものである(NYFed "Job Polarization in the Region"より)


Nevertheless, significant downside risks remain, especially those related to the challenges in Europe and how the potential “fiscal cliff” in the United States will be resolved after the fall elections. Even if these risks do not materialize, I anticipate only slow progress toward full employment.

しかしながら、著しいダウンサイドリスクは残っており、特に欧州における課題に関連したものや、米国における潜在的な「財政の壁」が秋の選挙後に解決されるのかということである。もしこれらのリスクが実現しないとしても、完全雇用に向けた進捗はただ遅いのみだと予想する。



すなわち、欧州の状況が米国にスピルオーバーし金融市場が不安定となり、信用スプレッドなどを通じて実体経済にも悪影響を及ぼすような場合、あるいは輸出の停滞で成長が押し下げられる場合、そして米国の潜在的な財政問題とその解決策がどのように進展していくのかということをダウンサイドリスクとして挙げている。現時点で社債やモーゲージスプレッドはやや高まってきているものの、ベンチマークとなる長期金利が急低下してきたことも背景にあるため、欧州リスクが米国にスピルオーバーした結果がすべてであるとは言い切れず、従って金融ストレスが著しく掛かっている状況でもないことから、クレジットチャネルによるダウンサイドリスクは現時点でそれ程高まっているわけではない。但し、今後の欧州金融情勢の進展によっては著しいダウンサイドリスクに繋がる可能性はそれなりに対処していかなければならないだろう。一方で、欧州経済は恐らくマイルドなリセッションではなく、本格的なリセッションに突入する可能性があり、当然米国の輸出にとってアゲンストになってくる可能性もある。この場合、輸出セクターで雇用が減少することが確認されればダウンサイドリスクの顕在化と捉えることも出来るかもしれない。また、財政問題については、大統領選挙を睨んでということにもなるが、昨年のスーパーコミッティ決裂により、2013年以降は歳出が自動的に1.2兆ドル程度カットされる。このことから、来年以降緊縮財政への可能性があることから、景気の下押し圧力になる可能性もある。この点については大統領選挙後、新しく就任する大統領や議会がどのように対処していくかが鍵となる。


そしてこのようなダウンサイドリスクが顕在化した段階で取るべき政策については以下のように語っている。



As long as the U.S. economy continues to grow sufficiently fast to cut into the nation’s unused economic resources at a meaningful pace, I think the benefits from further action are unlikely to exceed the costs. But if the economy were to slow so that we were no longer making material progress toward full employment, the downside risks to growth were to increase sharply, or if deflation risks were to climb materially, then the benefits of further accommodation would increase in my estimation and this could tilt the balance toward additional easing.

米国経済が有意義なペースで経済における活用されていない資源を削っていくために十分な速さで成長が続いていくならば、私が思うには更なる行動による恩恵はコストを超える可能性は無いだろうと思う。しかし、もし経済が、完全雇用が実質的に達成できないくらいに減速し、ダウンサイドリスクが鋭角的に増大するか、デフレーションリスクが実質的に増大するならば、追加の緩和の恩恵は、私の推定ではより増大し、追加的な緩和に向けて傾けることも出来る。

Under such circumstances, further balance sheet action might be called for. We could choose between further extension of the duration of the Federal Reserve’s existing Treasury portfolio and another large-scale asset purchase program of Treasuries or agency mortgage-backed securities.


そのような状況下では、更なるバランスシート拡張が呼び出される。我々はFedの既存の米国債ポートフォリオのデュレーションを更に伸ばすか、さらに米国債もしくはエージェンシーMBSについて大規模な資産購入プログラム(LSAP)を選ぶことが出来る。



今のところは米経済は着実な回復途上にあることから、追加緩和について恐らくベネフィットはコストを超えられないという見方をしているものの、上記のようなダウンサイドリスクが増大するような状況もしくは雇用減となるような状況においては追加緩和に向けて舵を切るものと考えられる。その際、可能性がある政策の順に、オペレーション・ツイストの延長、(7月を待って)フォワードガイダンスに示されている低金利政策の期間予測の先延ばし、MBSの買入+不胎化、LSAPによる米国債購入・バランスシート拡張政策ということになろうかと思われる。バランスシート拡張政策については、大統領選挙を目前にして共和党からの反対論が強く、また内部でもコンセンサスをまとめるのは難しいことから優先順位としては低い。一方でオペレーション・ツイストの期間延長及び保有証券の残存期間延長は、出口戦略を難しくさせるものの、バランスシート拡張政策ではないので現時点でコンセンサスが得やすいものと思われる。フォワードガイダンスに示されている低金利政策の期間予測の先延ばしについては、これは各参加者の金利予測が前提となるだけにSEPと声明文との整合性の問題が残るものの、市場の期待形成に働きかけ長めの金利に作用するという時間軸効果を狙うという政策は現段階で有効であると思われる。いずれにせよ、今月末でオペレーション・ツイストが完了することから、その後の政策運営をどのようにしていくのかということについて、6月のFOMCはかなり大きな意味合いとなっていくものと考えられる。



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