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10月雇用統計~着実な雇用増を確認  

11月2日に米労働省BLSは10月の雇用統計を発表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +17.1万人
民間部門雇用者数 +18.4万人
失業率(U-3) 7.9%
週間平均労働時間 34.4h
平均時間あたり賃金 23.58ドル
U-6失業率 14.6%



(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


Unemployment rate 20121102



(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


Employment Recovery 20121102




(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


Private Payroll 20121102


(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


Wage 20121102



(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


Longer-term unemployed 20121102


(6)労働参加率(単位:%)の推移


CLF 20121102




(7)労働投入量(前年同期比%)の推移


Labor Input 20121102



■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・非農業部門雇用者数増減は、17.1万人増加となり、市場予想の12.5万人程度を大きく上回り、ポジティブサプライズとなった。8月は二次速報14.2万人増加から19.2万人増加に、9月は速報値11.4万人増加から14.8万人増加にそれぞれ上方修正された。8-9月の上方修正については、小売業や観光・接客業で上積みがみられたことが主な要因となっている。民間雇用者数は18.4万人増加となり、9月の12.8万人増加から伸びが加速した。


・財生産部門は2.12万人増加となり、7月以来はじめて増加に転じた。内訳は、鉱業・掘削業で9千人減少、建設業で2.1万人増加、製造工業で1.3万人増加となった。製造工業のうち、耐久財は5千人増加(自動車は2.1千人減少)、非耐久財は8千人増加となった。耐久財では、木材業で2.7千人増加、非金属素材業で1.4千人増加、一次金属業で1千人増加、コンピュータ・電子部品で1.6千人増加となった半面で、金属加工業で1.2千人減少、機械業で1.1千人減少などとなった。非耐久財では食品加工業で3.7千人増加、化学で1.6千人増加、プラスチック・ゴム製品業で1.6千人増加などとなっている。建設業の増加は、居住用、非居住用の建設で伸びていることから、広範囲で建設稼働が高まっていることが示唆されている。製造工業については、世界経済が減速している中で8-9月はその影響を受けていたものの、足元で新規受注が増加に転じていることなどすれば一旦は底打ちが示唆されている。しかし、米国財政動向、欧州経済や新興国経済に不確実性が残る中で、製造工業の雇用の伸びは限定的なものとなろう。


・サービス業は16.3万人の増加となり前月から伸びが加速した。内訳は、卸売業で6.5千人増加、小売業で3.64万人増加、運輸・倉庫業で2.2千人増加、情報業で1千人増加、金融取引業で4千人増加、専門職・ビジネスサービス業で5.1万人増加、教育・ヘルスケア業で2.5万人増加、観光・接客業で2.8万人増加となっている。専門職・ビジネスサービス業のうち、人材派遣は1.36万人の増加となった。また教育・ヘルスケアのうち、ヘルスケア・社会扶助は3.25万人の増加となった。観光・接客業のうち、飲食業が2.29万人増加となった。サービス業については上記3業種が堅調だったことが雇用の伸びにつながっている。飲食業については、一部大型飲食チェーンで大規模な採用があったものとみられる。米国のサービス業は底堅い個人消費動向に支えられている側面が強く、広範囲で雇用増加となっている。11月以降は年末商戦により、小売業や運輸業(宅配など)で臨時雇用が見込まれるが、どの程度増加しているのかが注目される。


・政府部門は1.3万人減少となった。うち、連邦政府で6.0千人減少、州政府で7.0千人減少、地方政府は変わらずとなった。民間雇用の伸びは底堅いものの、政府部門の雇用はおぼつかない状態が続いている。しかし、地方政府の雇用削減圧力はピークを越したものとみられ、税収が増加していけば徐々に回復していくものとみられる。以下は地方政府の雇用の推移(出所:BLS)。


Local gevernment 20121102


・民間雇用者の時間あたり賃金は23.58ドルとなり、前月から1セント減少、週間平均労働時間は34.4時間となった。このことから民間セクターの労働投入量は前年比1.78%の伸びとなり、週間あたりの平均賃金は811.15ドルとなり、前月から35セントの減少となった。賃金の低下はネガティブファクターであり、恐らく10月の雇用増のうち人材派遣やヘルスケア・社会扶助など賃金水準が低い職業の雇用が他に比べ増加したことが影響した可能性もある。


■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は、7.9%(7.876%)となり、前月から0.1ポイント上昇した。


Household survey


8月の失業率は8.1%であったが、9月に0.3ポイントも改善して7.8%に低下した後、10月はやや上昇する形となった。失業率は、失業者(Unemployed)/労働人口(Civilian labor force)で求められるが、このうち分母となる労働人口は57.8万人増加した一方で、失業者は17.0万人増加した。失業者が増加したことにより失業者が押し上げられていることになる。労働参加率(Participation rate)は63.8%と前月から0.2ポイント上昇、就業者(Employed)は41万人増加したことから、就業者比率(Employment-population ratio)は58.8%に0.1ポイント上昇した。また、非労働力人口(Not in labor force)が36.9万人減少していた。失業の理由では、解雇もしくは一時的な雇用の終了が4.0万人増加、離職が5.3万人増加、リエントラントが6千人減少、エントラントが5.4万人増加となっている。非労働力人口が大きく減っており、また非労働力人口のうち現在職を求めている人(Persons who currently want a job))は14万人減少していることから、恐らくは労働市場に新規参入もしくは再参入した人が労働人口としてカウントされるのと共に失業者としてカウントされたことにより、結果として失業率が上昇したという構図となっている。労働人口が増加し、労働参加率が上昇する形で失業率が上昇するのであれば、「良い失業率上昇」である可能性が大きい。労働参加率については8月の63.5%と過去25年で最低水準だったところからはやや持ち直しており、当面の傾向を掴むにはまだ時間を必要とはするものの、低下傾向に歯止めが一応掛かっていることは景気回復の裾野が拡大していることを示唆している。


・パートタイマーは26.9万人減少となり、うち経済的な理由からパートタイマーとなっている人は30.4万人の減少となっている。9月にこうしたパートタイマーが急増したことの反動減であろうとみられる。U-6失業率は前月から0.1ポイント低下の14.6%となった。長期失業者は15.8万人増加して500.2万人に増加した。500万人台となるのは8月以来となる。低下基調であることには変わりがないものの、依然として長期失業者の就職が難しい情勢が続いている。


■雇用統計の評価と今後のポイント


今回の雇用統計のポイントをまとめると、以下のようになる。


・非農業部門雇用者数が着実に増加している(ポジティブ)
・製造工業で雇用が回復している(ポジティブ)
・労働参加率が上昇し、就業者比率も上昇している(ポジティブ)
・賃金が低下し、週間労働時間も下方修正されている(ネガティブ)



このような評価であり、全般にポジティブな内容であったものとみられ、6日に投票が行われる米大統領選は現職のオバマ氏に優位に働くものとみられる。今後の雇用統計におけるポイントは、短期的にはハリケーン・サンディの影響であり、中期的にはFiscal Cliffであろうとみられる。


ハリケーン・サンディは11月以降の雇用動向を占う上で大きな撹乱要因である。ハリケーンが雇用にインパクトを与えたのは2005年9月のハリケーン・カトリーナの例があるが、被害を受けたニューオーリンズがあるルイジアナ州の失業率は2005年8月の4.9%から11.2%に急上昇した。また、全米単位での新規失業保険申請件数も9月1週は32.6万件であったのに対して9月2週は42.2万件に跳ね上がっており、一時的な失業者(無給休暇であっても失業者としてカウントされる)が増加した。以下は2005年から2006年の新規失業保険申請件数及び2005年から2007年のルイジアナ州の失業率の推移である(出所:BSL)。


IJC 2005

Louisiana Umemployment rate


但し、ハリケーン・カトリーナの場合、被害がルイジアナ州とミシシッピ州に限定され、隣接するテキサス州、アーカンソー州、アラバマ州などでは同時期に失業率は上昇しておらず、全米単位の失業率は0.1ポイントの上昇に収まっている(この時期の経済環境は現在とは異なり、好景気の真っ只中にある)。今回のハリケーン・サンディの場合、東海岸のニューイングランド地域など人口が集中する12州で大きな被害を受け、それらの州では数日間生産活動がストップしたものとみられ、一部エコノミストからは、被害の影響により第4四半期のGDPは1%程度の伸びに留まるのではないかとの見方を行なっている(Reuters「第4四半期米GDP、サンディの影響で1%に減速の可能性も」参照)。従って、被害の度合いが明らかになるに連れ経済へのダメージについても推計されるものとみられる。こうしたことから、まずは10月最終週の新規失業保険申請件数がどの程度大きく上昇しているかがポイントであり、予想以上に上昇しているのであれば、失業率も押し上げられる可能性がある。しかし、自然災害によるものであるため、その後の復興需要も見込まれることから、こうした失業率の上昇はごくごく短期間で収束するものとみられる。


中期的なポイントはFiscal Cliffである。仮にFiscal Cliffが発動された場合、議会予算局(CBO)の見通しではブッシュ減税や代替ミニマム課税回避措置(AMTパッチ)の失効や給与税減税の失効などで歳入関連では3990億ドルの増税となり、財政管理法による一律歳出削減などの影響から1030億ドルの歳出カットが見込まれ、総額で6070億ドルの財政赤字削減が行われると見積もられている(CBO: "CBO Analyzes Effects of Fiscal Restraint Scheduled Under Current Law"より)。以下はCBOが8月に見積もったFiscal Cliffが発動された場合の財政赤字の推移である(出所:CBO・単位:10億ドル)。


CBO Fiscal Cliff


6070億ドルという規模は米国の名目GDPのおよそ4%程度であることから、経済に与える影響は極めて大きなものとなる。CBOによる見通しでは、仮にFiscal Cliffが発動された場合(ベースラインシナリオ)、2013年第1四半期の実質GDPは前期比年率で3.9%減少、第2四半期は同1.9%減少となると予測している。すなわち2期連続でマイナス成長となることから、リセッションに陥る公算である。ベースラインシナリオによる、この間の失業率見通しについては、2013年第1四半期には現在より0.2ポイント上昇、第2四半期には0.5ポイント上昇、第3四半期には0.7ポイント上昇、第4四半期には0.9ポイント上昇と見込んでいる(なお、CBOの8月の見通しでは2012年第4四半期の失業率は8.2%と見込んでいる)。以下はCBOのベースラインシナリオにおける実質GDP伸び率と失業率の推移である(出所:CBO)。


CBO real GDP

CBO Unemployment rate


このことから、Fiscal Cliffが発動された場合、現時点の失業率からすれば、最大で8.8%まで失業率が上昇する可能性がある。従って、大統領選挙・議会選挙後のレームダック議会(新財政年度まで、すなわち今年中は選挙前の議員構成となる。直近の民意を反映していないため重要な議案について見送られるのが通例である)でFiscal Cliff回避の交渉がどのように進展していくか、そして新財政年度が始まる1月までにどの程度の赤字削減額となるのか注目される。仮に交渉決裂となれば上記シナリオとなる公算があるため、大統領選挙からレームダック議会の行方にはかなり注意を払う必要がある。さらに新議会が始まる2013年初は債務上限引き上げの再交渉に迫られる。交渉の行方次第では、昨年のように市場に動揺を与え、企業や消費者のセンチメントを悪化させる可能性もある。これらの動向の趨勢にとって、上下両院の議会勢力と大統領が誰になっているかが極めて重要なファクターとなってくる。レームダック議会でFiscal Cliffをどう回避し、新議会で連邦債務上限引き上げ交渉をどのようにまとめる方向となるのか、それを占う上でも6日の選挙の動向に十分注意していかなければならないだろう。


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【告知】「経済金融セミナー 2013」のお知らせ


2013年に向けて、世界経済と金融市場の見通しは、欧州債務問題とそれに伴う金融システムへの不安、さらに米国の"Fiscal Cliff"への懸念、さらに中国経済の異変など不確実性の高い状態が続いております。そのような中、現状の金融市場とマクロ経済動向・各国財政・金融政策の認識及び、2013年のマクロ・マーケット展望についてお話させて頂きたいと思います。また第2部では、第2部では、野口能也氏( @equilibrista )から「2013年、超低金利下の為替の見方」についてお話を頂きます。 詳しくはこちらを御覧ください。皆様のご参加心よりお待ち申し上げております。


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