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ECB理事会~物価上昇の二次的効果を注視 

4月4日にECB理事会が開催され、政策金利であるリファイナンス金利について1.0%に据え置くことを決めた。以下は理事会後のドラギ総裁会見で読み上げられたステートメントの冒頭部分である。全文はECBサイト参照。


Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. The information that has become available since the beginning of March broadly confirms our previous assessment. Inflation rates are likely to stay above 2% in 2012, with upside risks prevailing. Over the policy-relevant horizon, we expect price developments to remain in line with price stability. Consistent with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued. Survey indicators for economic growth have broadly stabilised at low levels in the early months of 2012, and a moderate recovery in activity is expected in the course of the year. The economic outlook remains subject to downside risks.


(抄訳)通常の経済・通貨分析に基づき、ECBの政策金利を変更しない事を決めた。3月初めから利用可能となった上方では、以前の評価を確認することとなった。インフレ率は2012年に2%を超えて推移する可能性があり、アップサイドリスクが優勢である。政策に関連した時間軸に渡って物価の進展について物価安定に沿って推移すると予測している。この構図と一致して、基本的な貨幣の伸びは抑制されている。調査では、経済成長は、2012年のはじめに広範囲で低い水準で安定していることを示唆しており、2012年中の経済活動の緩やかな回復を期待している。経済見通しはダウンサイドリスクに傾いたままである。


Medium-term inflation expectations for the euro area economy must continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Over the last few months we have implemented both standard and non-standard monetary policy measures. This combination of measures has contributed to a stabilisation in the financial environment and an improvement in the transmission of our monetary policy. We need to carefully monitor further developments. It is also important to keep in mind that all our non-standard monetary policy measures are temporary in nature and that all the necessary tools are available to address upside risks to medium-term price stability in a firm and timely manner.


ユーロ圏における中期的なインフレ期待は、我々の維持することを目的としているインフレ率を下回るが、中期的には2%に近づくところに沿ってしっかりと固定されている。ここ数カ月に渡って、我々は標準的及び非標準的な金融政策手段を実装してきた。この政策のコンビネーションは金融環境の安定化及び我々の金融政策のトランスミッションの改善に寄与した。我々はさらなる進展に注意深く監視をしていく。非標準的な政策手段は事実上一時的なものであり、すべての必要な手段は、しっかりとタイムリーな方法で中期的な物価安定へのアップサイドリスクを解決させるために利用できる。



このようなことから、短期的なインフレリスクに言及し(後述するが中長期的なリスクバランスは均衡)、一方で景気見通しについてはダウンサイドリスクに傾斜しているという3月の見通しを踏襲した格好となっている。現状では経済に安定の兆しが見えているとしているものの、3月のユーロ圏PMIは再度低下し始めているなど厳しい状況を浮き彫りにしている。一方で物価については、2012年に渡って目的としているところの2%を超えて推移するものとみられることから、インフレにも配慮しなければならず、そういった意味では現状の政策を維持するのが妥当であろう、という判断だったように思われる。


金融市場関連の認識は以下のとおりとなっている。


Money and credit data up to February confirm a broad stabilisation of financial conditions and thereby the avoidance of an abrupt and disorderly adjustment in the balance sheets of credit institutions, as intended by our measures. Funding conditions for banks have generally improved, and there has been increased issuance activity and a re-opening of some segments of funding markets. The demand for credit remains weak in the light of still subdued economic activity and the ongoing process of balance sheet adjustment in non-financial sectors. The full supportive impact of the Eurosystem’s non-standard measures will need time to unfold and to have a positive effect on the growth of loans when demand recovers. In this context, it should be noted that the second three-year longer-term refinancing operation was only settled on 1 March 2012.


2月からの通貨及び信用のデータは金融の状況の広範囲な安定化が確認され、それゆえ信用機関の、我々の手段の意図したところである、急激かつ無秩序なバランスシート調整は避けられた。銀行のファンディング状況は総じて改善し、発行の動きが増加し、調達市場のいくつかのセグメントが再開された。信用の需要は抑制された経済活動や非金融セクターのバランスシート調整の進展に照らし合わせると弱いままである。ユーロシステムの非標準的な手段におけるすべてのサポーティブなインパクトは、需要が回復した時のポジティブな効果を持ってくるには時間を必要とする。この文脈において、3年物のLTROは2012年3月1日に払済のものに限られる。




このように述べ、金融市場が安定化し、信用秩序が壊れることは避けられ、ファンディング状況が改善していることを示唆している。但し、すべてのインパクトを把握するには、時間がかかるとしている。


景気見通しのリスクバランスについては、以下のようになっている。


Downside risks to the economic outlook prevail. They relate in particular to a renewed intensification of tensions in euro area debt markets and their potential spillover to the euro area real economy. Downside risks also relate to further increases in commodity prices.

経済見通しにおいてダウンサイドリスクが優勢である。それらは、特に、新たにユーロ圏の債券市場の緊張が強まることや、ユーロ圏の実体経済への潜在的なスピルオーバーと関連している。ダウンサイドリスクはコモディティ価格のさらなる上昇にも関連している。



特にこの日はスペイン国債の入札が行われ、調達未達に終わったことを受けて、同国やイタリアの国債市場の緊張が再び高まっていた。これを受けて記者会見での質問では市場の不安の兆候は多くは見られないとしており、ユーロ圏の周縁国の政府に対して改革の実行を求めている現れとした。これは恐らく流動性が潤沢であり、金融の状況が安定しているという認識に基づくものと思われる。なお、記者とのやり取りで、3年物LTROで供給された資金を早期に吸収することをドイツ等が望んでいることに関しては、早期にそれを実施する方向ではないということを表明した。


インフレについては、現状でアップサイドの認識に偏り、中長期的な見通しでは均衡が取れているという見方を再表明した。インフレについての認識は以下のとおりである。


Euro area annual HICP inflation was 2.6% in March 2012, according to Eurostat’s flash estimate, after 2.7% in the previous three months. Inflation is likely to stay above 2% in 2012, mainly owing to recent increases in energy prices, as well as recently announced rises in indirect taxes. On the basis of current futures prices for commodities, annual inflation rates should fall below 2% again in early 2013. In this context, we will pay particular attention to any signs of pass-through from higher energy prices to wages, profits and general price-setting. However, looking ahead, in an environment of modest growth in the euro area and well-anchored long-term inflation expectations, underlying price pressures should remain limited.

ユーロ圏の年率のHICPは、ユーロスタットの速報値によると、ここ3カ月2.7%で推移したあと、2012年3月に2.6%となった。物価は2012年に2%を超えて推移する可能性があり、主に最近のエネルギー価格の上昇だけでなく、間接税の引き上げの影響である。コモディティの先物価格に基づき、年率のインフレ率は2013年のはじめには再び2%を割り込むところに低下していくはずである。この文脈で、我々は特に、高いエネルギー価格から賃金、利益、価格設定に波及していくすべての兆候について注意を払っていく。しかし、先行きを見ると、ユーロ圏における控えめな成長の環境や長期的なインフレ期待が十分固定されていることにより基本的な価格プレッシャーは限定的である。


Risks to the outlook for HICP inflation rates in the coming years are still seen to be broadly balanced, with upside risks in the near term mainly stemming from higher than expected oil prices and indirect tax increases. Downside risks continue to exist owing to weaker than expected developments in economic activity.

今後数年のHICPインフレ率見通しのリスクは、広範で均衡が取れているとみており、アップサイドリスクは、短期的に予想以上に原油価格が高くなることや間接税の引き上げに起因している。ダウンサイドリスクは経済活動の進展がが予測された以上に弱い状況が続くことである。



インフレについての認識で特に気になるのは" pass-through"に言及したことであった。例えば、Fedはコストアップが川下に価格転嫁する動きは需要が低迷しているため難しく、賃金は労働市場にスラックがあるため上がりにくい、といった認識を持っていることからすれば、かなり対照的な認識であろうと思われる。しかし、ユーロ圏、例えばフランスのような国では、最低賃金がインフレ率に連動して決められることになっており、日本や米国以上に価格上昇の波及(二次的)効果が起こりやすいという事情がある。従って、インフレについては、控えめな成長に留まりかつ、インフレ期待も低いことから中長期的なインフレリスクについてはバランスが取れているものの、短期的には注意しなければいけないファクターが存在している、といったところであろうとみられる。このことから中長期的な見通しを基に政策引き締めを行うというのも無理があり、短期的にインフレ圧力が増す中で金融緩和を行うというのも無理があるように思われる。勿論、景気認識において予測された以上のダウンサイドリスクが顕在化するのであれば、(中期的なインフレも下振れる可能性が出てくることから)金融緩和ということになるのだろうが、今はまだその段階ではない。ドラギ総裁の会見でも利下げについての議論は行われなかったとしていることから、しばらくはWait and seeの姿勢を取っていくものと考えられる。


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タグ: ECB  ユーロ  欧州金融不安  金融政策 
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ECB理事会~インフレ警戒のトーン 

3月8日にECB理事会が開催され、政策金利であるリファイナンス金利を1.0%に据え置いた。そしてドラギ総裁会見が行われ、冒頭以下のような声明文が読み上げられた(全文はECBサイト参照)。


Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. The information that has become available since the beginning of February has confirmed our previous assessment of the outlook for economic activity. Available survey indicators confirm signs of a stabilisation in the euro area economy. However, the economic outlook is still subject to downside risks. Owing to rises in energy prices and indirect taxes, inflation rates are now likely to stay above 2% in 2012, with upside risks prevailing. Nevertheless, we expect price developments to remain in line with price stability over the policy-relevant horizon. The underlying pace of monetary expansion remains subdued, consistent with contained inflationary pressures over the medium term.

通常の経済及び金融分析に基づき、我々はECBの政策金利を据え置くことを決めた。2月のはじめに入手出来る情報では、経済活動の見通しにおける我々の評価を確認した。入手できる調査では、ユーロ圏の経済に安定化の兆しを確認した。しかし、経済見通しはダウンサイドリスクとなっている。現在エネルギー価格や間接税の引き上げが進んでいることから、インフレ率は2012年において2%を超えて推移する可能性があり、アップサイドリスクが優勢となっている。しかしながら政策関連の時間軸を通して物価安定に沿って推移すると予測している。中期的なインフレ圧力を内包している、基本的な通貨の拡大ペースは抑制されて推移している。



このようなことから、景気についてはダウンサイドリスクに傾いているものの、インフレ認識についてはアップサイドリスクにシフトした。これは、欧州における間接税の引き上げの動きや、エネルギー価格の上昇といったことが背景となっているが、これにより今後利下げを行なっていくといった可能性は一層後退したものと思われる。後述するが、この日発表されたECB経済見通しでは、成長率見通しを下方修正する一方で物価見通しを上方修正している。特に物価見通しは2012年中は目標である2%を超えて推移していくとの見通しとなっており、リスクバランスをアップサイドに傾かせている。


そして、2回のLTRO実施と現在の金融市場の評価については以下の通りとなっている。


Over recent months, a wide range of additional non-standard monetary policy measures has been implemented by the Eurosystem. These measures, including in particular two three-year longer-term refinancing operations, were decided upon against the background of exceptional circumstances in the last quarter of 2011. The first impact of these measures has been positive. Together with fiscal consolidation and stepped-up structural reforms in several euro area countries, as well as progress towards a stronger euro area economic governance framework, they have contributed to a significant improvement in the financial environment over recent months. We expect that the three-year longer-term refinancing operations will provide further support for the ongoing stabilisation in financial markets and, in particular, for lending activity in the euro area. All our non-standard monetary policy measures are temporary in nature. Furthermore, all the necessary tools to address potential upside risks to medium-term price stability are fully available.

数カ月に渡って、広範囲な追加の非標準的な金融政策手段がユーロシステムによって実施された。特に2回の3年物LTROを含んだこれらの手段は、2011年の第4四半期に例外的な状況といった背景にあることで決めた。いくつかの国における財政再建や構造改革のステップアップだけでなく、より強力なユーロ圏の経済的な政府のフレームワークの進展とともに、それらはここ数カ月で金融の環境を著しく改善させるのに貢献した。我々は3年物のLTROが金融市場の現在進行している安定化や、特にユーロ圏における貸出にとって更なるサポートを提供していくだろう。すべての我々の非標準的な金融政策手段は、事実上一時的なものである。中期的な物価安定へのアップサイドリスクに対処するためのすべての必要な手段は十分に利用可能である。



このようなことから、3年物LTROを含めた非伝統的な手段は、金融市場の安定化や貸出に好影響を与えているのではないかとの見方を行なっている。1回目のLTROでは4891億ユーロ、2回目の3年物LTROでは5295億ユーロが供給されており、大規模な流動性供給となったことから、金融市場の安定化につながっているとの見方が出来る。欧州銀行の超過流動性(excess liquidity:open market operations plus lending facility minus net liquidity effect autonomous factors minus reserve requirements)は現状で8000億ユーロと過去最大規模となっており、このような流動性の下でターム物金利に低下バイアスが強く掛かっている。以下は銀行の超過流動性の推移とEURIBORの推移である(出所:ECB、EURIBOR)。


Excess Liquidity 20120309

EURIBOR 20120309



また、大量の流動性供給の結果、金融市場が安定化に向かっていることや、LTRO向けの担保への需要、さらには低利で貸し出されたLTROの一部が周縁国のソブリン債市場に流入した可能性などから、特にイタリアやスペイン国債のイールドカーブが正常化し、金利低下が顕著となっている。以下はイタリア国債10年物金利の推移である(出所:Bloomberg)。


Itary 10Y Yield



このようなことから、金融市場やの安定化や貸出に寄与しているという評価を行なっている。第1四半期は金融機関の金融債のリファイナンスが集中する時期であり、昨年以降金融市場で警戒されてきたが、ECBによる長期の流動性供給によりそうしたリファイナンスに対応できるとの見方が優勢である。そして高水準の準備により染み出し効果から金利低下バイアスが掛かってきている。こういったプロセスにより金融市場が安定に向かっており、流動性が枯渇しそれゆえ価格変動が大きくなっていたソブリン債市場も安定化に向かい、イタリアやスペインなどの周縁国の国債の利回り低下に繋がっていると言える。そして興味深いのが" all the necessary tools to address potential upside risks to medium-term price stability are fully available."という箇所で、物価見通しがアップサイドで推移していることを踏まえ、将来への出口戦略への手段が用意されているとの趣旨の発言を行っている。


今回のECB理事会では3月時点での経済見通しが公表された。3月時点での経済見通し及び物価見通しは以下のようになっている。


経済見通し(ユーロ圏実質GDP)
2012年:-0.5-+0.3% (12月時点では-0.4-+1.0%)
2013年:0-+2.2%


HICP見通し
2012年:2.1-2.7% (12月時点では1.5-2.5%)
2013年:0.9-2.3% (12月時点では0.8-2.2%)


このように、経済見通しは下方修正、物価見通しは上方修正となっている。そして、経済見通しについてのリスクバランスは以下の通りである。


This outlook remains subject to downside risks. They notably relate to a renewed intensification of tensions in euro area debt markets and their potential spillover to the euro area real economy. Downside risks also relate to further increases in commodity prices.

この見通しはダウンサイドリスクに依然として傾いている。特に、ユーロ圏の債券市場における緊張の強まりが再発すること、それらがユーロ圏の実体経済にスピルオーバーしていくことである。ダウンサイドリスクはさらなるコモディティ価格の上昇にも関連している。



としており、金融市場へのリスク、それが実体経済にスピルオーバーしていくリスクについて強調されている。物価見通しについてのリスクバランスは以下のようになっている。


Risks to projected HICP inflation rates in the coming years are seen to be still broadly balanced, with upside risks in the near term mainly stemming from higher than expected oil prices and indirect tax increases. However, downside risks continue to exist owing to weaker than expected developments in economic activity.

今後数年間のHICPインフレ率のリスクは広範でバランスが取れており、アップサイドリスクは主に短期的に予測された以上に原油価格が上昇することや間接税の引き上げである。しかし、ダウンサイドリスクもなお存在しており、経済活動の進展が予想以上に弱いことである。



このようなことから、長期的な物価見通しについてはバランスが取れているものの、短期的にはアップサイドリスクが優勢である。取り敢えず金融市場はLTROの効果や各国の財政改革の取り組み、ギリシャ債務スワップの進展、新財政協定の進展などから安定化に向かっているものの、先行きについてソブリンリスクが解決に向かっているわけでもなく、欧州金融機関のデレバレッジの可能性などから金融市場が再度緊張度を高める可能性もあり、まだまだ予断ならない状況は続いていくものと思われる。特に周縁国の金融機関についてはECB依存は未だに強いものと思われ、ECBはレンダーオブラストリゾートの役割をすぐに解くことは出来ないだろう。さらにそうした金融市場の緊張が実体経済にスピルオーバーしていくリスクについても警戒を解くわけにはいかない。一方で、2012年はインフレ率がインフレ目標である2%を超えて推移すると予測されていることから、物価見通しについてはアップサイドに傾かざるを得ない状況であり、利下げといった一段の金融緩和には慎重にならざるを得ないことから、今後ECBにとって政策運営は一段と難しくなっていくものと思われる。

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ECB理事会~適格要件の緩和 

2月9日にECB理事会が開催され、現行のリファイナンス金利を1.0%に据え置くことを決めた。また上限金利である限界貸付ファシリティ金利を1.75%、下限金利である預金ファシリティ金利を0.25%に据え置くことを決めた。以下はドラギ総裁会見の冒頭に読み上げられたステートメントの一部である(全文はECBサイト参照)。


Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. The information that has become available since mid-January broadly confirms our previous assessment. Inflation is likely to stay above 2% for several months to come, before declining to below 2%. Available survey indicators confirm some tentative signs of a stabilisation in economic activity at a low level around the turn of the year, but the economic outlook remains subject to high uncertainty and downside risks. The underlying pace of monetary expansion remains subdued. Looking ahead, it is essential for monetary policy to maintain price stability for the euro area as a whole. This ensures a firm anchoring of inflation expectations in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Such anchoring is a prerequisite for monetary policy to make its contribution to supporting economic growth and job creation in the euro area. A very thorough analysis of all incoming data and developments over the period ahead is warranted.


通常の経済、金融分析に基づき、理事会は本日ECBの政策金利を据え置くことを決めた。1月中旬以降に入手できた情報では、広範囲で我々の以前の評価が確認された。インフレは2%以下に低下していく前の数カ月間は2%を上回って推移する可能性がある。入手した調査指標では、年の変わり始めあたりで、経済活動の低い水準での安定化のいくつかの一時的な兆候を確認しているが、経済見通しは依然として高い不確実性とダウンサイドリスクがある。貨幣の拡大における根本的なペースは抑制されている。先行きを見ると、全体としてユーロ圏の物価安定の維持は金融政策にとって重要である。これにより維持しているインフレ率目標を下回るか、中期的に2%に近づいたところに沿ってインフレ期待がしっかりと固定されていることを確実にする。そのようなインフレ期待の固定は、ユーロ圏において金融政策が経済成長や雇用創出をサポートしていくのに資するための前提条件である。入手した情報や進展についての非常に考えぬかれた分析が正当化される。



入手した情報では、年の変わり目あたりから経済活動の安定化の一時的な兆候がみられる、として前回1月同様の認識を示したことから、利下げについての決定は行われず、記者会見においても利下げについての協議は行なっていないとした。そして適格要件の緩和を行う旨の発言が行われ、以下のようなステートメントが公表された。


The Governing Council of the European Central Bank (ECB) has approved, for the seven national central banks (NCBs) that have put forward relevant proposals, specific national eligibility criteria and risk control measures for the temporary acceptance of additional credit claims as collateral in Eurosystem credit operations. Details of these specific national measures will be made available on the websites of the respective NCBs: Central Bank of Ireland, Banco de Espana, Banque de France, Banca d’Italia, Central Bank of Cyprus, Oesterreichische Nationalbank and Banco de Portugal.

ECB理事会では、特定の国の適格要件や、ユーロシステムの信用オペレーションの担保としての追加の信用要件の一時的な受け入れのためのリスクコントロール手段について、7カ国の中銀の提案について承認した。特定の国の手段の詳細については、アイルランド中銀、スペイン中銀、フランス中銀、イタリア中銀、キプロス中銀、ポルトガル中銀のウェブサイトにて公開する予定である。



としており、今後のオペレーションの適格要件の緩和により、流動性供給を受けるチャネルを拡大していくという形を取っている。金融市場を安定化させるための措置として幅広い金融機関がオペレーションを受けられるようにするということで、レンダーオブラストリゾートの機能強化を図っていくものとみられる。(追記)適格担保要件については、各国中銀に委ねるという形をとっている。但し、記者会見上、ドラギ総裁はこの適格要件の緩和については全会一致ではなかったと述べていた。この担保適格要件の拡大については、信用リスクをECB(及び各国中銀)が一手に引き受けてしまう懸念もある。今後各国の銀行が中銀にリスク性の高い資産を担保として持ち込み、万が一その資産がデフォルト等になってしまうような場合、中銀の負債資産の見合いにおいて過不足が生じる懸念がある。この件について記者との質問があり、ドラギ総裁は、


New collateral rules will be more risky, but risk is being managed very well.
新しい担保ルールは非常にリスキーであるが、リスクは十分管理していくつもりである。



としており、そうしたリスクを認識した上で、懸念を払拭しようとしている。なお、SMPなどで購入しオンバランスとなっているギリシャ国債のヘアカットについて、一部記者から質問されたが、ユーログループが開催されていることもありコメントを控えた。また、ギリシャ国債をEFSFに売却することについては、損失とならないようにすれば財政ファイナンスにはあたらないことを示唆している。


景気見通しについては、以下のようなものとなっている。


Real GDP growth in the fourth quarter of 2011 is likely to have been very weak. According to the survey data for the last two months, there are tentative signs of a stabilisation in economic activity at a low level. Looking ahead, we expect the euro area economy to recover very gradually in the course of 2012. The very low short-term interest rates and all the measures taken to foster the proper functioning of the euro area financial sector are lending support to the euro area economy. Moreover, stress in financial markets has diminished in response to our monetary policy measures, but also in response to the progress made towards a stronger euro area governance framework and intensified fiscal consolidation in several euro area countries. However, subdued global demand growth, the remaining tensions in euro area sovereign debt markets and their impact on credit conditions, as well as the process of balance sheet adjustment in the financial and non-financial sectors, continue to dampen the underlying growth momentum.

2011年第4四半期の実質GDPの伸びは非常に弱い可能性がある。ここ2カ月における調査のデータによると、一時的に低い水準で経済活動が安定したという兆候がある。今後は、ユーロ圏の経済は2012年において徐々に回復していくと予測している。とても低い短期金利とユーロ圏の金融セクターの機能を適切に促進させるために取られたすべての手段は、ユーロ圏の経済をサポートしている。さらに、金融市場の緊張は、我々の金融政策の手段だけでなく、ユーロ圏の政府の強いフレームワークやいくつかのユーロ圏の国における強い財政再建の進展に反応して、軽減してきている。しかしながら、抑制されたグローバルの需要、ユーロ圏におけるソブリン債市場の緊張が残ること、信用状況におけるそれらのインパクトだけでなく、金融及び非金融セクターのバランスシート調整は基調的な成長のモメンタムを低下させ続けている。


This outlook is subject to downside risks. They notably relate to tensions in euro area debt markets and their potential spillover to the euro area real economy. Downside risks also relate to possible adverse developments in the global economy, higher than assumed increases in commodity prices, protectionist pressures and the potential for a disorderly correction of global imbalances.


景気見通しについてはダウンサイドリスクに傾いている。これは主にユーロ圏の債券市場の緊張とユーロ圏の実体経済へのスピルオーバーに関連している。ダウンサイドリスクは、グローバル経済の悪化の可能性、コモディティ価格の想定以上の上昇、保護主義圧力や、潜在的なグローバルサインバランスの無秩序な修正に関連している。



このようなことから、経済に安定化の兆しがみられており、金融市場に安定化の傾向がみられるとしているものの、依然としてリスクバランスはダウンサイドに傾斜しており、金融市場の緊張といった要因に対しては注意を払わざるを得ないという状況である。但し、大きな下方リスク(substantial downside risks)という見方は取っておらず、ややリスクバランスが改善したとの見方もある。また、物価についてのリスクバランスは概ね均衡(broadly balanced)としており、現段階においてインフレを警戒はしていない。


今後の注目ポイントとしては、


・2月末に行われるLTROにおける応札
・今後のオペレーション
・利下げの行方



このようなところとなるが、まず、2月末のLTROについてであるが、これもフルアロットメントで3年間という長い期間での資金供給となる。現状欧州の金融機関は金融債のリファイナンスの時期を迎えており、資金需要は多いものとみられる。また、担保の適格要件の緩和により、オペによる資金供給利用のチャネルが拡大する効果も期待される。そして前回12月の応札で、スティグマへの懸念から資金を取らなかった一部の金融機関の対応も注目されていくものと思われる。


LTROの効果については、今回のECB理事会後のドラギ総裁の会見ではまだはっきりとしたことは言えないとした。


The annual growth rates of loans to non-financial corporations and loans to households, adjusted for loan sales and securitisation, also decreased further in December, and stood at 1.2% and 1.9% respectively. The volume of MFI loans to both sectors declined in December, and this was particularly pronounced in the case of the non-financial corporate sector. In addition, there are indications that bank lending conditions tightened further, affecting loan supply in several euro area countries in late 2011. It is not yet possible to draw firm conclusions from these developments, particularly given that the impact of the first three-year LTRO on bank funding is still unfolding and may not have been fully reflected in the most recent bank lending survey. In addition, other non-standard monetary policy measures announced in December are still to be implemented. Accordingly, close scrutiny of credit developments in the period ahead is essential.

非金融企業への貸出や家計へのローンにおける年率の伸びは、ローンの販売や証券化を調整すれば、12月にともに1.2%、1.9%に減っている。両セクターにおけるMFI(金融機関)のローンの量は12月に減少しており、これは特に非金融の企業セクターで顕著となっている。加えて、銀行の貸し出し状況が厳しくなったというサーベイもあり、2011年末にいくつかのユーロ圏の国で貸出の供給に影響を与えている。特に銀行のファンディングにおいて、3年物のLTROのインパクトが未だに展開されておらず、直近の銀行貸出調査に反映されていないため、これらの進展から確固とした結論を導き出すことは出来ない。さらに、12月に告知された他の非標準的な金融政策手段はまだ反映されていない。従ってこの期間の信用状況の緊密な精査は不可欠である。



しかし、この間のECBの流動性供給の結果、銀行の高水準の超過流動性(excess liquidity:open market operations plus lending facility minus net liquidity effect autonomous factors minus reserve requirements)はターム物金利を押し下げる形となっており、金融市場の安定に寄与したと考えられる。以下は超過流動性と1週間物のEURIBORの推移である(出所:ECB、EURIBOR)。


Excess liquidity 20120210

EURIBOR 20120210


そして、2月で一旦3年物の流動性供給は完了するが、長めの資金供給については引き続き実施していくものと考えられる。流動性は潤沢であり、金融市場は緩和に向かっているものの、ダウンサイドリスクとして金融市場の緊張を意識していること、信用状況の厳しさにより民間への貸出も伸びないこと、引き続き周縁国の金融機関のECB依存が継続していることなどを踏まえ、レンダーオブラストリゾートとしての姿勢を暫くの間は緩めるのは難しいものと思われる。


利下げについては、先述の通り、リスクバランスが"substantial downside risks"(強いダウンサイドリスク)には偏っておらず、現段階で一時的ではあるものの経済活動に安定化の兆しがあることなどを踏まえると、ダウンサイドリスクが顕在化した時のカードとして温存しておくという選択肢を取る可能性が強くなっているようにも思われる。従って、経済状況が小康状態であるうちは利下げについての協議は行われないものと考えられる。


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タグ: ECB  ユーロ  欧州金融不安  金利 
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ECB理事会~現状維持 

1月12日にECB理事会が開催され、現行のリファイナンス金利を1.0%に据え置くことを決めた。また上限金利である限界貸付ファシリティ金利を1.75%、下限金利である預金ファシリティ金利を0.25%にそれぞれ据え置くことを決めた。以下はドラギ総裁が会見冒頭に読み上げたステートメントである(全文はECBサイト参照)。


Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided today to keep the key ECB interest rates unchanged, following the 25 basis point decreases on 3 November and 8 December 2011. The information that has become available since early December broadly confirms our previous assessment. Inflation is likely to stay above 2% for several months to come, before declining to below 2%. At the same time, the underlying pace of monetary expansion remains moderate. As expected, ongoing financial market tensions continue to dampen economic activity in the euro area, while, according to some recent survey indicators, there are tentative signs of a stabilisation in activity at low levels. The economic outlook remains subject to high uncertainty and substantial downside risks. In such an environment, cost, wage and price pressures in the euro area should remain modest and inflation rates should develop in line with price stability over the policy-relevant horizon. Overall, it is essential for monetary policy to maintain price stability over the medium term, thereby ensuring a firm anchoring of inflation expectations in the euro area in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Such anchoring is a prerequisite for monetary policy to make its contribution towards supporting economic growth and job creation in the euro area. A very thorough analysis of all incoming data and developments over the period ahead is warranted.

通常の経済、金融分析に基づき、理事会は2011年11月3日及び12月8日に25bpの利下げを行ったあと、本日ECBの政策金利を据え置くことを決めた。12月のはじめ以降に入手できた情報では、広範囲で我々の以前の評価が確認された。インフレは2%以下に低下していく前の数カ月間は2%を上回って推移する可能性がある。同時に金融の拡大の基本的なペースは緩やかなままである。予測通り、現状の金融市場の緊張はユーロ圏の経済活動を抑制していく一方で、最近のいくつかの調査の指標によると、低い水準で活動が安定している仮の兆候がある。経済見通しは不確実性が高く、潜在的なダウンサイドリスクの影響を受け続けている。そのような環境において、ユーロ圏におけるコストや賃金、価格の圧力は緩慢に推移し、インフレ率は政策と関連した時間軸に渡って物価安定に沿って推移するだろう。全体的に、中期的に物価安定を維持し、それゆえ下回るか、もしくは2%に接近するという我々の維持すべきインフレ目標に沿ってインフレ期待がしっかりと固定することを確認することは金融政策にとって不可欠である。そのようなインフレ期待の固定は、ユーロ圏において金融政策が経済成長や雇用創出をサポートしていくのに貢献するための前提条件である。すべての入手できるデータや期間における進展においてよく考えられた分析が正当化される。



ステートメントにおいて、12月との違いというのは、経済活動が低い水準で安定している兆候がある、ということである。つまり、12月から1月に掛けて経済が落ち込むモメンタムは弱まってきたという評価であろう。ユーロ圏製造業の12月のPMIは46.9となり、11月の46.4から若干上昇している。以下はユーロ圏製造業PMIの推移である(出所:Markit)。


EUROZONE PMI 20120113


現状、ユーロ圏の景気はリセッションに入っているか、もしくはそのリスクが大きいと見られている。そのような中でPMIがやや改善したということは、一時的な景気落ち込みのモメンタム低下なのか、それとも底打ちなのか判断がつきにくいが、こうした動きを評価しているものと思われる。そのような状況において今回は金利を引き下げることを見送り、情勢を見極めるという決定だったように思われる。今回の政策決定は全会一致となった。しかしながら、経済見通しについてはダウンサイドに傾いたままである。


In the Governing Council’s assessment, substantial downside risks to the economic outlook for the euro area continue to exist in an environment of high uncertainty. They notably relate to a further intensification of the tensions in euro area debt markets and their potential spillover to the euro area real economy. Downside risks also relate to the global economy, protectionist pressures and the possibility of a disorderly correction of global imbalances.

理事会の評価において、ユーロ圏の経済見通しにおける潜在的なダウンサイドリスクは、高い不確実性の環境において続いている。それらは特にユーロ圏の債券市場の緊張がさらに激しさを増していくことや、実体経済にスピルオーバーしていくことに強く関係している。ダウンサイドリスクは、グローバル経済にも関係しており、保護主義圧力やグローバルインバランスの無秩序な修正を含む。



このようなことから、経済見通しについてさらなるダウンサイドリスクが顕在化していくと判断した段階で追加利下げを行う用意があるものとみられる。ドラギ総裁も記者会見において記者とのやり取りの中で、先行きの利下げについては「前もってコミットメントしない(We never precommit)」としながらも「あらゆる状況を監視した段階で行動する用意がある "will monitor all developments, we are ready to act"」と述べており、含みを残す形となっている。利下げについては、インフレへの見通しも前提条件となるが、今月の理事会でもインフレのリスクは、"The Governing Council continues to view the risks to the medium-term outlook for price developments as broadly balanced.(理事会は物価の進展について中期的なリスクの見通しは広範にバランスが取れている)"との判断を行なっており、利下げへの妨げとなるような判断とはなっていない。


記者からの質問で多く出されたのが3年物のLTROに対する効果についてである。複数の記者はオペで供給した資金が預金ファシリティに流れており、市場に流れていないのではないか、としているが、これについては以下のような応答を行なっている(FT Money supply"Live blog: ECB presser"より)。


This decision prevented what could have been a major credit constraint [from bank bonds becoming due]. We’ve also seen interest rates declining all along the yield curve.”

この決定は大きな信用収縮をいく分阻止できたのではないか。我々はすべてのイールドカーブにおいて金利が低下したことを目の当たりにした。

This money doesn’t simply stay in the ECB’s deposit facility, he adds. “It’s definitely flowing through the economy"
この資金は単にECBの預金ファシリティに滞留しているだけではなく、間違いなく経済に流れている。

It has also prevented a “much more serious” credit contraction. “We’re always very pleased to hear that the ECB’s the only institution that’s working,”

さらに深刻な信用収縮も阻止しており、我々はこの政策ツールが機能していることをとても喜んでいる。



このようなことから、LTROによる流動性供給のトランスミッションについては、まず第1段階としてユーロ圏の金融市場における信用収縮を阻止することだとしており、次の段階で一部資金が経済へ流れ込んでいるということを述べている。10月以降、流動性供給を強化したことから、銀行が保有している流動性の指標である超過流動性(公開市場オペ+限界貸出ファシリティ-(SMP含む)流動性資金-所用準備)は過去最高水準となり、ターム物金利に一層の低下バイアスが掛かっている。以下は超過流動性の推移である(100万ユーロ、出所:ECB)。


EUROZONE EXCESS LIQUIDITY 20120113



EURIBOR1週間物金利の推移(出所:EURIBOR)。


EURIBOR1W 20120113



また、余裕のある金融機関は流動性と見做されやすい短期債の購入に充当している可能性もあり、ドイツにおける短期債の金利がネガティブとなったのもそうした背景がある可能性もある。これがドラギ総裁の言うところの「イールドカーブにおいて金利が低下している」という発言につながったと考えることも出来る。従って、今後預金ファシリティに滞留している資金が染み出し効果により、より多くの資金が市場に流れ込むことが期待されているが、金融市場の緊張や金融機関のカウンターパーティリスクは未だに大きいため、すぐに効果が出てくるかどうかは疑問が残り、ラグがあるものと思われる。金融市場の緊張が緩和していくに従って時間の経過とともに資金が市場に流れ込んでいくことになっていくのではないかと思われる。


一方で、この流動性供給を原資としてイタリアなどの国債を購入する、いわゆる「サルコジトレード」に関しては、

We don’t have enough evidence to say that."

我々はそれについて十分なエビデンスは持っていない。




としており、やや否定的なトーンとなった。現時点で金融機関は、不測の事態に対処するために流動性を確保することが求められ、さらに金融債のリファイナンスに備えなければならないこと、EBAやバーゼル3のような金融規制により金融機関のソブリン債エクスポージャへの制限などもあることから、LTROによる流動性が周縁国の国債に流入することは限定的(否定するわけではない)だろうと思われる。


今後のECBの行動については、必要な時点で利下げを行うという見方が優勢である。利下げを行う際、インフレ期待やインフレが安定していることが前提であるが、リスクバランスが取れているということから特に大きな問題とはならないものと思われる。今後景況感などの指標が再度低下し、生産や消費活動が弱まっていくことが確認できる段階で景気刺激策として利下げというカードを切ってくる可能性がある。但し、預金ファシリティに付利を行う場合、金利コリドーを25bpに狭めることになるため、市場機能を損なうという見解も出されていく可能性もある(一つの例としては銀行間取引市場の流動性配分機能を中央銀行が代替してしまうことになる、という見方(白川方明「現代の金融政策 理論と実際」p.162))もある。さらに、2008-9年の金融危機時のリセッションと比較して、現状のユーロ圏経済はそこまで悪化している、もしくはそれ以上に悪化しているわけではない。従ってこれ以上の利下げについて慎重意見も出されていくことも想定できる。そして、仮に利下げが行われるとしても、コリドーの幅を狭めすぎるのは市場機能を損なうという懸念から、次回の利下げが最後になる可能性も考慮したい。非伝統的政策手段については、12月にLTROのターム物供給を拡充しており、カバードボンド購入プログラムの再開(CBPP2)、適格担保要件の緩和などを実施しており、金融市場の緊張状態が著しく高まるようでなければ、現行のオペの継続を行なっていくものと思われる。今後欧州金融機関のリファイナンスにより金融機関の資金ニーズが高まっていくことも予想されることから、2月末に行われる3年物のLTROの入札(フルアロットメント方式)もそれなりに多くの応札額が見込まれる。


SMPの拡大について、市場ではQEとして捉えられているようであるが、否定的な見解を踏襲している。ドラギ総裁は会見で"Don't know what Tailor-Made Euro-Zone QE could be"(オーダーメードのユーロ圏のQEが何であるか知らない)と述べている。シュタルク理事やドイツ連銀バイトマン総裁をはじめとしてECBは政府に対してレンダー・オブ・ラストリゾート(LLR)になるべきではないとの意見が強く(決して銀行に対してLLRになるべきではない、と主張しているのではない)、SMPの規模拡大については意見集約が難しい。今後もイタリアやスペインのソブリン債市場の動向はマーケットの警戒材料として意識され続けることから、ECBとしては現行のSMPの規模で対処し、EFSFやESMを活用した市場安定化策を求めていくものと思われる。また、先日フィッチが指摘したように、EFSFに銀行機能を与え、ECBから資金供給を受けられるようにして規模を拡大することは可能であると思われ、一つの市場安定化への方策となっていくものと思われる。しかし、これはECBが決めることではなく、あくまでもEUが決めることである。




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カテゴリ: 市場視点

タグ: 金融政策  ECB  ユーロ  欧州金融不安  ソブリンリスク 
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ECB翌日物預金の拡大~ECBの金融調節について 

【このエントリはテクニカルです】


ECBの翌日物預金が増大している。以下はECBによる日々の翌日物預金の推移である。


ECB Deposit Facility



ベンダーなどが流すECBの「翌日物預金」とは、「預金ファシリティ(Deposit facility)」のことを指す。そもそも、ECBも預金準備制度なので、金融機関は中央銀行の当座預金に所用準備額を積むことが義務付けられている。このとき、ECBはこうした準備預金のうち、所用準備額に相当する分については、MROの足切りレートを平均したレートを付利している。そして所用準備額を超える預金(超過準備)については付利を行わず、一方で積み最終日に所用準備額を下回っている場合には、限界貸付ファシリティ(Marginal Lending Facility)を使って、資金を借り入れる必要がある。ところで、ECBでは、超過準備については付利を行なっていないが、預金ファシリティには付利を行なっている。従って、金融機関にとって、所用準備額を超える資金については、超過準備として当座預金に預けておくよりも、預金ファシリティを利用するインセンティブが働く


預金ファシリティと限界貸付ファシリティには、金利が定められている。現時点で預金ファシリティの金利は政策金利の-75bp、限界貸付ファシリティを利用する際に適用される金利は政策金利の+75bpとなっており、この金利体系を一般にコリドーという


ECBでは昨年の11月及び12月にLTROを実施し、多額の流動性を提供した。このとき、中銀と各銀行は当座預金(リザーブアカウント)を用いて決済を行なっているので、オペによって受ける流動性は当座預金に入る。このとき、金融機関が様々な用途に使う資金は当座預金から引き出されるが、それ以外の資金(当座の流動性も含まれる)については超過準備には付利がないので、付利がある預金ファシリティに流入する。以下は1月4日時点のECBのバランスシートである。


ECBBS1.png
ECBBS2.png
ECBBS3.png



LTROやMROなど資金供給オペは資産サイドとして計上される。また資産には金融政策運営上保有している証券というものもある。これはカバードボンド購入プログラム(CBPP/CBPP2)及び証券市場プログラム(SMP)によって購入した証券である。負債サイドでは、現金が8867億ユーロ、オペが8494億ユーロ計上されている。負債サイドのオペとは所用準備、預金ファシリティ、ターム物預金が含まれる。ターム物預金は、SMPを行った際不胎化を行うが、その受け皿的な役割として利用されている。ここまでの話をまとめると、資金フロー的には以下のようになる。


・金融機関は適格担保により中銀(ECB→各国中銀)から資金を借り入れ、当座預金に
・オペによりECBから借り入れた資金は、当座預金から、ECBの預金ファシリティへ、もしくは一部市場へ。
・ECBは市場から周縁国国債を買い入れる(ECBの資産)が、その際支払われた資金はターム物預金へ(ECBの負債)



現時点でECBのバランスシートは急拡大しているが、フローから見れば大まかには資産サイドのLTROなどのオペと負債サイドの預金ファシリティが急拡大したに過ぎない。現状及び今後において、余裕のある銀行がより高い運用先を求め、一部資金を銀行間取引市場に流す可能性もある。現在徐々にではあるが、EURIBORは低下基調にある。問題はカウンターパーティリスクをどこまで取り除けるかであるが、これについては急速に改善することは難しい。また、オペ資金が一部周縁国の国債に流れるのではないかという観測もあり、期待も持たれているのだが、「EBAェ...」ということになってしまっており、なかなか難しいという見方が大勢のようである。カウンターパーティに不安にある中で、緩和の効果というのもすぐに現れるという感じではなさそうな感じもする。


参考:ECB: The Implementation of Monetary Policy in the euro Area
日銀:主要国の中央銀行における金融調節の枠組み


(間違っている箇所がありましたら、ご指摘下さい)




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