"Fat Finger" brings "Black Swan"
昨日のNY市場の暴落というべき出来事は直接目の当たりにしたわけではないのでどのような状況だったかは引用に任せるしか無い。Credit Writedownsの"What caused the crash?"から。"
これは私がヒアリングしてきたものである。これらは、プロクター・アンド・ギャンブルへの巨額の注文を引き起こした原因である"fat finger"である。別の言葉をいえば誰かが16百万ドルの代わりに160億ドルの取引をした、ということになる。これはダウ先物のたくさんのストップロスオーダーのトリガーを引き、ある時点で1000ドル安に届くだけのカスケードを引き起こした。Here’s what I am hearing. There was a "fat finger" that caused someone to execute a large order for PG, a Dow component at a price in the high 30s when it was trading above 60. Another word out is that someone entered a $16 BILLION trade instead of a $16 million trade - talk about fat fingers. This triggered a lot of stop loss orders in Dow Futures and caused a cascade of losses that at one point reached more than 1000 points on the Dow.
ここで出てくるのは、まず"m"と"b"の押し間違えということが指摘されている。"m"は"million"、"b"は"billion"を意味し、それを押し間違えたのではないか("fat finger")という指摘がなされている。
さらにロイターのblogの"How a market crashes"というエントリでは以下のような指摘がなされていた。
Look at the volume chart: what you see here is a big block of shares trading in P&G at around 2:30, followed by another huge block right before the market crashed. And then, nothing. The two big blocks were probably sell orders, which were big enough to blow through all the bids in the market. As Henry Blodget says, "for a few minutes, buyers just disappeared".
(chart of PG)

出来高チャートを参照:2時30分近辺のP&G株には2つの大きなブロックがあり、マーケットがクラッシュする直前に連続して出現している。そして何もないところがある。この2つのブロックはおそらく売り注文であり、全ての買い板をぶっ壊すのに十分な量だっただろう。ヘンリー・ブロジェット氏は、「数分間、買い手は現れなかった」と述べている。
この間にマーケットで起こったことは、大量の売り注文が2回ほど出されたのだが、その量があまりにも大きく全ての買い注文を吸収してしまったということである。さらにP&Gの株式が14%下落すると、DJIAの除数計算では指数を100ドル押し下げることになる。他にもDJIA構成銘柄ではエクソンモービルが99%安(最安値は0.41ドル)、3Mが17%安となっていた。それゆえダイレクトな裁定が働くダウ先物に大量の売り注文が出され、S&P500 E-miniにも出され、そして数多のストップロスのトリガーを引いてしまった。さらに株価指数が急落していくので、いわゆるマネージド・フューチャーズなどクロスマーケットで異なるポジションを組んでいる向きが一斉にポジションを巻き戻していったことから外為や債券、商品市場などに波及する動きとなったのではないかと思われる。
ダウ先物の日中足

ドル円の日中足

取引が引けた後にシティグループがエラー取引を出した所を突き止め、調査しているとの報道がなされ、さらにNYSEとNASDAQ OXMでは14時40分から15時までに行われた取引について、上下60%乖離して実行された分を取り消すとしている。
これが"Black Swan"が舞い降りた時点の状況だろう。要は一つのボタンの押し間違いにより瞬時にあらゆるマーケットに様々なインパクトを与えていく相場環境が浮き彫りにされたといってもよいかもしれない。そこにはArbがあり、pairがあり、strategyが存在する。そして相関など様々なファクターからベストなパラメータを弾き出し、様々なマーケットで様々なポジションを取る。その微妙な均衡が破れた時に、一斉にそのポジションの巻き戻しが起こり、流動性が奪われ、マーケットは破壊される。そういった脆弱性があるといってもいいのかも知れない。
この"fat finger"とギリシャ問題は別の意味合いで考えたい。ギリシャ問題に関しては昨日のトリシェ総裁の会見において国債買い切りについてECB理事会で検討をしていないと発言したことからユーロの失望売りを誘った感じであるが、急遽G7電話会合を開催する予定である。ドル需給は逼迫しており、週末に何らかの政策対応が講じられる(例えばFedによる1月末に打ち切られたスワップラインの再締結)可能性が大きくなってきている。

カテゴリ: 市場視点
タグ: 株式 マーケット