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FOMC~インフレ注視だが政策の方向は未知数 

3月15日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、


・FF金利の誘導目標を0-0.25%
・償還分の証券の再投資
・2011年の第2四半期末までに6000億ドルの長期国債の買入



このような金融政策について全会一致で現状維持を決めた。金融政策自体については変更を行う可能性はもともと低かっただけにこの点は市場のコンセンサス通りだった。一方でステートメントについてはこれまでのビューを変えてきている。


■インフレの見方に変化


今回のFOMCは中東情勢を踏まえて原油価格が高騰し、他のコモディティ価格も上昇している段階で開催されている。FOMCでもこの情勢を踏まえて、


Commodity prices have risen significantly since the summer, and concerns about global supplies of crude oil have contributed to a sharp run-up in oil prices in recent weeks.

コモディティ価格は昨年の夏以降大きく上昇しており、最近数週間では原油のグローバルな供給懸念が石油の価格の鋭角的な押し上げに寄与している。



という現状認識を示した。しかし、長期的なインフレ期待は安定しており、インフレ基調そのものは抑えられているという従来通りの考えを示した。また、将来的なインフレ動向に関わる認識において、


The recent increases in the prices of energy and other commodities are currently putting upward pressure on inflation.

最近のエネルギーやその他のコモディティ価格の上昇はインフレ圧力を上向きにさせている。



としながらも、一時的なものであると予想している。また、これまで「価格の安定において、資源活用が徐々に高い水準に戻ると予想している」(Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability)が、そのペースについて、「残念ながらその進展は遅い」(progress toward its objectives has been disappointingly slow)という文言が削除されていた。このことは、主観的なキーワードである"disappointingly"を使うくらい現状の資源活用の水準には満足できないという状態からは脱しているという認識である。このことから、デュアル・マンデートに一致する水準にまで物価が上昇しているわけではないが、デフレへのリスクはもはや考慮すべき段階ではなく、さらにディスインフレ的な状態からも脱しつつあるということを示唆しているように思われる。そして、インフレは抑制されているとしながらも、


The Committee expects these effects to be transitory, but it will pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations.

委員会はこれらの影響を一時的と予測しているが、インフレやインフレ期待の進展には緊密に注視していくつもりである。



としており、インフレ期待の進展をモニタリングしていくという文言を加え、将来のインフレ動向については気を配って注視していくという姿勢を示した。声明文の段階でこのような文言が記載されているのはややサプライズで(議事録で示されると考えていた)、Fed内部では将来的なインフレに対する警戒感が高まっているという認識があるものと思われる。これまでは投入コストが上昇していても最終製品への転嫁は限定的であるという認識が支配的だったが、ベージュブックなどで転嫁の動向があるとの報告や、3月のミシガン大学消費者信頼感で消費者のインフレ期待も上向きであることが示されたことから、そういった見方の変更に迫られた可能性もある。当然インフレやインフレ期待の進展によってはQE2'(7月以降はFedのB/Sの水準を維持するために、MBSや国債の償還分を再投資に回す、すなわちPOMOの継続)には移行せず、QE終了後はPOMOを打ち切り漸次的にバランスシートを縮小させていくことも視野に入れているものと思われる。従って、(声明文を読む限りでは)7月以降の政策に関しては緩和方向から遠ざかる可能性も十分あり得る。7月以降の政策の動向についてさらに見極めるには議事録を待つ必要がある。


■景気認識の上方修正


景気認識については一段の上方修正を行った。経済の回復は強固な基盤の上にある(the economic recovery is on a firmer footing)としたのはこれまでの景気回復時における見通しでは最も強いトーンだろう。また、これまでは、消費がや企業の支出が拡大しているが、労働市場の改善させるには不十分である、というトーンであったが、今回は雇用についても徐々に回復しているという見方を示したことからも、景気見通しについてより強気にみているということが伺える。また個人消費についても、高い失業率、収入の緩慢な伸び、低い家計資産、及び信用環境のタイトさ(remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit)から力強さには欠けるようなニュアンスとなっていたが、今回はそのような文言も削除されている。背景には失業率は依然として高いものの9%台を割ってきたことや、個人所得の上昇ピッチがやや速くなったこと、そして信用状況が緩和され、消費者信用が上向きになってきていることを評価しているものと考えられる。


・個人所得の推移(出所:StLouisFed)


PI 20110316



・消費者信用残高(リボ)の推移(出所:StLouisFed)


REVOLSL 20110316


特に昨年12月に消費者信用残高のリボが下げ止まり増加に転じたことで(但し1月は減少)、同月の個人消費の原動力となったことなどから個人消費についても力強く回復しているということを評価したのだろう。但し、足元の消費者信頼感はガソリン価格高騰によって低下していることは踏まえておくべきだろう。


■政策の動向


今後の政策に関しては、この声明文をみる限りでは出口戦略に傾斜しつつあるようにもみえる。将来的なインフレ動向は警戒しているし、景気認識も一段と踏み込んだものとなっている。但し、ここにきて不透明要因がかなり強くなってきていることは否めない。不透明要因については、


・中東情勢と原油価格の動向
・日本の地震と原発事故の影響



この2点が主だろう。購買力が未だ脆弱であることから、原油価格の高騰や価格転嫁が需要を押し下げ、個人消費に悪影響を及ぼすリスクが存在している。景気が減速すればQEの延長を排除できない意見もある(Bloomberg 「アトランタ連銀総裁:中東リスク発生で国債購入延長も視野」参照)。中東の情勢はリビアを中心に動いているが、他の産油国に波及しないとは言い切れず、一段の価格上昇の可能性も否定出来ない。


また、日本の大震災が世界経済に与える影響は今の段階で未知数である。地震や津波による被害の規模も判明しておらず、また原発事故の真っ只中であり、さらに関東エリアでは計画停電を実施しており、経済への影響は避けられない。仮に世界第3位のGDPの国がディープリセッションに陥れば世界経済の動向にも大きな影響を与えるものと思われる。この点は声明文での言及はないが、おそらくまだ全容がはっきりしていない段階での声明文への盛り込みは控えたという感じなのだろう。おそらく会合の議論は活発に行われたとみられ、議事録を注視してみていく必要がある。金融市場においても、仮にジャパンプレミアムなどの発生によって徒に邦銀の業務に影響が生じた場合には、各国中銀が協調して流動性を供給することも可能性として否定出来ない。株式市場などの変動が大きくなることもリスクだろう。


市場では強気な声明文とは裏腹に利上げへの織り込み度合いがかなり後退している。以下はFF金利先物のフォワードカーブ(出所:CME)。


FF Forward Curve 20110316.


・FF金利先物2012年4月限のチャート(出所:CME)


FFF_201204.png



2012年4月限について、2月の中旬では追加利上げまで織り込んでいた。しかし、現状は25bpの利上げすら完全に織り込めていない。中東情勢による物価高騰の影響で将来の景気腰折れリスクを意識している最中に日本で大震災が起きている。足元の世界景気の動向など現在は極めて不透明な情勢にある。このため実際のところFedの政策の方向性も極めて未知数であり市場も判断が付きかねると言わざるをえないのだろう。そういったことから、日本の動向で買われ、FOMC声明文で売られるなどFF金利先物の日中取引も乱高下しており、市場もやや混乱しているというべきなのだろう。


FF金利先物2012年2月限の日中足チャート(出所:CME)


FFF 201202



【参考】


・Fedバランスシートの推移(出所:Cleveland Fed)


FedBalancesheet 20110316.


・POMOによる国債買い入れの推移(出所:NYFed)


POMO 20110316.


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カテゴリ: 市場視点

タグ: Fed  金融政策  金利  ZIRP  QE2  マーケット   
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