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7月雇用統計~非農業部門雇用者数は2月以来の増加幅 

8月3日に米労働省BLSは7月の雇用統計を発表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +16.3万人
民間部門雇用者数 +17.2万人
失業率(U-3) 8.3%
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.52ドル
U-6失業率 15.0%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment Rate 20120803



(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Job recovery 20120803


(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20120803




(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20120803


(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20120803


(6)労働参加率(単位:%)の推移


Partcipation Rate 20120803


(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20120803


■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・7月の非農業部門雇用者数は16.3万人増加となり、ヘッドラインは市場予想の上限近いものとなり、ポジティブなものとなった。5月は二次速報の7.7万人増加から8.7万人増加に上方修正される一方で6月は速報値の8.4万人増加から6.4万人に下方修正された。主に卸売業で、速報値は8.8千人増加であったが、二次速報で3.2千人減少と下方修正されたことが響いている。7月の民間雇用者数は17.2万人増加となり、2月以来の高水準となっている。ADP民間雇用者数の伸びや7月以降の新規失業保険申請件数の改善(但し7月は季節調整の影響もあるとされる)と符合するような内容となっている。また異例な暖冬の影響から季節調整の歪みにより1-2月に雇用者数が押し上げられた反動が6月まで続いたが、その季節調整の歪みの影響はほぼ減衰したようにも思われる。


・製造業は2.4万人の増加となった。内訳をみると、鉱業・掘削業は前月から変わらず、建設は1千人減少、製造工業(Manufacturing)は2.5万人増加、製造工業うち耐久財は2.4万人増加、非耐久財は1千人増加となっている。耐久財のうち、輸送用機械が2.05万人増加となったことが製造業の雇用者数の押し上げに大きく貢献しており、自動車及び自動車部品セクターは足元の業況が好調であることから積極的に人材を採用していることが裏付けられている。但し、製造業の業況についてはISM製造業景気指数が2カ月連続で50を下回るなど逆風が吹いており、先行きには注意していく必要がある。


・非製造業は14.8万人の雇用増となった。内訳は、卸売業が9.2千人増加、小売業は6.7千人増加、運輸・倉庫業は6.9千人増加、情報は1.1万人増加、金融取引業は1千人増加、専門職・ビジネスサービス業は4.9万人増加、教育・ヘルスケア業で3.8万人増加、観光・接客業で2.7万人の増加となった。専門職・ビジネスサービス業のうち、人材派遣(Temporary help services)は1.41万人の増加となっている。また教育・ヘルスケア業において、社会福祉関係で1.91万人の雇用増加となっている。また観光・接客業のうちフードサービス・飲食で2.94万人の雇用増加となっていることから、大手のファストフードチェーンで大規模な採用が行われたものとみられる。これら3業種がサービス業の雇用を押し上げている。


・政府部門では、連邦政府が2.0千人減少、州政府は6千人減少、地方政府は1千人減少となっている。連邦政府のうち、U.S. Postal Service(米国郵政公社)は先日デフォルトに陥ったが、7月は3.2千人の雇用減(季節調整済)となっており、今後雇用の削減をさらに進めていく懸念がある。7月時点で61.3万人(原系列)の従業員数であり、仮に今後1割カットなら6万人の雇用減少となり、全体の雇用増減に与えるインパクトは大きくなる可能性もある。今後Fiscal Cliffが発動の流れとなればさらに政府部門が労働市場の足かせとなる可能性もあるため、財政を巡る議会の交渉の行方には注意しておく必要があろう。地方政府は1千人の減少となった。教員が7千人減少する一方で非教員が6.4千人増加となっている。地方政府の雇用削減モメンタムは低下してきている。以下は地方政府の雇用者推移(出所:米労働省BLS)。


Local Government 20120803



・非農業部門の時間あたり平均賃金は23.52ドル、週間平均労働時間は34.5時間となり、週次の平均賃金は前月から0.69ドル増加の811.44ドル、労働投入量は前年比2.07%の伸びとなり前月からやや伸び率が鈍化した格好となっている。賃金の伸びはゆるやかなものに留まっており、賃金インフレの兆候はみられない。以下は時間あたり平均賃金の対前年度比の伸び率の推移である(出所:米労働省BLS)。


Average hourly Earnings 20120803



■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.3%(8.253%)となり、前月から上昇した(前月は8.217%)。


Household Survey 20120803



失業率を求める際の分母となる労働人口は前月から15.0万人減少する半面で失業者は4.5万人増加したことにより失業率がやや押し上げられた。季節的なものである可能性もあるが、労働参加率が低下(63.7%)して失業者が増加したことはネガティブな印象を持つ。但し、失業者の増加は主にリエントラントである(失業の原因のうち雇用創出及び雇用期間満了は8.4万人減少、退職が5.8万人減少、リエントラント(再参入)が15.3万人増加、ニューエントラント(新規参入)が2.0万人減少)ことから、労働市場に回帰してきている流れは続いているとみることも出来る。しかし、非労働力人口は34.8万人増加しており、男性の労働参加率も低下しているため、労働市場から退出した人もそれなりに存在している。Persons who currently want a job(職を求めている非労働力人口)は3.4万人の増加となっている。また、就業者は19.5万人減少し、就業者比率(Employment-population ratio)は58.4%と前月から0.2ポイントの低下となっている。長期失業者(26週以上失業状態にある者)は18.5万人減少し518.5万人となり、失業者全体の40.7%となっている。水準自体はリセッションの時のピークからは150万人ほど低下しているものの、長期失業者の数は緩やかにしか低下してせず、依然としてリセッション前の平時の状態から比較すればかなり高い水準である。


■7月雇用統計の評価とFedの動向


7月の雇用統計について、ポジティブファクターとネガティブファクターに分けると以下の様なものとなる。


・ポジティブファクター:非農業部門雇用者数が予想以上に増加したこと、長期失業者が減少したこと
・ネガティブファクター:労働参加率が低下したこと、就業者比率が低下したこと


このように分けられるものと思われる。季節調整の歪みの影響もあるが、6月まで雇用者数の伸びの鈍化傾向が続いていたことからすれば非農業部門雇用者数が16.3万人増加したことはポジティブだと言ってもよい。今後問われるのはこの水準をキープ出来るかということである。内需には底堅いことが示唆されているものの、世界経済の動向には不確実性が強いことや、Fiscal Cliffへの懸念により今後内外需問わず企業や家計のセンチメントが低下する可能性もあることから、先行きに楽観的になるのはもう少し時間を要するところだろうと思われる。また、この雇用増の水準では、失業率を低下するほどの勢いはなく、今後も労働市場に再参入する人が増加していくことを想定すれば失業率はやや上昇していくことも想定される(このこと自体は決してネガティブではない)。また、失業率が高止まりしていることから、労働市場の状況は緩い状態が継続しており、賃金インフレの状況には程遠いものと思われる。


このような状況の中で、Fedの動向は"Wait and see"という選択肢が残されたとみることも出来る。労働市場のモメンタムが失われ、雇用増のモメンタムが著しく低下したという状況ならば緩和というカードもあるのだろうが、7月の統計を見る限り追加緩和に踏み込むだけの経済状況というにはやや無理がある。勿論次回のFOMCは9月であり、8月の雇用統計の結果が大きなキーファクターとなるため、それを待っての判断となろう。今後の政策動向を占う上で重要なのは月後半に開催されるジャクソンホールでの議長講演ということになるが、そこでは前回のエントリでも書いたが、いくつかの緩和手段について踏み込んだ発言が行われるかどうかが鍵となってこよう。



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タグ: マクロ  米国  雇用統計  Fed 
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6月雇用統計~雇用回復は足踏み 

7月6日に米労働省BLSは6月の雇用統計を発表した。


非農業部門雇用者数 +8.0万人
民間部門雇用者数 +8.4万人
失業率(U-3) 8.2%
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.50ドル
U-6失業率 14.9%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment Rate 20120706


(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Employment recovery 20120706




(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20120706



(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20120706



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer Unemployment 20120706



(6)労働参加率(単位:%)の推移


Participation Rate 20120706




(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20120706




■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数は8.0万人となり、5月から若干雇用の伸びが加速した。4月は二次速報の7.7万人増加から6.8万人増加に下方修正、5月は一次速報の6.9万人増加から7.7万人増加に上方修正された。ヘッドラインからすれば、10万人程度の増加が見込まれていたため、ネガティブなものとなった。民間雇用に関しては8.4万人の伸びにとどまり、雇用市場の回復が足踏みしていることが鮮明となった。異例な暖冬の影響から季節調整の歪みにより1-2月に雇用が押し上げられた反動として3-5月に雇用が急減速したが、こうした季節調整の歪みの影響については6月以降減衰していくものと思われる。


・製造業は1.1万人の増加となった。内訳は、鉱業・掘削業が前月から変わらず、建設業が2千人増加、製造工業は1.1万人増加、製造工業うち耐久財は1.4万人増加、非耐久財は3千人減少となっている。製造工業では、金属加工製品、機械、輸送用機械で増加している。米国内の自動車販売が堅調でもあるように、自動車関連の業況は底堅く、雇用面でも反映したものとなっている。しかし、ISM製造業景気指数が好不況の節目である50を割り込んだことにより、こうした景況感が雇用に反映してくる可能性もあるため、楽観視することは難しい。


・非製造業は7.1万人増加となった。内訳は、卸売業が8.8千人増加、小売業が5.4千人減少、運輸・倉庫が2.2千人減少、情報が8千人減少、金融取引が5千人増加、専門職・ビジネスサービスが4.7万人増加(うち人材派遣が2.52万人増加)、教育・福祉サービスが2千人増加、観光・接客業が1.3万人増加、その他のサービスは9千人増加となっている。雇用増の伸び悩みの要因となったのは主に"Health care and social assistance"(ヘルスケア・社会扶助)が1.14万人の増加に留まったことが背景にあるものと思われる。この業種に関しては景気の善し悪しに関わらず今後持続的に雇用は拡大していくものとみられるが、単月では伸び悩んだ格好となり、これがサービス業の雇用増を抑制している。一方で人材派遣は2.52万人の増加となっており、引き続き需要動向に不確実性がある中で正社員の採用は見送り、人材派遣で埋め合わせるといった傾向みられている。


・政府部門は4千人減少となった。連邦政府が7千人減少、州政府が1千人減少、地方政府が4千人増加となった。ここにきて、地方政府の雇用削減圧力はやや緩和されてきている。しかし、財政削減圧力は依然として続くものと考えられることから、極めて弱いまま推移していくものと考えられる。以下は地方政府の雇用者数推移(出所:米労働省)。


Local government 20120706



・非農業民間部門の週間平均労働時間は34.5時間となり、前月から0.1時間増加した。このことから、民間セクターの労働投入量は前年比2.08%の伸びとなり、5月から加速した。週間あたり平均賃金は23.50ドルとなり、前月から6セントの上昇となった。これにより、週間あたり平均賃金は810.75ドルとなった。賃金についても前月からやや加速しているものの、賃金インフレといえる状況からは程遠い。以下は週間あたり平均賃金の前年比伸び率の推移(出所:米労働省)。


Average hourly Earnings 20120706



■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.2(8.217)%となり、前月から若干上昇した。


Household survey 20120706


失業率を求める際の分母となる労働人口は、前月から15.6万人増加となっている一方で、分子となる失業者は2.9万人増加となった。労働参加率は前月と変わらずの63.8%となり、就業者は12.8万人の増加となっている。非労働力人口は3.4万人増加となっていることを踏まえると、前月とそれ程労働市場の状況は変わっていないということになる。労働参加率の低下に一応は歯止めがかかり、非労働力人口の一部が労働市場に戻るとすれば、それは失業者とカウントされるため、現状の緩慢な労働市場の回復ではそれを吸収するのは難しい。従って今後労働市場の状況が現状のレベルで推移すれば、失業率は低下しにくくなる。長期失業者(27週以上失業状態にある者)は4.1万人減少の537万人となっており、失業者全体の41.9%となっている。


■6月雇用統計の評価とFedの動向


6月の雇用統計は家計調査、事業者調査ともに傾向がつかみにくいものとなっている。強いて言えば以下の通りである。


ポジティブファクター:労働投入量の伸びが回復したこと
ネガティブファクター:民間部門雇用者数の伸びが鈍化したこと


労働参加率の低下傾向に歯止めが掛かっているということについては評価できるが、現状の労働市場ではそれらの「失業者」を吸収するだけの力強さには欠ける。また、現状ISM製造業景気指数が50を割り込んできているなど、米国の景況感は悪化しており、雇用市場が今後急速に回復しづらい展開となってきている。米国の景況感の悪化については、欧州情勢や新興国の景気減速の影響もあるが、このところFedなど当局者が気にかけている点としてFiscal Cliff(財政の崖)が発動された場合の米国経済のダウンサイドリスクについても意識されてきている。このFiscal Cliffを巡る情勢の不透明さが企業や家計のマインドを悪化させており、仮に(万が一ではあるが)財政協定を巡って上下両院での民主・共和党の合意が無い場合、2013年当初から増税と財政支出カットにより米国経済がリセッション入りする可能性が指摘されている。CBOの見解では以下の通りとなっている(WSJ: CBO Sees 2013 Recession Risk)。



The combination of tax increases and spending cuts, often referred to as a "fiscal cliff," would sharply reduce the federal budget deficit but would temporarily arrest the economic recovery, said the CBO, which serves as Congress's budget calculator.


議会予算局の推計では、「財政の崖」と呼ばれる、増税や歳出削減の組み合わせは、米国の財政赤字を鋭角的に減らすのだろうが、一時的に景気回復を阻止してしまうだろうと述べた。

The CBO projected the economy would contract at a 1.3% annual rate in the first six months of 2013, likely meeting the definition of a "mild recession," if certain tax increases and spending cuts are allowed to take effect next year. The economy would stabilize in the second half of 2013 and grow by 0.5% over the year.

もし、増税や歳出削減が発動された場合、CBOは経済が2013年の上半期に年率で1.3%縮小し、「マイルドなリセッション」との定義に当たるだろうと予測している。2013年の下半期には安定し、年間で0.5%となるだろう。



仮に2013年の議会年度入りまでに議会でFiscal Cliffから回避することで合意できない場合、およそ6000億ドル(GDPの4%程度)の財政支出カットが見込まれている。最終的には議会で合意に達するものとみられるが、その前段階で激しいチキンレースが繰り広げられることになれば、米国の企業及び家計のマインドはその不確実性により冷やされてしまい、企業や家計の支出や企業の採用活動にも悪影響を及ぼしかねないことになる。従って、このところのFedの見方においても、最も意識しているものは欧州情勢ということになろうが、Fiscal Cliffが米国経済に与える影響について、もしくはそれを回避するための合意に時間が掛かることについても極めて神経質な問題として捉えられてきている。従って、バーナンキ議長はじめとしてFed高官は早期にこの問題について解決するよう議会に促している。今後大統領選挙も含めてこうした政治的なイベントには非常に神経質な展開となっていくことが想定される。



今後のFedの政策については、今後不透明感は高まっていくことが考えられるものの、取り敢えず6月の非農業部門雇用者数の伸びが一層鈍化する、もしくは急ブレーキが掛かるような状況ではなかったことから、7月終盤のFOMCでは現在のオペレーション・ツイストの継続とフォワードガイダンスの現状維持を決め、新たな金融緩和については見送られるものと思われる。しかし、不確実性が大きくなり、それが景気を下押す蓋然性が高まった時にはフォワードガイダンスに示した金融引き締めに転じる時期を先送りし、市場に対し、低金利政策の長期化について期待形成を働きかけるのだろうと思われる。



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タグ: マクロ  米国  雇用統計  Fed 
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5月雇用統計~労働参加率が回復 

6月1日に米労働省BLSは5月の雇用統計を公表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +6.9万人
民間部門雇用者数 +8.2万人
失業率(U-3) 8.2%
週間平均労働時間 34.4h
平均時間あたり賃金 23.41ドル
U-6失業率 14.8%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20120602



(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Job recovery 20120602



(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20120602



(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20120602



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20120602




(6)労働参加率(単位:%)の推移


Partcipation Rate 20120602




(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Partcipation Rate 20120602




■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数は6.9万人増加となり、市場予想の平均である14.9万人増加を下回る内容となり、ヘッドラインとしてはネガティブサプライズとなった。3月は二次速報の15.4万人増加から14.3万人に下方修正、4月についても速報の11.5万人増加から7.7万人増加に下方修正された。3月以降雇用増加のモメンタムが低下していることが裏付けられている。4月の下方修正の要因については、観光・接客業が速報値1.2万人増加であったのに対して二次速報値では6千人減少となっていること、専門職・ビジネスサービス業で速報値が6.2万人増加であったのに対して二次速報値では3.7万人に下方修正されたこと、製造業についても速報値1.4万人増加に対して二次速報値では4千人増加に下方修正されたことなどによる。趨勢的には1-2月の記録的な暖冬の影響で押し上げられた反動や、それ以外の循環的な景気減速などにより、雇用市場の伸びは減速しているといえる。


・製造業は1.5万人の減少となった。内訳は、鉱山・掘削業で1千人増加、建設業で1.5万人減少、製造工業で1.2万人増加となっている。製造工業の内訳では、耐久財が1.3万人増加、非耐久財が1千人減少、耐久財のうち自動車及び部品は5.8千人の増加となっている。建設については1-2月に記録的な暖冬の影響で押し上げられた反動が出てきているものと考えられる。一方で自動車関連の人員の引き合いはそれなりに堅調である。しかし、速報値段階ではヒューレッドパッカード(HP)の2万7千人規模のレイオフの影響は織り込めておらず、今後7月に発表される5月二次速報段階もしくは6月以降の雇用統計においてこの影響が出てくる可能性がある。



・非製造業は9.7万人の増加となった。内訳は、卸売が1.59万人増加、小売業は2.3千人増加、運輸・倉庫は3.56万人増加、情報は2千人減少、金融取引は3千人増加、専門職・ビジネスサービス業は1千人減少、教育・ヘルスケアは4.6万人増加、観光・接客業は9千人減少となった。専門職・ビジネスサービス業のうち、人材派遣は9.2千人の増加にとどまった。季節要因もあるものと考えられるが、これまでサービス業を牽引していた観光・接客業の雇用のモメンタムが低下し、また専門職のうち、建物・住宅サービスの雇用が1.43万人減少している。一方で運輸・倉庫業が3.56万人増加している。小売なども着実な伸びを示していることから、内需について、少なくとも雇用面からは減速しているものの落ち込むという方向ではなく、底堅いことを示している。


・政府部門は1.3万人減少となった。内訳は、連邦政府で5.0千人減少、州政府が5.0千人減少、地方政府が3千人減少となった。地方政府については、教員が3.3千人減少した一方で教員除く職員は0.4千人増加した。地方政府については、教員の削減が大きく、教員以外ではあまり変化がないことから、緩やかに下げ止まり感が出てきているという見方を強めるものとなっている。以下は地方政府の人員の推移である(出所:米労働省)。


Local gevernment 20120602



・非農業部門の週間平均労働時間は34.4時間となり、前月から0.1時間減少した。週間平均労働時間と民間雇用者数増減を掛けあわせた民間部門の労働投入量は前年比1.78%の伸びとなり、伸び率は鈍化した。製造業の週間平均残業時間も3.2時間と前月から0.1時間減少していることから、労働機会が縮小していることが示唆されており、ネガティブである。また時間あたり平均賃金は23.41ドルとなったことから、週次あたりの平均賃金は前月から1.66ドル減少の805.30ドルとなった。賃金については殆ど伸びていないどころか、むしろ減少していることから、消費マインドへの影響も気に掛かるところだろうと思われる。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.2%(8.193%)となり、前月から0.1%上昇した。


Household survey 20120602




失業率を求める際の分母となる労働人口は前月から64.2万人増加、分子となる失業者は22.0万人増加した。このことから失業率が増加した。非労働力人口が46.1万人減少し、就業者が42.2万人増加したことからすれば、長期失業などの状態から職探しを諦めて労働市場から退出した人が景気回復などにより労働市場に再参入してきたことが失業率上昇の要因とみられる。そのことから労働参加率は63.8%に回復し、就業者比率も58.6%に回復した。今後も労働参加率は過去25年間で最低の水準で一進一退していくものと思われるが、一応の下げ止まり感はみられつつある。若年層の労働参加率の低下について懸念を示す向きもあったが、16歳以上の男性の労働参加率は4月は70.0%に低下したが、5月は70.3%に回復している。このことからも職探しの再開の可能性に向けて明るい材料となっているものと思われる。今後職探しを再開することによって、労働市場に戻る人が増加すれば、失業者が増加することになる(失業者とは定義上、"All persons who are without jobs and are actively seeking and available to work are included among the unemployed."「職に就いておらず、かつ職探しをしており職に就くことが出来る全ての人々は失業という状態に含まれる」ということである)。労働人口も押し上げられるが失業者も押し上げられるので、当面この傾向が続くことになれば、失業率は下がりにくくなる。労働市場が本格的に回復するというのは、こうした労働参加が広がっていくということであり、景気の拡大に伴い就業機会が拡大することによってこうした失業者を吸収することで失業率が低下するというプロセスを踏むことが理想的であるといえる。従って、今後もこうした形で労働人口が増加していけるかどうかがポイントとなってこよう。但し、日本ほどではないものの、ベビーブーマー世代のリタイヤなどの動きもあることから、このあたりは労働参加率上昇にとってはアゲンストとなりやすいことには留意が必要である。長期失業者(27週以上の失業状態にある人)は31万人増加した。失業者全体に占める長期失業者の割合は42.8%となった。これまで減少傾向が続いていたが、5月は急に増加した格好となった。趨勢的には減少していくものと考えられるものの、依然としてそのペースは緩慢であろう。



■5月雇用統計の評価とFedの動向


5月の雇用統計は家計調査でポジティブ、事業者調査でネガティブなものとなった。


ポジティブファクター:労働参加率が上昇したこと
ネガティブファクター:非農業部門雇用者数の伸びが一層鈍化したこと、賃金が低下したこと、労働投入量の伸びが大きく鈍化したこと


こういったようにまとめられる。労働参加率の低下に下げ止まり感が出てきたことについてはポジティブなものと言える。しかし、非農業部門雇用者数については世界経済の減速感の影響は免れないものとなっている。従って全体としてはまちまちな評価となっている。なお、暖冬の影響により1-2月に雇用が大幅に押し上げられた反動が5月まで続いているという見方も出来るため、今後雇用増減のモメンタムについては今後変化していく可能性もある。


Fedとしては、雇用市場のモメンタムが低下してきていることは懸念材料として意識しているものの、QE3については今のところやや声が大きくなっているという印象であり、メンバーの総意という印象ではない。前回のFOMC議事要旨において、


Several members indicated that additional monetary policy accommodation could be necessary if the economic recovery lost momentum or the downside risks to the forecast became great enough.

複数のメンバーはもし経済回復がモメンタムを失い、ダウンサイドリスクが十分大きくなっていくようであるならば追加の金融緩和が必要となる可能性があると指摘した。




確かにこの雇用統計では経済回復のモメンタムが低下しているということを示唆しているものの、雇用は増加基調を保っているわけであり、この雇用統計だけで追加緩和というにはまだ尚早であるとうにも思われる。ダウンサイドリスクへの蓋然性が強まった時に追加緩和という手段が取られるものと考えられる。ダウンサイドリスクとは、NYFedダドリー総裁が考えているところでは以下のようなものである(NYFed "Job Polarization in the Region"より)


Nevertheless, significant downside risks remain, especially those related to the challenges in Europe and how the potential “fiscal cliff” in the United States will be resolved after the fall elections. Even if these risks do not materialize, I anticipate only slow progress toward full employment.

しかしながら、著しいダウンサイドリスクは残っており、特に欧州における課題に関連したものや、米国における潜在的な「財政の壁」が秋の選挙後に解決されるのかということである。もしこれらのリスクが実現しないとしても、完全雇用に向けた進捗はただ遅いのみだと予想する。



すなわち、欧州の状況が米国にスピルオーバーし金融市場が不安定となり、信用スプレッドなどを通じて実体経済にも悪影響を及ぼすような場合、あるいは輸出の停滞で成長が押し下げられる場合、そして米国の潜在的な財政問題とその解決策がどのように進展していくのかということをダウンサイドリスクとして挙げている。現時点で社債やモーゲージスプレッドはやや高まってきているものの、ベンチマークとなる長期金利が急低下してきたことも背景にあるため、欧州リスクが米国にスピルオーバーした結果がすべてであるとは言い切れず、従って金融ストレスが著しく掛かっている状況でもないことから、クレジットチャネルによるダウンサイドリスクは現時点でそれ程高まっているわけではない。但し、今後の欧州金融情勢の進展によっては著しいダウンサイドリスクに繋がる可能性はそれなりに対処していかなければならないだろう。一方で、欧州経済は恐らくマイルドなリセッションではなく、本格的なリセッションに突入する可能性があり、当然米国の輸出にとってアゲンストになってくる可能性もある。この場合、輸出セクターで雇用が減少することが確認されればダウンサイドリスクの顕在化と捉えることも出来るかもしれない。また、財政問題については、大統領選挙を睨んでということにもなるが、昨年のスーパーコミッティ決裂により、2013年以降は歳出が自動的に1.2兆ドル程度カットされる。このことから、来年以降緊縮財政への可能性があることから、景気の下押し圧力になる可能性もある。この点については大統領選挙後、新しく就任する大統領や議会がどのように対処していくかが鍵となる。


そしてこのようなダウンサイドリスクが顕在化した段階で取るべき政策については以下のように語っている。



As long as the U.S. economy continues to grow sufficiently fast to cut into the nation’s unused economic resources at a meaningful pace, I think the benefits from further action are unlikely to exceed the costs. But if the economy were to slow so that we were no longer making material progress toward full employment, the downside risks to growth were to increase sharply, or if deflation risks were to climb materially, then the benefits of further accommodation would increase in my estimation and this could tilt the balance toward additional easing.

米国経済が有意義なペースで経済における活用されていない資源を削っていくために十分な速さで成長が続いていくならば、私が思うには更なる行動による恩恵はコストを超える可能性は無いだろうと思う。しかし、もし経済が、完全雇用が実質的に達成できないくらいに減速し、ダウンサイドリスクが鋭角的に増大するか、デフレーションリスクが実質的に増大するならば、追加の緩和の恩恵は、私の推定ではより増大し、追加的な緩和に向けて傾けることも出来る。

Under such circumstances, further balance sheet action might be called for. We could choose between further extension of the duration of the Federal Reserve’s existing Treasury portfolio and another large-scale asset purchase program of Treasuries or agency mortgage-backed securities.


そのような状況下では、更なるバランスシート拡張が呼び出される。我々はFedの既存の米国債ポートフォリオのデュレーションを更に伸ばすか、さらに米国債もしくはエージェンシーMBSについて大規模な資産購入プログラム(LSAP)を選ぶことが出来る。



今のところは米経済は着実な回復途上にあることから、追加緩和について恐らくベネフィットはコストを超えられないという見方をしているものの、上記のようなダウンサイドリスクが増大するような状況もしくは雇用減となるような状況においては追加緩和に向けて舵を切るものと考えられる。その際、可能性がある政策の順に、オペレーション・ツイストの延長、(7月を待って)フォワードガイダンスに示されている低金利政策の期間予測の先延ばし、MBSの買入+不胎化、LSAPによる米国債購入・バランスシート拡張政策ということになろうかと思われる。バランスシート拡張政策については、大統領選挙を目前にして共和党からの反対論が強く、また内部でもコンセンサスをまとめるのは難しいことから優先順位としては低い。一方でオペレーション・ツイストの期間延長及び保有証券の残存期間延長は、出口戦略を難しくさせるものの、バランスシート拡張政策ではないので現時点でコンセンサスが得やすいものと思われる。フォワードガイダンスに示されている低金利政策の期間予測の先延ばしについては、これは各参加者の金利予測が前提となるだけにSEPと声明文との整合性の問題が残るものの、市場の期待形成に働きかけ長めの金利に作用するという時間軸効果を狙うという政策は現段階で有効であると思われる。いずれにせよ、今月末でオペレーション・ツイストが完了することから、その後の政策運営をどのようにしていくのかということについて、6月のFOMCはかなり大きな意味合いとなっていくものと考えられる。



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カテゴリ: 市場視点

タグ: マクロ  米国  雇用統計  Fed 
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4月雇用統計~雇用市場の減速感鮮明に  

5月4日に米労働省は4月の雇用統計を発表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +11.5万人
民間部門雇用者数 +13.0万人
失業率(U-3) 8.1%
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.38ドル
U-6失業率 14.5%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20120504


(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Employment Recovery 20120505


(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20120505




(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20120505




(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Long Unemployment 20120505



(6)労働参加率(単位:%)の推移


Partcipation Rate 20120505


(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20120505



■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数は11.5万人増加し、市場予想の17万人増を下回り、ヘッドラインとしてはネガティブなものとなった。但し、3月は速報の12.0万人から15.4万人に上方修正され、2月も二次速報の24.0万人増加から25.9万人増加に上方修正された。3月の雇用増加幅が上方修正されたのはポジティブであったが、これは観光・接客業(速報値は3.7万人増加、二次速報で5.2万人増加)、小売業(速報値3.38万人減少、二次速報で2.09万人減少)などの業種で大幅な上方修正がみられたことによる。しかし、趨勢的には減速感が強まっているものとみられる。


・製造業は1.4万人の増加となり、3月の3.8万人増加から比べれば雇用の伸びは減速している。内訳は、鉱業・掘削業で変わらず、建設業で2千人減、製造工業(Manufacturing)で1.6万人増加、うち耐久財で1.5万人増加、非耐久財で1千人増加となった。さらに耐久財のうち、自動車及び部品は1千人の増加に留まった。これまで、自動車関連の雇用は製造業の雇用及び業況を牽引してきた。しかし、4月の自動車関連の雇用の伸び悩みは製造業の業況に陰りが見え始めた可能性がある。自動車産業が活発なシカゴ地区の4月のPMIは56.2と前月から大きく低下してきており、同業種の失速感を強くするものとなっている


・非製造業は11.6万人増加となり、3月の12.8万人増から減速した。卸売は7.4千人増加、小売は2.93万人増加、運輸・倉庫は1.66万人減少、情報は2千人減少、金融業は1千人増加、専門業・ビジネスサービス業は6.2万人増加、教育・ヘルスサービスは2.3万人増加、観光・接客業は1.2万人増加となった。サービス業の減速の要因としては、運輸・倉庫業での雇用の減少と、教育・ヘルスサービス業での雇用増が頭打ちになり、さらにサービス業の雇用増を牽引した観光・接客業の雇用が伸び悩んだことが挙げられる。運輸・倉庫業では特にTransit and ground passenger transportation(旅客輸送業)で大きな減少となっており、アメリカン航空の破綻により人員削減が行われた(破綻時に1.3万人ほどの人員を削減する計画、追加で1000人の削減策もある)影響が出ているものと思われる。しかし、観光業のうち、Arts, entertainment, and recreation(美術、娯楽、レクリエーション業)で雇用が減っていることからすると、米国人のレジャー支出が減ってきている可能性がある。もっともイースター休暇の反動でこういった雇用が減っている可能性もあるため、留意は必要である。また、年初からの同業種の雇用増については、天候が穏やかだったこともあり押し上げられたという可能性もある。なお、人材派遣は2.11万人増加となっている。先行き需要見通しが立たない中でこうしたテンポラリーな人員確保を進めていた可能性がある。


・政府部門は1.5万人減となった。内訳は、連邦政府で4千人減、州政府で5.5千人増加、地方政府1.07万人減少となっている。地方政府については、教員の削減が大きく、教員以外の削減幅はそれほど大きくはないことから、緩やかに下げ止まり感が出てきているという見方を変えるものではない。以下は地方政府の人員の推移である(出所:米労働省)。


Local gevernment 20120505


・非農業部門の週間平均労働時間は34.5時間となり、週間平均労働時間と民間雇用者数増減を掛けあわせた民間部門の労働投入量は前年比2.2%の増加となった。また時間あたり平均賃金は23.38ドルとなったことから、週次あたりの平均賃金は前月から34セント増加の806.61ドルとなった。賃金の伸びは極めて鈍いことが裏付けられており、賃金インフレの兆しはない。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.1%(8.098%)となり、前月から0.1%低下した。


Household surver 20120505


失業率を求める際の分母となる労働人口は前月から34.2万人減少、分子となる失業者は17.3万人減少となったことを受けて失業率が低下した。また就業者(Employed)は16.9万人減少、非労働力人口(Not in labor force)は52.2万人増加となったことから、労働市場からの退出が膨らんだことが失業率を低下させた。従って、ネガティブな失業率低下ということになる。労働参加率(Participation rate)は63.6%に低下し、ここ25年で最も低い水準にある。年齢・性別別の労働参加率の増減をみても、20歳以上の男性が前月から0.4ポイント低下していることから、育児産休で労働人口が大きく減ったという印象ではない。後述するが、4月の長期失業者は大きく減少していることから、長期失業により職探しを諦め、労働市場から退出した人が多くなっている。非労働力人口のうち、Persons who currently want a job(現在職を求めている人)は6.7万人増加していることから、そういった事情である可能性が強い。長期失業者は前月から20.7万人減少の510.1万人となり、失業者全体に占める割合は41.63%となった。依然として長期失業の水準は高いものの、徐々に低下してきている。このこと自体は一見ポジティブではあるものの、非労働力人口の増加が長期失業者を減らした可能性があるだけに、実際は決してポジティブな要素だけではないものと考えられる


■4月雇用統計の評価とFedの動向


4月の雇用統計も概ねネガティブな評価が多いものと思われる。


ポジティブファクター:特になし(強いて言えば3月の雇用者数が上方修正されたこと)
ネガティブファクター:製造業の雇用増が頭打ちになってきていること、非農業部門雇用者数の増加が伸び悩んだこと、賃金の伸びが緩慢であること、労働参加率が低下したこと


特に、家計調査においては一見するとヘッドラインの数字はポジティブなようにみえるが、労働市場からの退出が多く発生していることを踏まえると、全体的にネガティブな結果だったといえる。前月のエントリでも述べたが、バーナンキ議長の言からすれば、「長期失業により労働者のスキルが奪われ、雇用のミスマッチを生み、労働力への執着を萎縮させ(labor force attachment atrophy further)、長期失業が構造的な要因に転換してしまう」ということであり、その文脈から職探しを諦めて非労働力となった人が多くなったのはネガティブだろうと思われる。


そしてこのところ雇用だけでなく、米国の経済活動を表す指標は軒並み失速を示唆している。3月の耐久財受注は2009年1月以来の大幅な減少となる前月比4.2%減となり、製造業の経済活動が失速していることが示唆されている。また非製造業においても先日発表されたISM非製造業景気指数は53.6に低下し、製造業だけではなく、サービス業の業況モメンタムも低下してきている。以下はISM非製造業景気指数の推移である(出所:FRED)。


ISM nonmanu BAI 20120504


以下のグラフは米国の経済活動を表す各指標のヒートマップチャートである(出所:FRED)。


heatmap (1)



順に、ISM製造業景気指数(PMI)、ISM非製造業景気指数(NMI)、非農業部門雇用者数増減、製造業新規受注(前月比%)、鉱工業生産指数(前月比%)、自動車販売(前月比%)について2000年からのデータを取得し、標準偏差を取って現在の位置が平均値からどの程度離れているかを示したものである。すでにISM非製造業景気指数、製造業新規受注、鉱工業生産指数、自動車販売は過去の平均から下方乖離してきており、経済活動の減速感を示唆するものとなっている。


そして今回の雇用統計でも雇用が伸び悩んでいることが示唆されておりり(ヒートマップはまだ平均から上方乖離となっているが)、米国経済の減速感を強く滲ませたものとなっている。このことから、循環的な米国の景気減速という動きとなっており、Fedとしても現行のフォワードガイダンスに示された時期を再表明することで、緩和姿勢の継続をマーケットにアピールすることになろう。仮に米国の成長が腰折れする事態となればフォワードガイダンスに示された時期を後ずれさせて緩和期間の長期化をマーケットに織り込ませることも考えられるが、現時点ではそこまでは至っていないものと考えられる。また現段階で物価上昇率はフォワードガイダンスの後ずれを支持するものではない。3月のコアPCEデフレータは前年比1.9%の伸びとなっており、目標としている2%に接近している。以下はコアPCEデフレータの推移(前年同期比、出所:FRED)。


PCE core deflator 20120504



中期的に目標を下回って推移すると予測しているが、短期的には予測を上振れている。最低賃金がインフレ率に連動している欧州や、ホームメイドインフレの兆しがある英国とは異なり現時点でパススルーなど二次的効果は限定的であろうと思われるが、それでもガソリン価格の高騰などが一時的なものではなく、高止まりするようなことになれば、期待インフレ率が上昇していくことも考えられる。また賃金は極めて抑制されていることは本日の統計でも示されたが、ユニットレーバーコストの上昇基調は続いている。オバマケアによる影響が大きく、特殊要因ではあるものの、特にインフレを警戒するタカ派の連銀高官などからすれば、緩和姿勢の強化を支持できる材料ではない。以下はユニットレーバーコストの推移である(出所:FRED)。


ULC 20120503


従って、労働市場が軟化しているということは緩和強化をサポートするものではあるものの、一方で物価については、賃金の伸びが極めて鈍いことがスラックの大きさを物語るものとなっているものの、マンデートに接近している状況で、さらにガソリン価格の高騰が購買力を低下させ、消費者マインドを低下させる一因にもなっていることから、緩和強化を支持するとは必ずしも言い切れない。但し、米経済の失速もしくはその懸念がエネルギー価格を押し下げるのであれば、次第にインフレ圧力も緩和していくことにも繋がる。そうした時期を見極めるまでは基本的に"Wait And See"なのだろうと思われる。



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3月米雇用統計~雇用増加のモメンタム低下 

4月6日に米労働省BLSは3月の雇用統計を発表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +12.0万人
民間部門雇用者数 +12.1万人
失業率(U-3) 8.2%
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.39ドル
U-6失業率 14.5%



以下は各指標の推移である(出所:米労働省BLS)


(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment Rate 20120407


(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Payroll Recovery 20120407



(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20120407



(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20120407



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Long Term Umemployed 20120407



(6)労働参加率(単位:%)の推移


Partcipation Rate 20120407



■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数は12.0万人増加となり、市場予想の20.1万人程度を大きく下回り、ヘッドラインとしてはネガティブサプライズとなった。1月は27.5万人増加と前回発表の28.4万人増加から下方修正、2月は24.0万人増加と前回発表の22.7万人増加から上方修正となった。民間雇用者数は12.1万人増加に留まり、民間雇用の伸び悩みが示唆された内容となっている。


・製造業は、3.1万人増加となった。うち、鉱山・掘削業は1千人増加、建設は7千人減少、製造工業(Manufacturing)は3.7万人増加、うち耐久財は2.6万人増加、非耐久財は1.1万人増加となっている。建設は住居用、非住居用で雇用が減っている。製造工業については、輸送用機械が13.0万人増加となっており、米国内で需要が高い自動車に関しては好調な雇用をキープしている。非耐久財では食品や紙・紙製品、化学等で雇用が増加している。製造業の雇用モメンタムは2月から加速しており、製造工業で雇用を確保しようとする動きが続いていることが示唆されている。


・サービス業では、卸売業が4.1千人増加、小売業が3.38万人減少、運輸・倉庫業が2.8千人増加、情報が9千人減少、金融業が1.1万人増加、専門職・ビジネスサービスが3.1万人増加(うち人材派遣は7.5千人減少)、教育・福祉サービスが3.7万人増加、観光・接客業が3.7万人の増加となっている。特に、GMSを中心とした小売業で雇用削減の動きとなっており、これが3月の民間雇用の伸びを圧迫した可能性がある。またここ数カ月の雇用増を大きく牽引した人材派遣で雇用が減っていること(2月は5.49万人増加であった)も減っていることも圧迫している。またヘルスケア・ソーシャルアシスタンスについても2.61万人の伸びに留まっているなど、サービス業で雇用の伸び悩みが色濃く映しだされた結果だった。


・政府部門は1千人減少となった。連邦政府は変わらず、州政府では2千人増加、地方政府では3千人減少となっている。地方政府については、教育で2.7千人減少し、非教育で0.2千人の減少となっており、横ばいといった格好となっている。雇用増に転じるかは未知数ではあるものの、雇用削減のモメンタムが低下してきている。以下は地方政府の雇用者の推移である(出所:BLS)。


Local gevernment 20120407


・非農業部門の週間平均労働時間は34.5時間、時間あたり平均賃金は23.39ドルとなった。2月に週間平均労働時間が34.6時間と上方修正されたことから、3月はわずかに減った格好となっている。そのため週間賃金についても2月の807.56ドルから806.96ドルに僅かながら減少している。以下は対前年同期比の時間あたり平均賃金の伸びである(出所:BLS)。


Average hourly Earnings 20120407



■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.2(8.168)%となり、2月と比べて0.1ポイントの低下となった。


Household Survey 20120407


失業者が低下したのは、失業率を求める際の分母となる労働人口が16.4万人減少、分子となる失業者が13.3万人減少したことによる。そのため労働参加率は前月より0.1ポイント低下の63.8%となった。就業者についても3.1万人減少しており、非労働力人口が33.3万人増加したことを考えると、就業を諦め、労働市場から退出した人が大幅に増加したことが要因であろうとみられる。但し、性別及び年齢別の労働参加率をみると、男性は20歳以上で労働人口がやや増加しているものの、20歳以上の女性の労働参加率が59.3%と前月から0.3ポイント低下していることから、このうちの一部は育児休暇である可能性があることには留意したい。総じて3月の失業率低下については、労働市場からの退出が増加したという要因で低下した可能性が強いため、この点ではネガティブな失業率低下といえる。長期失業者(27週以上にわたって失業状態である人)は11.8万人減少の530.8万人となった。失業者全体に占める長期失業者の割合は42.5%となった。長期失業者は緩やかに低下しているものの、依然として歴史的に高い水準が続いているということが言える。



■3月雇用統計の評価とFedの動向


3月の雇用統計は概ねネガティブな評価が多いものと思われる。


ポジティブファクター:製造業で堅調な雇用増がみられたこと
ネガティブファクター:非農業部門雇用者数の増加が伸び悩んだこと、賃金の伸びが緩慢であること、労働参加率が低下したこと


特に、労働参加率が低下し、就業を諦めた人が労働市場から退出したことで、失業率が低下したというのはネガティブに受け止められる。2010年代以降に生産年齢人口が大きく減少していく日本であれば、今後労働参加率の低下に拍車がかかるというのは仕方がないという側面もある。しかし、米国では緩やかながらも生産年齢人口は伸びているため、労働人口が減少してしまうのは労働市場の判断としてマイナスとなるものと考えられる。以下は米国の生産年齢人口の推移である(出所:FRED)。


Working-age Population in the United States


リセッション後の回復過程において、経済成長率以上に雇用の回復(失業率の低下)が著しいということについて、現在様々な所で議論されている。3月27日にはバーナンキ議長は"Recent Developments in the Labor Market"という講演を行っており、関心が高まってきている。オークンの法則通りであれば、潜在成長率以上の成長がなければ失業率は低下していかず、例えば年間に1%失業率低下するのには4%の成長率が必要であるということである(議長講演より)。以下は2000年以降の毎四半期の実質GDP成長率と失業率の関係をグラフにしたものである(出所:Fed)。


bernanke20120326-slide5.jpg


特に2011年は線形からの乖離が大きくなっている。これは成長率以上に失業率が大きく低下したことを示しているが、これが何故もたらされているのか?というのが議長の言うところの「労働市場のパズル」ということである。この要因について、議長はいくつかの説を取り上げ、(1)現状見積もられているGDP成長率が上方修正されさらに速い成長を遂げていたという可能性、(2)失業率の低下が誇張されている可能性、(3)2008-09年の雇用削減がGDPのマイナス成長よりもあまりに大きかったためその反動増となっている可能性である(すなわち上記のグラフの2009年についても線形から大きく乖離しておりオークンの法則では説明できない雇用削減があった、ということである)。この中で、(2)の可能性について、議長は以下のように語っている。


Another logical possibility is that the decline in the unemployment rate could be overstating the improvement in the job market. For example, potential workers could be giving up on looking for work to an unusual extent. Because a person has to be either working or looking for work to be counted as part of the labor force, an increase in the number of people too discouraged to continue their search for work would reduce the unemployment rate, all else being equal--but not for a positive reason. A story centered on potential workers dropping out of the labor force might seem in line with the low level of the labor force participation rate. But other data cast doubt on that idea. For example, a broad measure of labor underutilization that includes people only marginally attached to the labor force has declined about in line with the unemployment rate since late 2010 . On balance, an assessment of a broad range of indicators suggests that a substantial portion of the decline in the unemployment rate does reflect genuine improvement in labor market conditions.

もう一つのロジカルな可能性として、失業率の減少が労働市場の改善を誇張したのではないかということである。例えば、潜在的な労働者はあまりに職を探す期間が長いため、職探しを諦めたかもしれないということだ。なぜならば、職を持っているか、職探しをしている人は労働力と見做され、あまりにも職探しがうまく行かないのでがっかりしたので、職探しを続けられない人が増加することは、他のすべてが等しければ失業率を低下させるが、ポジティブな理由ではない。労働力からドロップアウトした潜在的な労働者が中心となった話は、労働参加率の低い水準からみてとれる。しかし、他の指標ではこの考えに異議を唱えている。例えば、人々を限界的に労働力に接続させている労働力未活用割合といった指標は2010年以降失業率の低下に沿うように減ってきている。総じて幅広い指標の評価では、失業率の低下のかなりの部分は労働市場の状況において真の改善を反映させたものである。



すなわち、米国の労働市場の改善は様々な指標から確認できるものの、一方で労働市場の退出によるものであるという要因があり、今回の雇用統計における失業率の低下については上記の見方を補強するものであり、そういった意味でややネガティブなものであったといえる。そして、議長の講演において最も主張したかったことは、長期失業の弊害である。つまり、講演原稿を要約すると、次の通りである。


長期失業を経験した家計の半数以上は、費用を賄うため貯蓄や退職年金から資金を引き出し、半数は家族や友人から借金をし、3分の1は住宅費を工面するのに苦労させられている。また、長期失業は人々の健康にも悪影響を与え、調査によれば、失業者は、うつ病や脳卒中、心筋梗塞といったストレスに関連した疾患に対して高い疾病率となっている。また社会的なコストも大きく、高止まりする失業は、税収をなくし、雇用保険の増加や家族支援の他の支出の増大により公的なファイナンスを圧迫する。また技能の喪失は長期的に経済全体の生産余力を低下させる。


このことから、長期失業が彼らのスキルが奪われ、雇用のミスマッチを生み、労働力への執着を萎縮させ(labor force attachment atrophy further)、長期失業が構造的な要因に転換してしまうという結論を述べている。従って、今回の失業率低下が、長期失業の結果労働市場から退出する人が増加したという文脈で捉えられるとすれば、明らかにネガティブだろうと思われる。そしてリセッション期間中長期失業が増加したのは循環的要因、すなわち総需要の不足であるという見方を示していること(I also discussed long-term unemployment today, arguing that cyclical rather than structural factors are likely the primary source of its substantial increase during the recession.)からすれば、失業率がこの段階で減少したからといって、緩和的な金融政策を拙速に転換させることは出来ないものと考えられる


このことから、4月のFOMCにおいて、こうした議長の見方が執行部主流派の見方であるとすれば、金利パスを前倒しするFOMC参加者(数人は前倒しするものと考えられるが)は、中間派を中心にそれ程多く出るわけではなく、それ故フォワードガイダンスの前倒しには躊躇するものと考えられる。但し、(金利パスを前倒しさせる可能性がある)タカ派を中心として物価に軸足をおいた政策を求める参加者や景気認識について強気な参加者との間での相違は色濃く出てくるものと考えられる。


さらに、今回の雇用増加のモメンタムが低下したことは、3月のFOMC議事要旨で一部の参加者が留意していたことでもあった。


While recent employment data had been encouraging, a number of members perceived a nonnegligible risk that improvements in employment could diminish as the year progressed, as had occurred in 2010 and 2011, and saw this risk as reinforcing the case for leaving the forward guidance unchanged at this meeting.


最近の雇用の指標は勇気づけられる一方で、数人のメンバーは、2010年や2011年に起こったように、雇用の改善が、年が経つに連れ減衰する可能性といった無視できないリスクについて表明し、今回の会合でフォワードガイダンスを据え置くことを補強するものとしてこのリスクを捉えていた。



としていることから、2010年や2011年の年央に雇用が伸び悩んだことと同じようなリスクがあるのではないかとみていたことが分かった。今回の雇用統計において、非農業部門雇用者数の増加が12万人に留まったというのは、早くもそういったリスクが顕在化している可能性があり、今後数カ月の雇用の趨勢を待ってみる必要はあるものの、フォワードガイダンスを据え置くことが適当であるとする考えを強化するようなものであったといえる



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